投資ブロガーが語るリアル体験

スタートは26歳、保険の勧誘がきっかけ

投資ブロガー・虫とり小僧「子どもへの遺言のつもりで書いている」

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普段は会社員の虫とり小僧さん。趣味は筋トレとのこと

普段は会社員の虫とり小僧さん。趣味は筋トレとのこと

いかなる達人も、初めは素人同然だった。今は順当に資産を築いている投資家も、かつてはリスクに怯え、やり方に不安を覚え、試行錯誤の果てにスタイルを確立していったはずだ。そんな彼らの「ビギナー時代」の話は、これから投資を始める人にとって大いに参考になるだろう。

そこで、著名なインデックス投資ブロガーにインタビュー。投資のきっかけから現在の投資スタイル、そこにたどり着くまでの経緯などを聞いた。

■保険会社の売り込みが、投資のきっかけに

お話を伺ったのは「虫とり小僧」さん。ブログ「いつか子供に伝えたいお金の話」を運営する、人気の投資ブロガーだ。プロの投資家でもなく、経済学者でもない、身近かつ分かりやすいやり方で資産を築いている個人投資家の経験談にこそ、ビギナーが参考にすべき点は多いはずだ。

まずは、投資を始めたきっかけから教えてもらった。

「始めたのは12年前。26歳の時ですね。保険の営業マンから薦められた終身保険の『運用の仕組み』に興味を持ち、色々調べ始めたのが投資に興味を持ったきっかけです。その保険は、30年後に掛け金が120%程度になって受け取れる設計でした。どうしてそんなことができるんだろう? 保険会社はどうやってお金を増やしているんだろう? そんな疑問からスタートしましたね」

―― 調べていくうちに、自分で運用してみたいと思うようになった?

「じゃあ、もし自分が30年前に投資を始めていたらどうなっていたのか、と。そこで、先進国の株式市場の平均株価指数(MSCIコクサイ・インデックス)の過去データを見てみると、30年間で約10倍(1000%)に増えていたんです。同時に、ほぼ平均値をそのまま買うインデックス投資というやり方があることも知って。これなら手数料を払って保険会社に任せるのではなく、自分で運用したほうが得だなと思いました」

―― では、最初からインデックス投資一本だったのでしょうか?

「インデックス投資に確信めいたものはあったのですが、もっといい方法があるんじゃないかと思って、最初は個別株なども購入しました。ただ、軸はインデックスの積み立てで行こうと決めていましたね。まあ、だんだん個別株に投資するのがめんどくさくなったっていうのもありますが。当時は社会人4年目くらいでしたがコツコツ貯金していたので、最初から当時の年収分くらいのまとまった額をポンと投資しました」

―― けっこう大胆ですね。それで、実際に始めてみてどうでしたか?

「当時は小泉改革の後半で、ライブドアショック直後くらい。時期が良かったので何に投資してもわりと調子が良かったんですよ。買ったものが上がると、自分は天才なのかな?って勘違いしちゃうんですよね(笑)。おそらく最初のスタートが良かったから、続けようと思えた。そういう意味ではラッキーだったかもしれません」

■リーマンショックで資産が半分に!

お金にまつわる基礎知識や投資に対する自身の考え方などを分かりやすくつづる「いつか子供に伝えたいお金の話」(虫とり小僧さんのブログより) ※この画像はサイトのスクリーンショットです

お金にまつわる基礎知識や投資に対する自身の考え方などを分かりやすくつづる「いつか子供に伝えたいお金の話」(虫とり小僧さんのブログより) ※この画像はサイトのスクリーンショットです

そのまま2007年頃までは好調をキープ。順調に利益を増やしていったという。だが、その後やや雲行きがアヤしくなる。そして、2008年、リーマンショックを迎え…。

「ズルズルと下がってきたところにリーマンショックがドカンときて、資産が半分以下になりました。ぶったまげましたね。夜中に何度も起きて、NYダウの動きとかをチェックしていました。その時、妻も『なんで携帯ずっと見てるの?』と心配していましたよ。まあ、投資云々より浮気を疑ってたみたいですけど(笑)」

―― それだけ痛い思いをしても、やめようとは思わなかったですか?

「思わなかったですね。過去のデータを見ても、こういうことは何度もあったわけです。暴落をテーマにした書籍なども読み込んでいて、そのたびに踊らされるのは得策ではないと分かっていましたから。性格的に情報収集や分析が好きで、最初にそうした過去の実例をインプットしておいたから冷静に判断できたのだと思います」

■投資にかける時間は「月10分程度」

会社帰りにインタビューに応じてくれた。格闘技で鍛えた背中には、二児の父としての頼もしさが感じられる

会社帰りにインタビューに応じてくれた。格闘技で鍛えた背中には、二児の父としての頼もしさが感じられる

なお、虫とり小僧さんの本業は会社員。投資はあくまで「副業」だ。そのため、投資は「仕事に支障をきたさない範囲で」と決めている。

「個別株を買っていたときは『仕事に手がつかない』とまでは行きませんが、ずっと頭の中にそのことが引っかかっていましたね。これはちょっとよくないなと。それに、本気で個別株で儲けようと思ったら勉強することもたくさんあるし、情報収集にも時間がかかる。とても仕事との両立は無理だろうと思ったんです。そういう意味でも、私にとってはやはりインデックス投資が適しているんでしょうね」

―― インデックス投資は「ほったらかし」にできるのも利点と、よくいいますね

「そうですね。私自身、投資にかけている時間は月に10分くらいだと思います。インデックス投資は大儲けはできないけど理論的な裏付けがあって、投資のプロがやっても自分がやっても大差なく、着実に資産を築ける。アクティブ投資家の方からはよく『市場平均にタダ乗りしている』と言われていて、その通りなんですけど、仕事も頑張りたいサラリーマンが無理なくやるには一番現実的な選択肢ですよね」

■12年間の利益は「高級車が買える」くらい

8つの投資先にほぼ均等な割合で投資している。

8つの投資先にほぼ均等な割合で投資している 図表:藤田としお

購入するのはすべて投資信託。バランス型投資信託をメインとして、毎月8対1対1の割合で自動買付を行っている

購入するのはすべて投資信託。バランス型投資信託をメインとして、毎月8対1対1の割合で自動買付を行っている

では、気になる運用成績は?

「12年間のパフォーマンスは年率平均5~6%。リーマンショックで価値が半分になった後もリカバリーできているので十分かなと。現時点での利益は高級車が買えるくらいですかね。保険屋さんに勧められた商品の予定利益が30年で400万円くらいでしたから、そこは超えました」

堅実に資産を積み上げる虫とり小僧さん。将来のお金にまつわる不安が減ったおかげで、精神的にも余裕が生まれているという。

「特に、仕事に対する考え方が変わりました。会社員なので、上司に命令されたら多少意に沿わないことでも飲み込まなきゃいけないんですが、お金に余裕があれば、いつだって会社を辞められるという心の余裕ができる。つまり、『いざとなればNOと言える』拒否権を発動できると思うんです。私の場合、まだそこまでは到達していないんですけど、そこに至る道筋が見えてきたことで精神的にラクになりましたね。儲かったからといってリタイヤしようとは思いませんが、少なくとも『お金のために働く』という状態は脱したいと考えています」

さらに、投資経験で培ったお金のノウハウを子どもに残したいという思いもあるようだ。最後に、少し照れつつも優しい親父の顔で語ってくれた。

「ブログのタイトルが『いつか子供に伝えたいお金の話』なんですけど、子どもへの遺言のつもりで書いています。今は小学生と幼稚園なので全く理解できていませんが、いつか関心を持ったときに読んでほしいなと。お金のことって、なぜか親も学校もなかなか教えてくれませんよね。特に投資はギャンブル的なイメージが強く、敬遠されます。確かに、ギャンブルのような投資もありますが、自分の子どもにはそれを見極める力をつけてほしいと思っているんです」

(榎並紀行/やじろべえ)