【急成長企業の研究 第2回】

IPO銘柄の成功条件~新興市場株編~

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はじめに

前回の【急成長企業の研究 第1回】のテーマは「相場に左右されない銘柄の成功条件~オールドエコノミー株編~」であった。バブルのピークにあたる1989年末からアベノミクス相場初期の2013年までの日本株市場が長期にわたって不遇の時代を強いられていた中にあって、非常に高いパフォーマンスを演じた代表的銘柄の成功条件について述べた。

オールドエコノミーかつ大型株の様相が強い銘柄が中心であったが、今回は異なる期間を用いてIPOや新興市場から東証1部に昇格した企業にスポットを当てて、その成功条件について見ていきたい。

過去10年の日本株相場を検証

今回検証するのは2007年末から直近の2017年10月末までの約10年である。2007年と言えば、2005年から始まった小泉郵政解散相場を経て、世界経済拡大のピークに達した年であり相場が活況だった時期にあたる。そのコンディションの良い状況から、2008年の恐ろしいリーマンショック、そしてデフレのどん底で日経平均が安値7,054円を経験して、アベノミクス相場で日本株が蘇った時期までの10年間である。

現在、日経平均は1996年以来21年ぶりとなる22,000円を回復するに至っている。図表1はこの期間中の日経平均の動きである。パフォーマンスは2007年末の15,307円から2017年10月末の22,011円まで43.8%の上昇となった。

図表1:日経平均株価(2007年末~2017年10月末)

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【出所】東証作成

同期間中のトップ25社を眺めてみると…

こうした状況の中、2017年10月末でTOPIX構成銘柄2029社を対象に、そのトップ25社を並べたものが図表2である。前回レポートのトップ25社と比較していただきたい(1989年末から2013年末の期間中、継続して東証に上場している994銘柄のトップパフォーマー25社)。

今回のリストは、おそらく読者の皆さんにとって馴染みのない銘柄がずらりと並んでいるのではないだろうか?

図表2:2007年末~2017年10月末のトップパフォーマー25社

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【出所】株式分割調整後の株価をもとに東証作成

今回のランキングにおいても東証1部銘柄が全て占めているが、その顔触れを見るとオールドエコノミーや大型株は一切入っていない。ここに登場しているのは東証1部といっても、かつてはジャスダックやマザーズ市場に上場していた企業、すなわち2000年~2007年くらいの間にIPOした企業が大半となっている。

「テンバガー」という言葉を一度は耳にした人も多いと思う。これはアメリカの大手投信運用会社の伝説的ファンド・マネジャーのピーター・リンチがよく口にしていた言葉で、「投資する企業は将来的に10倍に大化けするような銘柄」という彼の手法で有名になった。

リターン100%は株価が2倍、400%で5倍、そして900%になれば株価は10倍になるので、図表2のトップのMonotaROの7504%は株価が76倍、23位の日本M&Aセンターでもリターン1051%で11倍強に上昇しており、文字通りテンバガーのオンパレードだ。

トヨタ自動車や伊藤忠商事、三菱UFJフィナンシャル・グループといった大企業にこうしたテンバガーを期待することはできない。なぜならすでに大型株として仕上がっていて、ここから10倍もの利益成長や、バリュエーションの拡大を期待できないからである。大型株になればなるほどバリュエーションは相対的に下がっていく傾向があるのに対して、これから大きな成長が期待できる銘柄は利益成長とともにバリュエーションは拡大する、すなわち、割高に買われる傾向がある。これが小型株投資の醍醐味である。

代表的銘柄に学ぶ成功条件

トップ25社を見ると、その時価総額は300億円~1兆円と多岐にわたっている。中でも時価総額が3000億円以上にまで成長した、すなわち「小型株から大型株の仲間入りを遂げた」銘柄を拾うと、トップのMonotaRO、3位のスタートトゥデイ、8位のGMOペイメントゲートウェイ、16位のコスモス薬品、20位のピジョン、23位の日本M&Aセンター、24位のエムスリーがとりわけ目立つ存在となっている。

紙面が限られているため、ひとつひとつに触れていくわけにはいかないが、トップパフォーマーを演じた次の3銘柄について見てみることにしよう。

MonotaRO

当社は2000年に住友商事と米国資材通販大手による共同出資により設立され、2006年12月に東証マザーズに上場した。工場用間接資材(工場の消耗品や交換部品など)のネット通販を手掛けており、中心顧客は中小の製造業者である。

株価が実に76倍となったトップパフォーマーのMonotaROと言えども、上場時は試練であった。

分割調整なしの当時の株価推移を見ると公開直後に862,000円の高値を付けたものの、小型株市場の総崩れで2008年2月には安値95,400円と約1/10まで下落。

PERも1ケタ寸前のちょうど10倍まで沈むという、ダメなマザーズ銘柄の典型のようなIPOであった。当時の営業利益はまだ4.8億円と小粒だったため、投資魅力のない企業として、十把ひとからげに捉えられてもしかたのない存在だった。

しかしながら、登録会員数を順調に伸ばしつつ取扱製品の拡大という掛け算効果でみるみる業績を拡大。

17年度の業績予想では売上高840億円と10年間で8倍、営業利益は116億円と24倍になった。現在は高成長企業という認識をされているためPERは50倍近くになっている。

現在、小型株の平均的なPERは20倍前後だが、本当の高成長銘柄はプレミアムがついて40倍、50倍も珍しくない。当社の場合の株価76倍は、利益24倍×バリュエーションの拡大(PER10倍→45倍)でほぼ説明がつく。

2012年時点でのPERも50倍近くになっていたが、バリュエーションが高いからと言って見送っていると、当社のような高成長銘柄をみすみす逃してしまうことになる。

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【出所】株式分割調整後の株価をもとに東証作成

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【出所】株価は東証作成(株式分割調整後)。株価以外は筆者作成

② スタートトゥデイ

2000年に前澤社長によって設立され、2007年12月に東証マザーズに上場。アパレル専門のネット通販サイト「ZOZOTOWN」を運営している。

衣料品の買い物といえば、やはりお店に行って実際に試着してから買う、というのが私たちの従来の購入パターンであったが、そういう既成概念を破って、ネットで安心して購買を促進する仕掛けづくりをおこなうことで新たな販売ルートを開拓していったところが革新的であった。

ネット通販はアマゾンや楽天をはじめとして競合は多いが、当社の場合はアパレルに特化して早くから知名度を上げて顧客をつかんだ点において先行者メリットを発揮している。

利用者数の増加に加え、取り扱いブランドや商品点数のアップにより、当社も掛け算効果で業績を伸ばしている。17年度の業績予想では売上高1000億円と10年間で12倍、営業利益は320億円と19倍になった。

当社も高成長企業という認識をされているため、現在のPERは50倍近くになっている。50倍という数字だけを見ると「割高」であるが、成長力が維持できるのなら、高バリュエーションを保ちながら利益が伸びた分だけ株価が上昇するというパターンだ。

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【出所】株式分割調整後の株価をもとに東証作成

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【出所】株価は東証作成(株式分割調整後)。株価以外は筆者作成

③ GMOペイメントゲートウェイ

1995年の設立。2005年にGMOインターネットの子会社となり、2005年4月に東証マザーズに上場。クレジットカード決済サービスを提供している。

まだクレジットカードでの取り扱いをおこなっていなかった事業者や販売店を開拓して、カード会社との加盟店契約を包括代行するサービスを拡大することで成長してきた企業である。

加えて、NHKや月額課金型の事業者、公共料金・年金・税金など決済のコンビニ経由による取り扱いもおこなうことでサービスを拡大。さらに電子マネー向け決済サービスにも事業領域を広げている。

海外展開ではASEANに進出しており、日系企業の決済支援や現地企業への出資通じて売り上げ拡大目指している。先ほど取り上げたスタートトゥデイとは2016年11月にZOZOTOWNの「ツケ払い」サービスの決済事業を開始しており、両社にとっての相乗効果を目指している。

17年度の業績予想では売上高210億円と10年間で11倍、営業利益は50億円と8倍になっているが、現在のバリュエーションを見るとPERで90倍程度である。

50倍程度で買われる高成長企業とは違い、一段のプレミアムがついているということは、ひとえに期待値の高い現れである。今後、投資家の期待を裏切らない業績を出していけるかどうか。ハードルが上がっている状況にあるといえる。

 

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【出所】株式分割調整後の株価をもとに東証作成

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【出所】株価は東証作成(株式分割調整後)。株価以外は筆者作成

 

(太田忠投資評価研究所 代表取締役社長 太田 忠)