きっかけはNY市場の大暴落「ブラックマンデー」

急落対策の金融商品「ETF」誕生秘話

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国内の指数に限らず、先進国、新興国、さらにはフロンティア市場と呼ばれるマーケットの指数に連動するETF銘柄もある 画像:freeangle / PIXTA(ピクスタ)

国内の指数に限らず、先進国、新興国、さらにはフロンティア市場と呼ばれるマーケットの指数に連動するETF銘柄もある
画像:freeangle / PIXTA(ピクスタ)

「ETF」という金融商品を知っているだろうか? ニュースでもたびたび伝えられる日銀の買い入れに加えて、個人や海外投資家の取引も増えており、2016年末に東京市場での純資産残高が20兆円を突破。さらに、世界的にも評価されており、エコノミスト紙はETFを「ここ10~20年で最も成功した金融商品のひとつ」と評している。

そもそも、ETFとはどんな金融商品なのだろうか。正式名称は「Exchange Traded Fund」。日本語に訳すと「上場投資信託」で、株のように一社の銘柄ではなく、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)、業種別株価指数、アメリカの代表的な株価指数であるダウ工業株30種平均、先進国・新興国などの株式指数といった指標に連動して値動きする金融商品のことだ。今やその数は、東証に上場しているだけで205銘柄、世界中では約5000銘柄あるともいわれている(2016年2月末現在)。

●大暴落を教訓に生まれた「ETF」

特に海外で人気の高いETFだが、世界で初めて登場したのは1990年。日本では1995年に初めて上場したが、本格始動は2000年代に入ってから。さらに銘柄が増え始めたのは2008年以降と、比較的新しい金融商品なのだ。

実は、これには理由がある。Bloombergの記事によると、ETFが開発されたきっかけのひとつは、史上最大級の暴落とされている、1987年10月19日の「ブラックマンデー」だという。この日、NYダウは前日に比べて508ドル安、下落率は22.6%、10月20日の日経平均は前日に比べて3836円安、下落率は14.9%に達した。

この大暴落を受けて米国証券取引委員会は、暴落の原因を調査した。その結果、ある一定まで株が暴落すると、株の売りが止まらなくなり、売りが売りを誘う状態になってしまうことが判明。そのため同委員会は、市場全体をパッケージとして売り買いできる“何らかのアプローチ”の必要性を報告。これに当てはまる新商品として、証券業界でETFの開発が進められたという。

1995年に初めて日本の市場に現れたETF。2008年に銘柄数が一気に増え、売買額も伸び続けている 東京証券取引所ウェブサイト「ETF銘柄数推移グラフ」より作成

1995年に初めて日本の市場に現れたETF。2008年に銘柄数が一気に増え、売買額も伸び続けている
東京証券取引所ウェブサイト「ETF銘柄数推移グラフ」より作成

●専門家が太鼓判を押す「ETFの負けにくさ」

では、そんな暴落をひとつのきっかけとして開発されたETFのメリットは何か? そもそも、上場していない投資信託は、マーケットの取引終了後に決まる“基準価額”でしか売買ができず、もし暴落が起こったとしても市場が開いている時、即座に取引することは不可能だ。一方、ETFではそんな危急の場合にも即時に売買することが可能となっている。また、ETFは「卵を一つのバスケットに盛らない」商品、つまり銘柄を複数組み合わせた商品である。仮に1つの会社が経営破綻した場合、株式は状況によって無価値になる可能性があるが、ETFは投資信託と同様に裏付け資産が分別管理されており、かつ投資先が分散されているため、たとえ構成銘柄の一社が破綻してもETFの価値がゼロになるわけではない。これも暴落時には安心感につながる。

さらにETFのメリットはほかにもある。信州大学経法学部の真壁昭夫教授は、「個別の会社研究が必要ないので、忙しいビジネスマンでも気軽に始めることができる。また、投資信託に比べると保有することで定期的に発生する信託報酬が安いこともメリット。初心者にも向いている投資です」と語る。

そして、「最大の魅力は、分散投資によるリスク軽減によって、負けにくいこと」と続けた。

ETFの値動きは指数と連動しており、ETFでの運用は「パッシブ運用」といわれている。一方、運用者が銘柄を選択して投資することを「アクティブ運用」という。真壁教授によると、「10人のファンドマネジャーがいた場合、長期間保有してパッシブ運用を上回るリターンを得られるのは3人程度しかいないといったデータがあります」とのこと。ETFを長期間保有することが、データ的にも負けにくいということだ。

●ETF最初の一歩はTOPIXがオススメ

しかし、ETFといっても、東証には200銘柄以上も上場している。初心者は、どの銘柄を購入するべきなのだろうか。

「初心者にオススメなのは、TOPIXに連動するETFです。TOPIXとは、東証一部に上場している全ての企業、約2000銘柄を時価総額で加重平均した指数。いわば、TOPIX連動のETFを購入すれば、東証一部に上場している全ての企業に分散投資しているようなものです」(真壁教授)

肝心の購入のタイミングは「相場が下がったとき」とのこと。安く買って高く売るのが投資の基本。真壁教授は「週刊誌などが株を買えと特集しだしたら、そこが天井、逆に悲観論一色になったら、みんな売り尽くしているので、そこから上昇するという考え方もありますね」と教えてくれた。

「最初はTOPIX連動のETFがオススメですが、投資に慣れてきたら、先進国の株式、新興国の株式、コモディティ、金、不動産などに連動するETFをカクテルする(組み合わせる)といいでしょう。例えば、先進国の株式の価格が下がっても新興国は上がるというように、逆の動きをする場合が多い。そういったETFを組み合わせておけば、より負けない投資ができます」(真壁教授)

市場の大暴落をきっかけに生まれた金融商品「ETF」。1987年にはブラックマンデー、1997年にはアジア通貨危機、2007年にはリーマンショックの引き金となったサブプライムローン問題など、「“7”がつく年には相場が荒れる」といったジンクスもあるが、そんなときこそ長期・分散投資が可能なETFの買い時なのかもしれない。これから投資を始めてみようという人は、検討してみてはどうだろうか。

(笹林司)

記事提供/『R25』