BtoB企業から社会を知ろう!

日本の中食ニーズを支える

食品トレーNO.1「エフピコ」の進化がすごい

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ふだんの生活で、私たちが直接取引をすることのない「BtoB(Business to Business:企業を相手にした商取引)」企業のトップを直撃するこのコーナー。2回目はエフピコ、佐藤守正社長が登場します。

エフピコは、食品トレー、お弁当や総菜のパックで国内シェアトップ。みなさんも日々の生活で、お世話になっているはずです。彩り、機能、形状。さまざまな工夫で顧客のニーズをつかみ、進化を続けるエフピコの取り組みについて聞きました。

聞き手:室谷明津子 撮影:野瀬勝一

「包む文化」は日本独自のもの

――今回は、私たちがふだん大変お世話になっている会社です。食品トレーで、国内シェアトップ。海外にも進出していると思ったら、意外にも拠点は国内のみ。一切、海外には出ていないのですね。

よく聞かれる質問ですが、考えてみてください。日本ほど「食べ物の器」にこだわる文化をもつ国が、ほかにあるでしょうか?

日本では、どんな居酒屋に行っても、刺身や煮つけを同じ皿で出す店なんてないでしょう。ましてや懐石料理等では、「どんなお皿で、どんな盛り付けで出てくるのか」って楽しみに見ますよね。一方、イタリアンやフレンチ、中華料理でも、皿といえばほとんど白一色です。器ごと見て、旬や鮮度、おいしさ、ボリュームを感じる。こういう文化は、日本でしか通用しません。

器だけでなく、「包む」ことが日本人は好きなんですね。私が新入社員に説明するときに例に出すのが、ご祝儀袋。高い金額だと、豪華な水引が付いた袋に入っています。海外でチェックをあんな袋に入れるなんて、見たことがありません。牛肉を桐箱に入れてプレゼントするなんていうのも、包む文化の象徴です。


われわれが扱う食品トレー、プラスチック容器は、そういう日本人の「こだわり」に応えて進化してきました。創業者の故・小松安弘が食品トレーの事業を立ち上げたとき、後発メーカーで、かつ地方(本社は広島県福山市)の企業なので、なんとか他社と違うことをやらなきゃいけないと考えました。そこで目を付けたのが、日本人の「こだわり」でした。

国内で初めてカラートレーを売り出したのは、エフピコです。いまでは当たり前になっていますが、刺身、オードブルなど、食品に合わせてさまざまな色、柄、形状のトレーが売り場で使われるようになったのは、当社が始めたことなんですね。


さらに、耐熱・耐油といった機能性にもこだわりました。1990年代にコンビニが普及し、「中食」が増えた時代に、そのニーズをどんどん汲み上げました。店内のレンジで温めても大丈夫なお弁当、開けやすいプラスチックのフタつきパックのサラダなど、当社の技術で多くのことが可能になっています。

同じビジネスを海外にもっていっても、おそらく成功しないでしょう。むしろ、国内でのニーズを深掘りし、マーケットを大きくしていくことのほうが、当社にとって重要だと考えています。

システム稼働に苦労した日々

――日本人のこだわりに応えた結果、御社が扱う食品トレーは非常に多品種になっています。その生産を管理するシステム「サプライ・チェーン・マネジメント(SCM)」を、佐藤社長が中心になって導入したと伺っています。現場を一気にIT化するのは、大変だったでしょうね。

それはもう、大変でした。SCMは全体最適を追求するシステムですから、部分で見ると「不最適」がたくさん出てきます。例えば、工場である種のトレーを少し作って、翌週もまた少し作るといった指示が出ると、「まとめて作るほうが安く済むのに」と現場は思うでしょう。一見ムダに見えても、全体ではそのほうが効率的になると理解してもらうのに、時間がかかりました。

――システムを導入するだけでは、課題解決にはならないということですね。

私はいつも言うのですが、いくら仕組みを整えても、それを使いこなす人間がいなくては意味がありません。現場がシステムを使いこなすまでに、5年くらいかかったでしょうか。いまでは全国200を超えるラインで、何時何分にどの商品が作られているのか、すべて見えるようになりました。過剰な在庫、欠品はほとんどゼロです。


以前は年末商戦が近づくと、営業が全国の工場に電話をして、欠品分をかき集めるのが習慣になっていました。いまはもう、そんな風景はありません。営業は本来の仕事である「お客さまのサポート」に専念し、生産管理はSCMが人間よりも完璧に行っています。

国内の需要はまだまだ増える

――国内のニーズとして、最近ではどのようなものが増えていますか。

スーパーなど小売のお客さまがいま困っているのは、人手不足です。店内加工をする人が足りないので、アウトパック化といって、惣菜を外の工場やベンダーの生産ラインで加工するようになっています。そこでわれわれは、生産ラインでより崩れにくく、扱いやすい形状、素材の容器をご提案しています。

また、食品メーカーさんと一緒に、新しいマーケットをつくる「チームX」という試みも行っています。たとえば、生の食材をレンジで温めるだけで惣菜になるという「生から惣菜」という商品が生まれました。これは、「惣菜=調理済み」という常識を覆す画期的な商品です。出来立てだから鮮度がよく、おいしい。もちろん当社のパック技術が可能にしたものです。


開発したとき、味が圧倒的においしいので、これはいける! と思いました。私は自らレンジを担いで、全国のスーパーを回りました(笑)。最近、スーパーによく並ぶようになったので、ぜひチェックしてみてください。

――御社はリサイクルや、その作業に伴う障がい者の雇用もしっかりと取り組み、社会貢献に熱心な企業というイメージがあります。

トレー1枚は非常に安いので、厳密にいってリサイクルはコストがかかります。しかし多くのお客さまが、「原料をムダにせず、再利用している」という当社の姿勢を高く評価してくださっています。消費者の方々にも、使い捨てではないから、気持ちよくトレーを使っていただける。当社にとってリサイクルは、目の前の利益以上の価値があります。


そして、リサイクルには、障がい者のみなさんの力が欠かせません。リサイクルの過程で、カラートレーと白いトレーを分けるのですが、トレーは軽いので機械だと混ざってしまうことがよくあるのです。その作業を根気よく、集中力をもってやっていただける大切な人材です。

私自身、「社会貢献」という言葉は、あまり好きではありません。社会のためにやるというより、事業にとって大切だから、やる。だから継続できる。継続できることが一番大事です。リサイクルも障がい者雇用も、当社が培ってきた大切な財産なのです。

国内では、これから、単身世帯、高齢世帯や共働き世帯による中食のニーズの増加という、大きなニーズが待ち受けています。
食欲をそそる見栄えと、使いやすさを備えた容器の開発を深め、進化させていくこと。これからも国内のお客さまの課題を解決していけば、需要はまだまだ増えると考えています。

――食品トレー1つとっても、奥の深い世界が広がっているのですね。お話を伺って、食品売り場を見る目が変わりそうです。ありがとうございました!

<プロフィール>

佐藤 守正
1959年生まれ。1983年、慶應義塾大学卒業。同年、三井物産に入社。ミツイブッサンロジスティクスInc.(米国)へ出向し、バイスプレジデントを務めた後、1998年にエフピコ取締役就任。翌年、三井物産を退社し、エフピコ経営戦略室長に就任。常務取締役、専務取締役を経て、2001年に代表取締役副社長。2009年より代表取締役社長。

<会社概要>
●事業内容/ポリスチレンペーパーおよび食品トレーの製造・販売。 並びに関連包装資材等の販売
●設立/1962年
●年商/1,728億5,800万円(2017年3月連結実績)
●従業員数/単体807名、グループ4,513名(2017年3月実績)
●業績/中食マーケットの拡大に新容器開発などで対応。2017年3月期は売上・各利益のすべてで過去最高を達成