増加に向かわない原因は「不安」と「不要」

「30歳の生涯年収予測」ピーク時より4千万円減

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企業規模別の男性・大卒者の生涯賃金。90年代半ばから漸減。リーマンショック後に落ち込み、2014年に少し回復をみせている 出典/ユースフル労働統計 2016 労働統計加工指標集より作成 イラスト/藤田としお

企業規模別の男性・大卒者の生涯賃金。90年代半ばから漸減。リーマンショック後に落ち込み、2014年に少し回復をみせている
出典/ユースフル労働統計 2016 労働統計加工指標集より作成 イラスト/藤田としお

2016年の出生数が統計開始以降初めて100万人を割り込むなど、人口減少が止まらない日本。第1次ベビーブームの1949年は269万人、第2次ベビーブームの1973年には209万人が生まれていたことを踏まえると、過去との差は歴然だ。

人口が減って少子高齢化が進めば、国内の市場も縮小して経済成長は鈍くなりそうなもの。となると、私たちの生涯賃金(=一生で手にする賃金の合計)も下がっていくのではないだろうか。

■90年代から生涯賃金はダウン傾向に

まず紹介したいデータがある。労働政策研究・研修機構が毎年発表している「ユースフル労働統計」だ。この統計は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をもとに、60歳まで働いた人が平均的にもらえる生涯賃金を毎年算出している。

統計では、同一企業に勤め続けたケースや企業規模・学歴・性別ごとのデータが出ているが、ほとんどにおいて1990年代半ばをピークになだらかな減少を見せている。大学・大学院卒の男性(※)を見てみると、1997年の2億9250万円を頂点にダウン。2009年には2億5180万円まで下がっている。この時点で4000万ほどの減額だ。ただし、その後は停滞して直近の2014年は2億5890万円に“微増”している。

※学校を卒業して直ちに就職し、60歳で退職するまでフルタイム労働を続ける場合(正社員とは限らない、同一企業継続就業とは限らない)

■今のままでは生涯賃金は上がらない。理由は?

これらの推移について、どんな背景があるのだろうか。経済評論家の川口一晃氏に聞いてみた。

「90年代後半から生涯賃金が減少してきたのは、バブル崩壊後、景気が落ち込みデフレに陥ったからですね。賃金は物価とリンクするので、景気の要因が大きいです。また直近で微増したのは、アベノミクスにより政府が賃上げを呼びかけたからではないでしょうか」

景気の浮き沈みで多少の増減が出るようだが、最も気になるのは今後の生涯賃金。大きなトレンドでは減少しているが、直近は微増、アップもダウンもあり得そう…。たとえば、30歳男性の生涯賃金はどのくらいになるのだろうか。

「経済にかかわる突発的な出来事があれば別ですが、基本的に生涯賃金はほぼ上がらず、今の水準のままだと思います。理由は、少子高齢化の中で老後の不安が若い世代まで行き渡り、節約・貯蓄志向が高まっていること。また、生活が豊かになり、欲しいものが少なくなったこと。つまり『不安』と『不要』により、消費は上がらず企業の利益が出にくくなります。当然、経済成長は難しく、賃金も上がりにくいでしょう」

ただし、生涯賃金が今後大きく下がる可能性も低いという。「初任給の水準はここ何年もずっと維持されています。社会の入り口でもらえる額が変わっていないことから、企業がさらに賃金を切り詰めることは考えにくい」と川口さんは話す。

ということは、現30歳の生涯賃金(60歳まで)は、ピーク時より3000万~4000万円低い想定で、2億5000万~6000万円。さらに「現在の30代がもらえる年金は減少する可能性が高く、生活はより苦しくなるでしょう」と川口さんは指摘する。

では、そんな今後を見据えて、どんな準備をすべきだろうか。

「確定拠出年金や積立貯蓄など、なるべく早いうちから対策をとることです。あるいは、一生涯お金を稼げるスキルを今から磨くことでしょう。働かなければならない期間はどんどん長くなりますから」

若いうちから手を打てるかどうかで、老後の生活は大きく変わるということか。定年になったら悠々自適の生活…というのは、なかなか難しい時代となりそうだ。

(有井太郎)

記事提供/『R25』