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気軽な「おつり投資」が、投資の心理的ハードルを越える

日常のおつりで資産運用が行える「マメタス」とは

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「おつり」と「投資」のマッチには理由がある

フィンテック企業の台頭で、これまでにないアイデアがサービスとして生まれている。“おつり”と“投資”を結びつけたアプリ「マメタス」もそのひとつだ。

マメタスは、おつりが自動的に資産運用に回るサービス。クレジットカードをマメタスのアプリに登録し、「100円玉で支払ったおつり」「500円玉で支払ったおつり」など、おつりの貯め方を設定する。すると、もしクレジットカードで324円のコーヒーを買った場合、「100円玉で支払ったおつり」の設定なら400円支払ったと想定して76円のおつりを、「500円玉で支払ったおつり」の設定なら176円のおつりを貯蓄。こうして貯まったおつり貯金を、1カ月ごとに資産運用へと自動で回すのだ。

マメタスを開発したのは、国内最大級のロボアドバイザーサービスを提供するウェルスナビ。ロボアドとは、コンピュータが自動で資産運用を行うサービスだ。マメタスは、同社のロボアド「WealthNavi」に登録することで利用可能となる。

ではなぜ、マメタスというアプリが生まれたのだろうか。ウェルスナビ代表取締役CEOの柴山和久氏に聞いた。

「WealthNaviに登録しているユーザーは、わずかでも投資経験のある人がメインです。つまり、最初の一歩は経験しているんですね。ですから、まったく投資経験のない人に一歩踏み出してもらえるサービスが必要だと感じていました」

そのために、まず「少額でできること」が必要と考え、おつりと投資がつながったのだという。ただし、おつり投資の狙いは少額だけではないと柴山氏は続ける。

「資産運用の王道は長期・積立・分散の三要素であり、マメタスは積立の間口を広げることを目的にしています。積立とは、毎月一定の金額を投資する重要な戦略で、相場の動向に左右されにくくなるもの。仮に相場が急落しても、毎月積立で投資していれば、逆に安く買えるチャンスとなり、その後のリターンにつながる可能性が生まれますから」

また、おつり投資という形で負担なく続ければ、三要素の「長期」も満たされる。さらに、マメタスで貯めたお金はWealthNaviで約50ヶ国1万1000銘柄の分散投資に活用される。おつりから三要素を満たす流れこそが、サービスの肝と言えるだろう。

リスクの少ない“おつり”だから、投資に向いている?

柴山氏は、投資が世の中に定着するためにユーザーが直面する「心理的なハードル」をどう越えるか、ずっと考えてきた。

「資産運用は『お金持ちがやる特別なもの』『リスクが怖い』など、心理的なハードルがたくさんあります。だからこそ日常生活の中に溶け込ませることが重要で、コーヒーを飲んだおつりで行えるなら、もっと気軽にチャレンジできますよね。そして、おつりなら最初からアテにしていないお金なので、目減りのリスクや怖さが薄らぐかもしれません。つまり、一時的な相場の変動に流されず、長期での積立を続けやすいはずです。そうやって、心理的なハードルを越えられるかもしれません」

たとえ投資にチャレンジしても、一時的に資産が減ると離脱してしまう人が多い。そうではなく「積立を長期で継続する中で、投資の知識を肌感覚で身につけてほしい」と柴山氏。気軽にできるおつり投資には、そんな思いが込められている。

マメタスの操作画面も「WealthNaviと違って、軽く柔らかいものにしました」と柴山氏。それも、“気軽に始めてほしい”という思いの表れだ。とはいえ、フィンテックとしては最先端の技術が結集したサービスでもある。

「クレジットカードで支払ったときに“おつり”を自動で取得する技術があり、おつりを口座に自動入金する技術があり、最後にロボアドに結びつくので、マメタスは3つのフィンテックサービスが連動しているといえます。おつりの自動取得は、家計簿アプリのMoneytreeと連携するなど、フィンテック企業が手を組んでいるのも特徴です」

マメタスは今後も細かなチューニングを行い、より良い形を目指していく。それらを通して「世の中における投資の位置付けを変えたい」と柴山氏は意気込む。

「昔は特別だったのに、今は当たり前のことってたくさんありますよね。飛行機は怖いと感じる人もいたはずですし、ハワイ旅行もかつては『お金持ちが行く特別なもの』という印象でしたが、今や幅広くたくさんの人が足を運んでいます。“怖さ”や“特別感”は、一度乗り越えると変わっていくんですよね。投資も昔の飛行機やハワイ旅行に近くて、今は『怖い』『特別なもの』という印象が強いですが、一度乗り越えれば変わるはず。その中で、誰もが気軽にできるものになればいいと思います」

投資に漂う心理的なハードル。これらを乗り越える方法が増えれば、投資はより広く深く理解されるだろう。それをサポートするのが、他でもないフィンテックなのだ。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)