教えて!『指数将軍』

教えて!『指数将軍』特別編

大注目のESG投資、その魅力を語る!

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ESG指数に連動するETFが上場

2017年9月26日に、大和投信による3つのETFが上場する予定となっています。これが日本における初めての本格的ESG指数をベースとしたETFと言えるでしょう。既に多くの報道がなされている通り、世界最大の公的年金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が7月に3つのESG指数に投資を開始したと発表しており、今回のETFはそれら3指数をベースにしています。

ダイワ上場投信-MSCI日本株女性活躍指数(WIN)(1652)
ダイワ上場投信-MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数(1653)
ダイワ上場投信-FTSE Blossom Japan Index(1654)

「ESG」とは、環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、現在世界的に急速に普及しているものです。第10回でご説明した「スマートベータ」と並んで、今後の資産運用のあり方を大きく変えると言われています。とうとうその流れが日本に到来したと言えるでしょう。すべての投資家が大注目すべきテーマです。

そもそも、ESG投資とは?

ESG投資と同じような言葉としては、「社会的責任投資」とか「責任投資」、「SRI(Socially Responsible Investment)」など色々ありますが、ここではESG投資と言うことにします。実はESG投資と同じような現象は2000年代初頭にも起こりました。

しかし、その時はあまり投資家に受け入れられずに数年でブームは消え去りました。その記憶のある人にとっては、「ESG投資は一過性のブームでしょ。またブームが来たの、懲りないね」という感じだと思います。しかし、今起こっていることは一過性ではなく、将来にわたってより大きなものになると言われています。その背景をご説明しましょう。

まず、ESG投資が注目されるようになったきっかけは、2008年の世界金融危機でした。世界金融危機がなぜ起こったのか、将来それが再来しないためにはどうしたら良いのか、という反省が欧米を中心に行われ、その原因として「ショート・ターミズム(短期主義)」があることが分かりました。

これは、企業経営が次の四半期や来年という短期の目標を過剰に重視していたというもので、例えば、本来は中期的に企業価値を増加させる投資プロジェクトであっても、それに投資をすることで次の四半期目標を達成できなくなるなら、その投資プロジェクトは実行しないと言う企業の財務責任者が過半数だったというアメリカの調査があります。

日本で分かりやすい典型的なショート・ターミズムの例が「ブラック企業」です。若い人をたくさん雇用して過酷な環境で疲弊するまで使用すると、短期的には低コストで企業を回すことが可能です。その結果、とても業績の良い企業に見えます。

しかし、そのうちに「ブラック」であることが知られるようになり、若い人自身が働き先として敬遠するようになって、お客さんの評判も悪くなり、いずれは立ち行かなくなります。

このようなショート・ターミズムを長期的投資家はどう見るでしょうか?長期的投資家とは、投資期間が非常に長い投資家のことで、GPIFに代表される公的年金やソブリン・ウェルス・ファンドと言われる投資家が代表的ですが、実は若い人達も「長期投資家」です。

積み立てNISAやiDeCoなどは長期的資産形成のための制度ですので、投資期間が長いのは若い人も同じです。そのような投資家にとって、「数年は業績が良くても長くはもたない企業」というのは投資対象として魅力的でないのは当然だと思います。長期的投資家にとっては、長い間成功する企業への投資が重要で、それがESG投資のキーワードである「持続性」です。

つまり、企業収益を持続的に獲得することを考えるのがESG投資です。(ちなみに、ショート・ターミズムは企業経営だけではなく、資産運用界にも存在しており、それも問題視されています。例えば、企業価値を評価するアナリストの人達のボーナスはほとんど1年間の業績で決まっているそうです。そうなると、本当は中期的に魅力的な企業があっても1年後に短期的に株価が上がりそうな企業を優先することになります。)

Save World Environment Ecology Conference

重要になる「持続性」

つまり、長期投資家は企業活動や経済社会全体の持続性に関心を持ち始めたのですが、その持続性に大きな影響を与えるのがESGリスクと言われるもので、様々なものがあります。

例えば、代表的なESGリスクである気候変動の場合、気温が上昇することによって災害が増えたり、海面上昇が起こったりします。それ自体が企業に影響することもありますが(例:損害保険の支払いが過大になる)、それよりも大きな影響は「気温上昇を2℃以内に抑制しよう」という規制から発生します。

つまり、二酸化炭素排出に課税されたり、化石燃料の値段が上がったり、エネルギー使用コストがあがるなど、気温上昇を抑制するための規制が企業にとってのコスト上昇につながるのです。ESG投資の場合、このようなリスクに対しては「エネルギーを効率的に使用する企業」や「二酸化炭素の排出量が少ない企業」や「太陽光発電などの代替エネルギーに取り組む企業」などが高く評価され、優先的に投資されることになります。

このように外部的要因(企業経営の外にある要因)から発生するESGリスクもあれば、「サプライチェーンを含む労働者管理」や「不正会計」などの内部要因に関係するESGリスクもあります。こうしたリスクに共通する特徴は、「近い将来に発生するかは分からないが、将来的にはいつか発生することが確実に予想されること」で、かつ「発生したら企業の業績に大きな影響を与える」ということです。

これからの社会はSNSの発達を通じてますます情報が拡散・共有されるスピードが上がり、人権侵害・環境破壊・不正行為などに対する市民の目や問題意識はますます高くなるので、ESGリスク要因が企業活動に影響を与える可能性はますます大きくなると言われています。

いったんESGリスクが顕在化すると業績に悪影響を与えるため、長期的投資家としてはそのような影響を事前にできるだけ小さくしておきたいと考えるのは自然です。(結局、業績が悪化するということは、株主にとっての利益が減るということに他なりませんので。)そこで、投資をする際に、ESG要素を考慮して投資をするというのがESG投資です。

冒頭、ESG投資は一過性のブームではなく、むしろこれから一層広がると話したのはこのような背景があるからです。つまり、現在広がっているESG投資とは、「投資を通じて社会貢献しましょう」というような単純で非金融的ものではなく、長期投資家が「長期的なリターンの最大化を実現するための合理的な投資手法」として広がっています。

GPIFがこのような考え方のもとでESG投資を始めたことは非常に示唆に富んでおり、多くの投資家が参考にできるものだと思います。

ESG投資のリターン

ESG投資をすることでリターンが上がるのなら簡単なのですが、現時点では、ESG評価の高い企業に投資をすることで株価パフォーマンスが良くなるのかということについて、コンセンサスは得られていないと思います。恐らく「ESG投資をすることで少なくともパフォーマンスが悪化する事はない」というのが現在のコンセンサスでしょう。

その証拠に、多くのESG指数のパフォーマンスはTOPIXなどの市場ベンチマークを若干上回る程度で、それほど大きく違わないのが実情です。その結果を見て、「パフォーマンスが市場並みなのであれば、ESG投資はやらない」と考える投資家もいます。

そういう考えも分かりますが、筆者は逆の発想をしてもらいたいと思います。パフォーマンスが市場並みなのであれば、むしろ積極的にESG投資を選ぶべきだと思います。それはなぜかと言うと、ESGリスクにまだ気付いていない企業や対応できていない企業はたくさんあるからです。むしろ、そのような企業の方が多いでしょう。それらの企業にも従業員や取引先や株主がいて、多くの人の生活がかかっています。そういう企業がESGリスクに直面すると極端な場合は倒産にまで至ります。

今のうちに多くの投資家がESG投資を始めることで、ESG指数に採用されていない企業(つまり、ESGリスクの高い企業)は「気付き」を与えられることになります。(ESG指数に採用されなければ投資家が徐々に投資しなくなる、と気付くなど。)早めに気付くことで企業はESGリスクを重視するようになり、それに対応し、それによって従業員や取引先が守られ、結果としては株主もハッピーになれます。

これはとても迂遠な話のようですが、企業経営に対して投資家が発言できるのは株主総会だけではなく、このような投資をすることで企業に影響を与えることも可能なのです。筆者としては、このような動きが広がることで経済社会全体の持続性が増すことを期待したいと思います。

ただ、このような書き方をすると「やっぱりESG投資は社会貢献じゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、これはESG投資をすることの付加価値であり、通常の投資手法にはない付加価値です。それで投資のリターンは少なくとも悪くならないのであれば、とても良い付加価値ではないかと筆者は思います。

加えて、(過去はともかく)将来的な株価パフォーマンスは期待できるとも筆者は思っています。先ほど「これからESG投資は主流になってくる」と書きましたが、ということは中長期的にESG投資家は増えてくる(特にGPIFやソブリン・ウェルス・ファンドという大規模投資家が参入する)ので、需給の法則から言っても、やはり「ESG投資」は魅力的だと思います。

(指数将軍)