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人工知能×仕訳…「freee」が変える、働き方の価値観

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●人工知能を使い、金融データを自動で仕訳

お話を聞いたのは、会計や人事労務、起業手続きといった、いわゆる「バックオフィス業務」のサポートサービスを展開するfreee。2013年3月にリリースした「クラウド会計ソフト freee」は、これまで80万以上の事業所で使用されており、クラウド会計ソフト市場ではトップのシェアを誇る(※デジタルインファクト調べ。2016年8月時点)。ユーザーの属性も、個人事業主から従業員300名ほどの企業まで幅広い。

もちろん、これまでも世の中に「会計ソフト」は存在した。だがそれらは、ユーザーが作業ごとに数値を打ち込んで、ソフトが計算と帳簿をするのが一般的。経理作業ごとに同じような情報をたびたび入力する手間があった。一方「クラウド会計ソフト freee」では、請求書のやり取りなどを一度入力しておけば、そのデータをワンストップに活用して、後々の帳簿作成や法人税の申告書作成まで行ってくれる。その「自動化」がヒットの所以といえる。

そして、この「自動化」において、フィンテック領域の技術が取り入れられている。詳しい話を、同社の金融事業を統括する花井一寛氏に聞いた。

「会計業務では、事業で出入りしたお金を用途ごとに“仕訳”しなければなりません。入ったお金が『売上』なのか、出ていったお金が『経費』なのかなど。『クラウド会計ソフト freee』では、金融機関やクレジット会社、さらには電子決済サービスなどと連携し、それぞれの出入金データをソフトに取り入れます。そしてそれを人工知能によって自動で仕訳していきます」

花井氏をはじめ、社員の多くは会社のロゴが入ったTシャツを着ている。

花井氏をはじめ、社員の多くは会社のロゴが入ったTシャツを着ている。

人工知能による自動仕訳の技術は「クラウド会計で唯一特許を取得している」とのこと。今までは、銀行の通帳を見ながら出入金を会計ソフトに転記して、さらに仕訳するという作業があったが、これにより全自動となった。

「経理作業は“なくてはならないもの”ですが、『人がやらなくていいことは人にやらせない』のが私たちの理想。年末調整や確定申告などに煩わしさを感じる方も多いと思いますが、そういった面倒な作業をなくして、ビジネスパーソンが創造的な活動に時間を割けるようになってほしいんです」

また、経理などの部署はこれまで「事務作業」のイメージが強かった。しかしそれを効率化できれば、売上げや経費のデータから経営改善を考えるなど、「バックオフィスが攻めの業務に転じられる」と花井氏。そういった形で「バックオフィスの変革を通じて働く人の価値観が変わるきっかけになればいい」と思いを述べる。

●経営状況の「見える化」から生まれる最新サービス

フィンテックを生かしたfreeeのサービス展開は、これだけにとどまらない。あらゆる経理作業をクラウド上で一括管理すると、企業のお金にまつわるデータがすべて一箇所に集まるので、経営状況の「見える化」になる。

それを役立てる形で、金融機関との連携事業をいくつか始めている。ひとつが、今年4月から北國銀行とスタートした「リアルタイム経営シグナル」。金融機関は企業への融資や経営コンサルティングを行っているが、実は銀行の担当者が常に企業の経営状況を把握しているとは限らない。なぜなら、融資先に定期的に訪問して試算表などの会計情報を入手した後、銀行に戻って分析しなければならず、融資先が増えるほど分析に費やす負担が大きくなるからだ。金融機関はなるべく融資先の経営状況の変化を早くそれを察知して対策したいものの、情報入手や分析にかかる負担の大きさもありリアルタイムに把握するのは難しかった。

「『クラウド会計ソフト freee』では企業の会計データが一括集約されるので、事業概況や資金繰り、経理状況で重要な変化が起きた際に、金融機関の担当者にシグナルを飛ばすシステムを作りました。業績が良くても悪くても、資金は足りなくなります。金融機関はもちろん、経営者も気づかない課題をいち早く察知できるようになることは大きなメリットです。データの収集と分析は自動化して、金融機関ももっと本業、つまり融資先の経営支援に集中できるようになってほしいですし、そうなれば融資先の生産性が向上することにつながります」

また、融資手続きの簡略化にもfreeeは役立っている。中小企業の融資は「審査に1〜2ヶ月かかることが多く、ビジネスチャンスを逸するケースも多かった」(花井氏)という。しかし、細かなデータが集約された「クラウド会計ソフト freee」を使うことで、短期間での融資審査を実施。ジャパンネット銀行や横浜銀行とのサービスでは、最短で当日に審査結果が出るという。

観葉植物や卓球台があるなど、freeeは独特なオフィスを持つ企業もである。

観葉植物や卓球台があるなど、freeeは独特なオフィスを持つ企業もである。

現在は「会社設立 freee」や「開業 freee」、そして「クラウド給与計算ソフト freee」など、起業から経営まで、バックオフィスのサービスを揃えている。そこには「バックオフィス業務の効率化」だけではない、もうひとつの思いもあるようだ。

「『チャレンジする人を応援したい』という考えがあります。起業する方、経営者の方の中には、お金の計算や細かな手続きが苦手な方もいます。融資や会社設立の手続きを補うことで、少しでもチャレンジしやすい世の中になればいいですよね」

バックオフィス業務を、新たな技術で変えていったfreee。そのサービスが、働き方や働く人の価値観を変え、さらにはチャレンジしやすい土壌を作っていく。バックオフィスにもたらされる改革は、そんな未来へとつながるのだろう。

(有井太郎)※記事の内容は2017年6月3日現在の情報です

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