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深圳A株が解禁へ

提供元:東洋証券

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深圳A株が解禁へ
2016年10月11日、広東省深圳市で、①深圳証券取引所、②香港証券取引所、③中国証券登記決済公司、④香港中央決済公司が、「深圳と香港の株式市場の相互乗り入れ制度」の「四者協議」に正式署名した。1990年に上海証券取引所が、翌91年に深圳証券取引所が新設されたのが中国資本市場の第一歩であるが、現実は「外貨建てB株」のみが申し訳程度に海外投資家に開放されたのみで、圧倒的多数を占める人民元建てA株は国内限定の鎖国状況にあった。従って、成長著しい中国企業に興味を持つ海外投資家は、これまで香港取引所に上場されているH株やレッドチップスを通じて株式投資をする以外に手段がなかった。
そのA株市場に、条件付きながら解禁の動きが始まり、上海A株に関しては「上海―香港の相互乗り入れ」という形で、14年11月から取引が開始されており、残る深圳A株の解禁時期が注目されていた。
本年8月16日、李克強首相が、「深圳―香港ストックコネクトに関する準備作業は基本的に完了し、国務院はすでに草案を批准した」と述べたことにより、大筋が明らかとなり、3か月後の10月に四社協議が調印され、12月5日からの運用が決まった。運用可能な深圳株は881銘柄。
この新制度のことを、業界では中国語で「深港通(シェンガントン)」と呼ぶが、本邦投資家は「深圳と香港の証券取引所がタイアップ(ストックコネクト)することにより、深圳A株が条件付きで買えるようになった」と理解頂ければ、それで十分である。因みに上海と香港のストックコネクトは「滬港通(フガントン)」と呼ぶ。

深圳証券取引所には①深圳A株、②深圳A株(中小企業板)、③深圳A株(創業板)、④深圳B株と、4種の株式が約1800銘柄上場しており、カテゴリー毎に以下のとおりコード番号も異なっている。
●  深圳A株の銘柄は「0」から始まり、番号順に、「平安銀行000001」、「万科企業000002」といった具合。
●  深圳A株(中小企業)も「0」から始まり、「新和成002001」、「鴻達興業002002」、「偉星股份002003」・・。
●  深圳A株(創業板)は「3」から始まり、「特鋭徳300001」、「神州秦岳300002」・・・。
●  深圳Bは「2」。「深圳市物業発展200011」、「中国南玻集団200012」・・・。
因みに上海はA株が「6」(例:上海浦東発展銀行600000)、B株は「9」(雲賽智聯900901)で始まる。
今回海外投資家に開放される深圳A株は、時価総額、インデックス構成銘柄、AH同時上場銘柄・・等々、各種基準をクリアーした約900近い銘柄のようで、今年中にサービスが開始されると期待されている。
注意する必要があるのは、①解禁されない銘柄、②証券会社の取り扱い銘柄、という2つの制約により、必ずしも全銘柄が投資対象となるわけではないことだ。

気になるのは市場への影響だが、一昨年に上海A株が解禁され、当初上海の相場は冷静であったが、瞬く間に大相場が訪れ、そしてバブルが弾けた。そんな経緯もあり、深圳A株に対する海外投資家の当初のスタンスは慎重だろう。但し、上海A株が上手くいかなかったから、深圳もダメと諦めるのは早計だ。
同じA株でも、上海と深圳では事情が異なる。中国を代表する国有系の大企業は、上海に集中している。一方深圳上場銘柄は民営企業のウェイトが高く、中小企業やベンチャーのなかには、今後の成長が期待される医療、IT、バイオといった魅力ある分野が多い。リスクは高いが魅力も大きい。高格付の社債投資や、金融銘等への株式投資とは別種のインベストメントと割り切って分散投資すれば面白いかも。
深圳A株のなかには、電気自動車の「BYD(002594)」、世界最大級の建設機械メーカー「中聯重科(000157)」といった大企業も含まれているが、その多くはH株として香港にも重複上場されている。もちろん市場が違い、通貨が違い、価格も異なるので、中聯重科のA株を売って、H株を買うという投資方法もないではないが・・・。むしろ面白いのはこれまでアクセスできなかったニューフェースの銘柄だろう。
香港に隣接する深圳は、改革開放前は密輸業者と密入国者が集結する街であった。その深圳が起業家精神にあふれる新興都市に変貌を遂げた。中国のシリコンバレーとして、ベンチャー企業の集積地に育ちつつある関係で、証券市場も活気にあふれ、民間企業が市場の4分の3を占めるなど、テクノロジー関連企業が中心。中国民主化への寄与が期待される新世代の民営企業への投資が解禁されることは、資本主義諸国にとっても歓迎すべきことだ。中国経済の減速で、ゾンビ企業が跳梁跋扈する鉄鋼・セメント等の国有企業、オールドエコノミーの先行きは厳しいが、IT、バイオ、ヘルスケア等、ニューエコノミー状況は別だ。

深圳―香港ストックコネクトの影響は、大局的な観点から見るべきだろう。中国の本土市場において資本市場の自由化と国際化は、遅々としつつも、着実に進んでおり、A株のMSCI採用銘柄入りも来年は本格化すると思われる。また、上海でも、深圳でA株投資に風穴が空いたことにより、市場が多様化し、解禁された銘柄の値動きにより、バリュエーションも徐々に国際化の方向に向かうだろう。
今回のコネクトにより中国人投資家は、上海市場に続き、深圳市場経由でも香港市場にアクセスできるようになる。香港にとっては資金流入への期待が大きい。中国の成長率は鈍化傾向にあるがGDP総額では既に日本の2倍規模だ。中国の中産階級は、日本への爆買い観光客が示すように、着実に拡大しており、彼らの個人資産運用ニーズは高まっている。残念ながら、中国国内の運用環境は悪化傾向にあることから、海外での資金運用を求める投資家は多い。人民元安懸念があるなか、資金流出圧力が高まっており、これから始まるストックコネクトが、その合法ルートとなろう。中国人観光客のマナーが問題視される今日この頃だが、本土個人投資家の香港市場への接近は、香港市場にとって間違いなく朗報である。(了)