送金、寄付がスムーズに…
個人間送金アプリ「Kyash」 手数料ゼロの理由とは?
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を掛け合わせた造語「フィンテック」。スマホを使用した決済や家計管理、AIによる資産運用のアドバイスなど、最新技術を駆使した金融サービス全般を指す。日本でもITベンチャーを中心にさまざまなサービスがローンチされているが、なかでも特に注目度の高いサービスを取材。業界の最前線に迫ってみよう。
■金額&メッセージ入力+スワイプでSNSユーザーの繋がりからも送金
話を伺ったのはKyash代表取締役社長の鷹取真一氏。少額の送金・決済を可能にするスマホアプリ「Kyash」を運営している。飲み会の“割り勘”のような少額の個人間送金をより便利にするサービスで、昨年12月までに、三井住友銀行や伊藤忠商事、電通グループなどから約13億円の資金を調達。今年4月にiOS版をリリースした。
すでにアプリでの個人間送金を可能にしているサービスは複数存在するが、Kyashはどのような点が革新的なのだろうか? まずはサービスの概要を聞いた。
「Kyashは『Facebook』『LINE』『Twitter』といったSNSの繋がりを利用して送金できるアプリ。SNSのメッセージやメールで送信したKyashのリンクから、アプリを通じてお金のやりとりができる仕組みです。ユーザー登録をすると、アプリ上にKyash専用の“バーチャルなVisaカード”を発行。これにクレジットカード・デビットカード・プリペイドカードを紐づけ、お金の引き落とし先とします」
ただし、紐づけたクレジットカードの与信枠を超えたり、デビットカードやプリペイドカードの利用可能額が不足する場合、送金することはできないという。
なお、他にはないKyashの特徴は以下の3点だ。
「1つ目は『手数料無料』であること。銀行振り込みだと手数料が掛かりますがKyashは24時間スマホさえあればいつでも0円で送金することができます。2つ目は『Kyashで受け取ったお金は店舗で使用可能』になることです。Amazonや楽天、ZOZOTOWNなどネットショップでの買い物や、モバイルSuicaにチャージできます。3つ目は『登録がとても簡単』という点。たとえば、Facebookアカウントやメールアドレスとパスワードなどの情報を登録、電話番号の認証が終われば利用をはじめられます。個人確認の手間を大幅にカットできるのです」
■スマホで新たな“価値交換”のかたちを創り上げる
ユーザーから手数料を取らないとなると、Kyashはどのように収益をあげているのだろうか。
「Kyashで受け取ったお金で、Kyash専用のバーチャルなVisaカードに記載されている番号を使って買い物ができます。そうすると、たとえばAmazonで買い物をした場合、AmazonからKyashにカード決済手数料が支払われます。受け取ったお金をKyash専用のVisaカードから、別のショップで使ってもらうことで収益を生み出す仕組みになっています」
また、送金と決済のシステムを独自に開発している点も革新的だという。
「これまでネットワーク上での送金と決済にあたって、完全に手数料無料とすることは難しかった。自前のシステムで構築しているからこそ、ユーザーから手数料を取らない運用が可能になりました」
このように、送金と決済の利便性が向上することで、個人間の割り勘や集金の手間が掛からなくなることに加えて、新しい経済循環の活性化も期待できると鷹取氏は話す。
「たとえば、寄付。これまでは寄付をしてもらう側がウェブ上などで銀行振込口座を提示するのが一般的でした。ただ、それだと銀行に足を運ぶ手間がかかるため、寄付の意欲はあっても実際に振り込みを実行する人は少数だったのではないでしょうか。その点Kyashの場合は、登録時にQRコードを発行できるので、テレビや雑誌の誌面などにそのQRコードを表示し、それを読み取るだけで簡単に寄付ができるようになります。善意の気持ちを阻む手間をスマホ1台で払拭できるようになれば、より新しい価値の循環が生まれるのではないかと考えています」
現金の受け渡しや、銀行での振り込みなど、煩わしさがつきものだった“個人間のお金のやりとり”。Kyashの登場によってその利便性が格段に上がるだけではなく、これまであまりなかったような、寄付やチップなども普及していくかもしれない。
今後はAndroid端末も対応していくとのこと。スマホ&SNS時代の金融サービスとして、ますます需要の高まりが期待できるだろう。
(末吉陽子/やじろべえ)
※記事の内容は2017年4月14日現在の情報です