20~30年は安定する可能性はあるが、注意は必要…

「日銀のETF買入れ」個人投資家への影響は?

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2010年12月にスタートして以降、ほぼ毎月、日銀によるETFの買い入れは行われている 写真:J6HQL / PIXTA(ピクスタ)

2010年12月にスタートして以降、ほぼ毎月、日銀によるETFの買い入れは行われている
写真:J6HQL / PIXTA(ピクスタ)

2010年に日本銀行(以下、日銀)が金融緩和策のひとつとしてスタートした「ETF(上場投資信託)の買入れ」。当初約4500億円が買入れ限度額だったが、量的・質的金融緩和の導入および拡大に伴い、年間購入額が、約1兆円、3兆円…と拡大し、2016年7月には一気に約6兆円に増額。なお、日銀の黒田東彦総裁は、12月時点で購入額の減額という判断は今の時点では適切ではないと述べており、しばらくETF買入れは続く見込みだ。

ETFといえば透明性が高く、初心者向きの金融商品ともいわれるが、そもそもなぜ日銀が買入れすることとなったのだろう。また、個人投資家にとってはどんな影響があるのか。ニッセイ基礎研究所のチーフ株式ストラテジスト・井出真吾さんに聞いた。

●日銀のETF買入れ、その意味とは?

「そもそも日銀は、ETFを買入れする理由を“リスクプレミアムを下げるため”と説明しています。リスクプレミアムとは、人がリスクを嫌がる度合い。日銀が買入れることによって投資家たちのリスクプレミアムが下がり、株を買いやすくしているのです」(井出さん、以下同)

つまり日銀は、「投資家たちの不安を緩和している」ということ。実際、年間6兆円とはいえ、日銀が1回あたりに買入れるのは740億円程度。約2兆円といわれる一日の市場取引の、3~4%に過ぎない金額だ。「この数値からもわかるように、日銀が直接、株価を買い支えているわけではありません。日銀の動向に目を光らせる投資家たちが一斉に動くことを期待しているのです」

不安が解消されれば、投資家の株式の購買意欲が増し、株価が上がる。そうすれば、企業は資金調達がしやすくなり、その分、設備投資や人材投資に注力できる。また、世の中の心理状態も明るくなり、日銀が目標とする“物価2%”に近づくという考え方だ。そう聞くと、日銀のETF大量買入れは、いいこと尽くしのように思えるが、「実際は懸念すべきことも多い」と井出さん。

●ETF購入は個人投資家にどんな悪影響が?

「懸念される弊害のひとつが“株価の歪み”。現状、株価が上がっているとはいっても、それは日銀の買入れによって実力以上の評価をされる企業があるといえます。特に、日経平均株価に連動する商品を大量購入していたことが、歪みの拡大につながったのです。そこで日銀は、2016年9月に、それまで五分五分に近かったTOPIX(東証株価指数)と日経平均株価の割合を、7対3にするという新ルールを発表。その後は一時期より歪みは縮小したものの、年間購入額が6兆円に増額される前に比べると、いまだ歪みは大きいままなのです」

それでは、「株価の歪み」は、どのようなデメリットに繋がるのだろうか?

「まず、“株価が下落するリスクが高まる”といえます。また、過大評価された企業は、経営が緩みがちになり、課題を見逃しかねません。さらに、個人投資家が気をつけるべきは、“合併比率”の問題でしょう。たとえば2社が合併する際、吸収される側の株価が順当な評価以上に吊り上がってしまっていたとします。その場合、吸収される側の株主にしてみればラッキーですが、吸収する側の株主にとっては、取り分が減る可能性があるのです。つまり、株主間で不公平感が生まれかねないということです」

さらに、将来のリスクとして専門家たちが口をそろえるのは、日銀が“売り”に転じてしまう可能性。「日銀が売りに転じたその瞬間から、株価が暴落するかもしれない」というのだ。

「とはいえ、“物価2%”に達しても安定するまで続けるという“オーバーシュート型コミットメント”が発表されたこともあり、向こう20~30年間は、日銀が売りに転じることはないかもしれません。ただ、6兆円から減額する可能性はあるので、気をつけた方が良いでしょう。いずれにせよ、日銀がETFを大量に買い続けているうちは、ETFを始めるのには良いタイミングですし、大量購入される銘柄ほど、値下がりしにくく堅調に推移しやすい傾向にあります。とくに日経平均株価に連動するETFは狙い目かもしれませんよ」

ラディカルな政策であればあるほど、メリットとデメリットが表裏一体になるのは仕方のないことかも。そう理解したうえであれば、ETFは、日銀が大量購入している“今が買い”といえるだろう。世の中の動向に目を向け、購入を検討してみては?

(村部春奈/H14)
記事提供/『R25』

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