BtoB企業から社会を知ろう!

時代変化を恐れない!

フィンテックの荒波に乗り出す「ウェルネット」の挑戦

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株式投資を始めるとき、「ユニクロが好きだから」というふうに、“消費者目線”でばかり企業を選んでいませんか?しかし、ユニクロは1社だけで洋服を作れません。素材、機械、電気やガス、水道、運送、宣伝など、あらゆる会社からモノを仕入れています。あなたが知っている有名企業は氷山の一角で、その裏にはたくさんの「BtoB(Business to Business:企業を相手にした商取引)」が存在するのです。

ふだんあまり表に出ないBtoB企業のトップを直撃するこのコーナー。1回目は、ウェルネット・宮澤一洋社長です。BtoB企業について知って、消費者目線から、“投資家目線”に一歩踏み出そう!

聞き手:室谷明津子 撮影:野瀬勝一

「コンビニ決済」の誕生秘話

――公共料金や通販の支払いを、近所のコンビニで済ませる。私たちが当たり前のように使っている「コンビニ決済」のサービスを広めたのは、ウェルネットです。宮澤一洋社長がこの事業を立ち上げたのは、北海道のガス会社にいたころだそうですね。どうして、ガス会社からコンビニ決済が始まったのですか?

私は大学卒業後、ガスや電気のメーターを作るメーカー「東洋計器」に入社し、全国を営業で回っていました。そのときの顧客の1つ、北海道・札幌のガス会社「一高たかはし(現・いちたかガスワン)」とは、共同で新しいシステムを開発するなど、親しくしていました。仕事で頻繁に出入りするうちに、当時の一高たかはしの社長から「うちで3年間、好きなことをやってみないか」と引き抜かれたのです。

いま思うと、すごい会社ですよね。ガス会社のことなど何もわからない私に、何でもいいから新規事業をやってみろと言ってくれて、他の役員も賛成してくれました。それが1996年。ちょうど「Windows95」が発売され、インターネットが一気に普及した時期です。

北海道で事業をやるとしたら、消費地である首都圏からの「距離」というハンデを克服しなければいけません。それなら、物流コストのかからない、インターネットを使ったビジネスがいい。

そう思っていろいろと調べていたら、「これからEC(電子商取引)が増えて、その決済にコンビニが使われる」という話を聞いたんです。当時、電気や水道の支払いには、既にコンビニ決済が導入されていました。しかし、中小企業が自社のECサイトでコンビニ決済を利用するハードルは、高かった。バーコード付きの払込票とお金の収納情報をやり取りするアプリケーションが必要で、これを作るのには1500万円くらいかかっていたのです。

そこで私は、Windowsを使ってコンビニ決済ができるパッケージソフトを作り、無償で配りました。そのソフトを使ってコンビニ決済をする手数料を、当社がいただく。この事業が爆発的にヒットして、コンビニ決済というサービスがあっという間に世の中に広まりました。親会社(現在は分離独立)の一高たかはしも、ガス料金の収納に使ってくれたので、一石二鳥でしたね。

フィンテック時代にふさわしい「便利さ」を追求

――首都圏から遠い北海道だったから、インターネットというアイデアが出たという話、面白いですね。最近は新たなサービスの構築に挑戦しているとか。

いまは世界中で、キャッシュレス化が進んでいます。当社は「コンビニでの現金決済」というサービスでトップになりましたが、ITの進化によって、これは時代遅れになりつつあります。2~3年前から盛んに「フィンテック」と言われていますが、私は5年前にこの流れを意識し、「ITを使っていまより便利な決済ができるはずだ」と思い、開発を進めてきました。

技術的な壁にぶち当たり、開発が2回とん挫しましたが、今年8月にようやく新サービス「支払秘書」をリリースできました。時間がかかりましたが、その分、完成度には自信があります。世の中にフィンテック・ブームが訪れたという意味でも、リリースのタイミングはちょうどよかったと思います。

「支払秘書」はスマホ用のアプリで、銀行口座からチャージした電子マネーを使って、紙や現金を使わずに各種支払いが行えます。「秘書」という名のとおり、支払期日が近づいても決済が終わっていないときは、「お知らせ機能」が通知をしてくれます。

このアイデアは、私自身が家賃の支払いをたまに忘れてしまうことから、思いつきました(笑)。仕事では、秘書が支払いの稟議書をもってきて、私はハンコをつくだけ。これと同じことを、スマホでできないかなと思ったのがきっかけです。支払う側にとってはキャッシュレスで、期日の管理をしてくれるほか、今月はあといくらの支払いがあるといった「未来の管理」もしてくれる、便利なサービスです。

さっそくこの夏から、関西電力の電力料金の支払いで、「支払秘書」のサービスが始まっています。提携する銀行は三井住友銀行のほか、広島銀行と契約を締結(2017年9月時点)。そのほかの提携に向けた動きも進んでいて、特に地銀からの反応はとてもいい。

というのも、フィンテックに対応したいけど、システム開発までお金をかけられないという地銀が多いからです。「支払秘書」はレベニューシェア方式で、お客さまには開発費も固定費も発生せず、収益の一部を手数料として支払っていただきます。一緒に新しいマーケットを作ろうと呼びかけていて、ここ1~2年で大きく提携行が増えるのではないかと期待しています。

再び、ビッグウェーブがやってきた

――スマホのアプリを使った新しいサービスとして、高速バスの予約・決済ができる「バスもり!」も開始しています。

航空会社や鉄道会社の大手は、規模が大きいので自分たちでアプリの開発ができます。しかし、バス会社は中小規模の会社が100社以上あって、アプリを作るといっても投資効率が非常に悪い。それならば、われわれが代わりに開発した運用プラットフォームを使っていただけばいい。

「支払秘書」も「バスもり!」も、われわれがこれまでコンビニ決済で関係を築いてきた電力・ガス会社やバス会社などが顧客となります。それらの会社と銀行とをマッチングさせて、より便利な決済システムを作っていくのが、これからのウェルネットの戦略です。その際、「すぐに導入できる」アプリケーションであり、いかに相手に開発費をかけさせないかがポイントになる。素材ではなく、すぐに食べられる料理を出すのが、われわれの強みです。

いままで、コンビニ決済というBtoBで堅実に稼いでいたのが、アプリというBtoCのサービスに出て大丈夫なのかと、心配される投資家の方もおられます。ここは、しっかりと方針を説明していくつもりです。確かに、アプリを広めるために多少の宣伝費は使います。しかし、当社が組むのはあくまで企業と銀行で、BtoCに軸足を移すわけではありません。

いまの時代に合った便利な決済プラットフォームを、企業に代わって開発し、お使いいただく。その支払い手数料で稼ぐというビジネスモデルは、変わりません。あくまでフロー型ではなく、顧客を蓄積していくストック型のビジネスで、提携する企業を増やすと同時に利益が積みあがっていくことを目指します。

フィンテックという言葉はそんなに重視していなくて、当社がやるべきは、支払いに関して消費者、企業の双方が感じている「不便さ」を解消していくこと。そこに存在価値があると考えています。

――自社の強みをしっかりと見据えたうえで、新しい時代変化の波に乗る。御社のこれからの挑戦が楽しみです!

いまの時代の空気は、私がWindowsを通してインターネットの可能性に気づき、ウェルネットを創業した90年代にとてもよく似ています。あのときと同じくらい、大きな変化の波がやってきていると感じています。

いまの若手社員は、当社がコンビニ決済で地位を築いた後に入社し、安定した中で仕事をしてきました。そんな社員に、新たな事業を通して、「挑戦する経験」をしてほしい。「変化は、チャンス」と捉えて、これからも時代変化を恐れず、果敢に挑戦していける会社でいたいですね。

 

<プロフィール>

宮澤 一洋
1960年、長野県生まれ。1983年、明治大学政治経済学部卒業。1996年に株式会社一髙たかはし(現・いちたかガスワン)へ新規事業開発担当として入社。事業開発子会社(ウェルネット株式会社)へ異動、事業開発担当取締役就任。2009 年に代表取締役社長就任(現任)。