フィンテックの最前線を追う!

有名企業の株を1000円で買えるとあって20〜30代男性に人気

利用者の7割が投資ビギナー!「One Tap BUY」とは

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本来なら数万円の株を1000円で買えるカラクリ

初めて「株を買おう」と思ったとき、まずはよく知っている大企業の銘柄から買いたいと考える人も多いだろう。たしかに、最初から知らない小さな企業に投資するより、手堅く大企業の株を持ちたくなる心理はうなずける。

ただ、そこで立ちはだかるのが「最低購入金額」。各銘柄には最低◯株買わなければいけないという決まりがあり、例えばその単位(単元株)を100株と定めている会社などが多い。すると、たとえ1株数百円の銘柄でも、数万円になってしまうし、1株の価格が高い会社では、最低購入金額が数十万から数百万円になることもあるわけだ。

ビギナーにとっては、いきなり大金を投資するハードルは高いもの。そんな悩みを受け、「1000円で株を買えるアプリ」が登場している。One Tap BUYだ。

「まず、市場に出ているさまざまな銘柄の株を、私たちの会社の自己資金で購入します。その株を在庫として持ち、ユーザーの注文に合わせて1000円ずつ小分けにした数株分を売買する仕組み。通常の株式投資は、1株あたりの金額や最低購入金額を見ながら“何株買うか”を考えますが、このアプリでは1000円以上1000円単位で、“いくら買うか”を自由に選べます」

システムを説明してくれたのは、アプリを運営するOne Tap BUYの代表取締役社長・林和人氏。2016年6月にローンチされ、アメリカ株と日本株それぞれ30銘柄の株を売買できる。そのほか、日本株ETF(日経平均株価などの指数に連動する商品)も3種類用意されている。

証券会社出身の林氏は「株式投資の“ウザい”をなくしたい」と力強く言い切る。

証券会社出身の林氏は「株式投資の“ウザい”をなくしたい」と力強く言い切る。

会社が株を自己資金でまず購入し、買いたい金額分の株式を「ユーザー⇔One Tap Buy」間で相対取引するフローであることから、現在のところユーザーが購入することができる株は30銘柄に限られている。とはいえ米国株ならFacebookやApple、日本株ならトヨタ自動車や任天堂など、有名企業の銘柄が並ぶ。「30銘柄は、安定性や知名度、人気の高さなど、あくまで顧客目線で選んでいます」と林氏。当初は米国株と日本株ETFの2つを取り扱っていたが、7月24日から日本株30銘柄も売買可能となった。

このサービスを可能にしたフィンテック技術とは

一度自己資金で購入した株を、小分けにしてアプリ上でユーザーと売買する。1000円からの購入はこのアイデアの賜物だが、実現にはフィンテックの技術が欠かせなかった。

「たとえばAという株をユーザーが1000円で買おうと思ったとき、画面の『買う』をタップした瞬間、市場でのリアルタイムの株価と、米国株ならドル円の為替をチェックします。そして、当社が保有する株の在庫から1000円分に当たる株数を算出して渡します。このようなクローリング作業を超高速の処理で行います」

自分がどのタイミングでその銘柄をいくら買い、どんな推移で動いているかを確認できる。

自分がどのタイミングでその銘柄をいくら買い、どんな推移で動いているかを確認できる。

超高速の処理がなければ、リアルタイムの株価を1000円単位の売買に反映することができない。法令をクリアしつつ、フィンテック技術で新たなサービスを生み出したといえよう。

もともと証券会社にいた林氏は、当時、知り合いの大学生から「ある2社の株を10万円だけ買いたいけど、最低売買代金が高くて買えない」と言われたという。「彼はこの2社が好きで、シンプルにその株を買いたかったんですね。でも、彼のような若い人や初心者が株を始めたくても、お金のハードルがあります。それらを解消したいと思いました」と、サービスを開発したきっかけを語る。

投資の“1歩目”を意識するからこそ、アプリでは「簡単さ」にこだわっている。株を買う際も、3タップで完了するのが特徴だ。

「さらに、自分が保有する資産がどんな割合で株や現金に振り分けられているかをパイチャート化できます。そして、パイチャート上のAという銘柄の割合を画面上で変化させると、その動きに合わせて売買できます。Aの保有割合をもっと増やしたければ、パイチャートの割合を少し増やして『買う』をタップすれば完了です」

円グラフの割合を動かして、感覚的に売買ができる。取材中にも売買を実演していただいたが、それも少額投資だからこそできることだ。

円グラフの割合を動かして、感覚的に売買ができる。取材中にも売買を実演していただいたが、それも少額投資だからこそできることだ。

そのほか、アプリ内には各銘柄の企業や株取引の基本を扱ったマンガを用意。各社の創業ストーリーや、証券口座開設の仕方といったテーマを学べる。

当然ながらアプリは初心者に好まれており、ユーザーの7割は「もともと投資経験がない人」だという。年齢は約6割が20〜30代で、性別は男性が9割と圧倒的に多いようだ。

なお、同社では「積み株」というアプリも出しており、自分の決めたスケジュールで、30銘柄から好きな銘柄を選んで1000円から積立投資することも可能。「毎月○日にA銘柄を1000円積み立てる」など、少額の貯金感覚でできることから「主婦層にヒットしている」という。

「今の日本は、短い期間で利益を追求する“投機”を行う方が多いですよね。少額投資ができないため、大きなお金はなるべく短期で回収したくなります。それも悪くないのですが、もっと気軽に長期間の投資ができる世の中にしたい。そのために、少額で簡単なサービスをどんどん進化させていきます」

今後は、「カードのポイントで株を買えたり、商品の写メを撮ったらその会社の株購入につながったり、今までにない形を作りたい」と林氏。フィンテックの技術をフル活用して、“簡単で手軽な投資”の形を追求していく。

林氏は、少額だからこそできる、株式の新しいあり方を目指す。

林氏は、少額だからこそできる、株式の新しいあり方を目指す。

(有井太郎)

※記事の内容は2017年8月5日現在の情報です