フィンテックの最前線を追う!

これからは「日本が世界をリードする」!?

後払い決済に顔認証…世界の最先端フィンテックとは?

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日本では盛んに「フィンテック」のニュースが報じられており、動きの激しい業界と言えるだろう。とはいえ、世界ではさらに先進的な実験も行われている。例えばスウェーデンでは、国内大手6銀行が共同運営する『スウィッシュ(Swish)』が普及している。

スウィッシュは、スマホの決済アプリ。利用者の首にかけたカードには携帯電話の番号が記されており、店舗で買い物をした際は、店側がその番号にメッセージを送る。これだけで支払いが完了するのだ。現金はおろか、何かを取り出すことさえ一切ない手軽さだ。

こうした海外の最新動向には、他にどんなものがあるのだろうか。Fintech研究所の所長である、マネーフォワードの瀧俊雄氏に話を聞いた。

中国では、その人の“顔”で決済するサービスも?

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私たちにとって最も身近なフィンテックといえば、決済に関するサービスだろう。フィンテックの普及が進む中国では、顔認証による支払いサービスが登場しているという。

「『スマイル・トゥ・ペイ(Smile to Pay)』というサービスが出ています。中国の決済サービス『アリペイ(Alipay)』からの派生で、商品を選んで顔認証と電話番号の入力を行うと、アリペイ経由で料金を支払えます。ユーザーの顔情報と決済の基盤がつながっているんですね」(瀧氏、以下同)

顔認証の偽造は難しく、また「年老いても同一人物だと認識しやすい」と瀧氏。今後、顔を含め、認証方法は生体認証に進んでいくと予測する。「方法は多岐にわたり、顔、指紋、目、声などが挙げられます。ただし単独ではなく、いくつかの情報やスマホの電話番号などを組み合わせる形が一般的になるでしょう」と続ける。

決済分野では、やはりEC関連のサービスも成長著しい。特に顕著なのが「後払い決済」だ。日本でも徐々に頭角を現しているが、海外ではスウェーデンの『クラルナ (KLARNA)』やオランダの『アディエン(ADYEN)』の「存在感が大きい」と瀧氏は言う。

「ユーザーは、クラルナ を経由した支払い方法さえ確保されていれば、さまざまなサイトで商品を欲しいと思った瞬間に1クリックで購入できます。仕組みとしては、購入手続きをするとクラルナ が代理で支払い、購入者はその後、数日以内にクラルナ にお金を支払うのです」

いわば、クラルナ がいったん“立て替える”形だ。ただし、購入手続きから代理で支払うまでのわずかな間に、クラルナ のシステムが高速でユーザーの与信審査を行う。

瞬時にお金を出し入れする技術は、日本に有利?

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瀧氏は、「今後、決済をデジタルに変換する“だけ”のサービスは一般化し、お金がかからなくなるでしょう。対してクラルナ のようなサービスは、ユーザーが買いたい瞬間に購入でき、店舗はより売れるチャンスが増えます。そういった、ユーザーの購買体験に対する“付加価値”が必要になるのでは」と話す。当然、日本も同じ流れになると見るようだ。

「なお、ヨーロッパの企業は自国だとマーケットが小さいので、国をまたいだクロスボーダーのサービスが発達しています。多数の国に対応できる技術が進んでいるんですね。それを生かして、今後は日本などにも進出してくるかもしれません」

ちなみに、クラルナ はスウェーデンで銀行免許を取得するなど、金融の中枢にも割って入る勢いだ。

「もう一つ面白いのは、中国の『ウィーチャットペイ(WeChat Pay)』です。日本でも知られている中国の決済サービスですが、もともとは『ウィーチャット(Wechat)』というメッセージアプリの派生サービス。ウィーチャットは領域を広げ続けており、アプリ内で近くの病院や電車の時刻を調べたり、レストランの予約ができたりします。もちろん、支払いも可能。つまり、ウィーチャットの中だけで生活が完結してしまうのです」

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まさにテクノロジーが軸となって、金融以外の色々な分野と連携している例だ。日本でも、フィンテックが別分野と連携するケースは多数出てくるだろう。

最後に、世界のフィンテックが隆盛を見せる中で、今後どうなるのだろうか。

「海外の技術は素晴らしいものが多いですが、日本も同様に伸びています。特に今は、お金を出したり受け取ったりするまでの時間を最短にしたい人が増えており、フィンテックではその実現が求められます。日本は、昨年話題になった『キャッシュ(CASH:アイテムの写真を撮って送ると瞬時に現金買取されるアプリ)』など、この部分が進んでいるのは事実。今後リードしていけるのではないでしょうか」

高速でお金が動くサービス。それらが普及する中で、私たちの消費行動はどう変わるのか。買い物が楽になり、消費が促進される可能性もある。日本のフィンテックにおける本領発揮は、これからなのかもしれない。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2018年3月現在の情報です

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