BtoB企業から社会を知ろう!

まるで魔法の技術

「なんでも包む」機械で世界一!

TAGS.

ふだんの生活で、私たちが直接取引をすることのない「BtoB(Business to Business:企業を相手にした商取引)」企業のトップを直撃するこのコーナー。3回目はレオン自動機、田代康憲社長です。

まんじゅう、中華まん、クリームパンなど、生地と中身を「包む機械」の開発に挑み、いまや世界中の食品メーカーに供給する、オンリーワン企業に迫ります!

聞き手:室谷明津子 撮影:稲垣純也

すべては「レオロジー」から始まった

――御社の包あん機「火星人®」で作る製品例を見ると、まんじゅうや中華まんはもちろん、チョコ入りクッキー、チーズ入りハンバーグやコロッケなど、あらゆる食品が並んでいます。中国の月餅やロシアのピロシキなど、さまざまな国の名物を作るのにも、いまは「火星人®」が使われているのですね。

たとえば中国の月餅は、春節(中国の正月)の時期に大量に売れます。それをすべて職人の手作業でまかなっていたのを、当社は世界で初めて自動化したわけです。現在、120カ国以上の国・地域に輸出し、国内での包あん機のシェア90%を当社がもっています。

――まさに、ニッチ・トップですね! 他社が似たような製品を出して来ないのですか。

「包あん機」の発売から54年経ちますが、いまだ当社の技術レベルに達する会社は出て来ていません。新興国でいくつか、包あん機を売る会社がありますが、まだまだです。「ちょっと包む」ことはできても、われわれの機械のように、生地を伸ばしたり折り曲げたり、注入するあんの量を細かく調整したりといった、多様な機能をつけることができないのです。

創業者の林虎彦(現・名誉会長)は、戦後、和菓子職人として働くうちに、あんを包む単純作業をひたすら人間が繰り返すことに、疑問を感じました。手間ひまのかかる仕事を機械に任せれば、職人はもっと創造的な仕事に時間を使えると考えたのです。

「包あん機を開発しよう」と決めてから、図書館に通って海外の文献を大量に読んで勉強したと聞いています。というのも、和菓子の生地はべたべたしていて、手にくっつく。そういう素材を機械で成型する方法を知るために、「レオロジー(流動学)」を学ぶ必要がありました。しかし当時、日本にはレオロジーについての文献が少なく、ドイツやアメリカの文献を読むしかなかったのです。

10余年の試行錯誤の結果、1963年に包あん機が完成しました。レオロジーを機械に応用する研究自体、世界で類を見ないものでした。それを林が独学で研究し、機械をつくり上げたのです。


――すごい執念、そして努力です。田代社長はエンジニアとして、林さんの「右腕」だったと伺っています。やはり、現場では厳しい方でしたか。

それはもう、開発に対しては非常に厳しかったです。目つきが鋭くて、迫力があるので、周囲のわれわれはピリピリしていました。どの会社もそうだと思いますが、世界になかった機械をゼロから生み出して、そこに思想をこめるわけですから、創業者というのは存在の次元がわれわれと異なります。

設計図ひとつ描くにしても、「何を達成したいのか、まず全体の絵を描きなさい。ものがどう作用を受けて、どう変化するのかを、まず考えなさい」と、本質をつくやり方で教えてもらいました。

包あん機「火星人®」

「売って終わり」にしない

――敷地内に、機械を使って試作する研究所がありますね。

包あん機は世界初の製品でしたから、最初からお客さまに来ていただき、使っていただきながら、一緒に用途を開発するスタイルでやってきました。購入前に機械の使い方をお教えし、どんなレシピが作れるかを一緒に実験します。そうして納得されたお客さまにだけ、機械を販売するのです。

――ただ「売る」だけじゃなく、顧客が納得して買うことを大切にしているのですね。

販売した後も、お客さまとの関係は続きます。技術的なサポートやメンテナンスといったアフターフォローはもちろん、お客さまが特に喜ばれるのは、「情報」です。

われわれのお客さまは世界各国、日本各地にいて、営業が日々足を運んでいます。その中で、当社の機械を使ってどんな商品を作っているのか、売れ筋、新しい製法など、たくさんの情報が集まってきます。お客さまはみなさん、商売のことを日々考えておられる。ですから、われわれが最新の情報をお話しすると、目が輝き、「もっと聞かせてほしい」「それならうちで、こういう商品もできるのでは」と、大変盛り上がります。


また、当社の研究所や各地の営業所で、定期的に講習会を開いています。そこでは、当社の機械を使って、いま流行りのお菓子やパンをつくるにはどうすればいいのか、われわれが研究したレシピを公開しています。

――そこまでするのですか。機械を売るだけでなく、サービスも徹底していますね。

われわれは決して、「売って終わり」とは思いません。機械を買ってくださったお客さまに、さらに繁盛してほしい。そういう気持ちで情報を提供したり、レシピを提案したりして、売れるお手伝いまでさせていただく。それが、われわれの商売の本質なのです。

創業者の「思想」を後世に伝える

社長に就任する際、私は随分と悩みました。エンジニアとして設計のことはわかっても、経営の知識はなく、創業者のようなカリスマ性もありません。「本当にやれるのだろうか」と思いましたが、ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』を読んで「理念さえあれば、企業は長く続いていく」と学びました。

当社の理念は、「存在理由の企業たらん」。世の中にないものを生み出し、それを使って国際社会の発展に寄与し、「レオンがあってよかった」と言われる会社であること。その創業の理念を後世に伝えていくことこそが、私の使命だと考えました。

そのためには、基本をしっかりと守り、マーケットを見て時代にあわせたマネジメントをしていかなくてはいけません。


――後継社長として、「何をするべきか」がわかったのですね。

そうです。たとえば、いま、国内では労働市場の人手不足が課題になっています。そこで、もっと省人化したい、合理化したいというお客さまのニーズに応えるべく、研究開発の投資を行っています。

また、消費者の嗜好が多様化する中、独自の食感や味を追求する食品メーカーが増えています。もっと歯ごたえを出して、かつ生地を傷めないために、機械でどう力を加えるか。そんな複雑な課題にも応えようと、最近は原材料の素材メーカーとも協力し、研究を進めています。

そうする中で、われわれが提案力を高め、課題を解決する場面を増やしていきたい。お客さまが気づいていない潜在的なニーズを掘り起こし、商売繁盛のお役に立てる「ソリューションビジネス」に力を入れています。

――理念を伝えていくために、社員にどんな言葉をかけていますか。

社員には、「常に考えなさい」と言っています。お客さまが困っているとき、その課題をどう解決するか。どんなに難しくても、「できない」とは決して言わず、寝ても覚めても考え続ける。そうすると、あるとき「ああ、そうか!」とやり方を思いつく瞬間がやってきます。最初は石ころだと思っていたアイデアが、ダイヤモンドだったということも、往々にしてあります。

私自身、創業者とともに必死になって開発をしながら、そういう瞬間を何度も経験してきました。常に考える。あきらめずに、できるまで考え抜く。社員には、そんな姿勢を忘れずにもち続けてほしいですね。

<プロフィール>

田代 康憲
1970年にレオン自動機入社。1986年、開発第一部長。取締役開発設計部長や常務取締役、生産部門・営業部門・技術本部などの管掌を経て、2011年2月に代表取締役社長就任。2017年11月に旭日小綬章を受賞。

<会社概要>
●事業内容/食品機械(包あん機、製パン機、生地シートラインが主力)の開発・製造・販売
●設立/1963年
●年商/254億5,000万円(2017年3月実績)
●従業員数/709名
●業績/国内は人手不足による省人化のニーズなどを受け好調。海外はアジアの成長に乗る。2014年から増益増収を更新中