プロが語る!資産形成のすゝめ

東京市場が輝きを取り戻すために

鍵を握る「働き方改革」の今後に注目

提供元:ちばぎん証券

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新しい年を迎えるにあたり、「期待」と「不安」が交錯するのは多分いつものことだと思われます。
ただ投資家の皆さんにとって、今年は特にその感が強かったのではないでしょうか。

昨年11月の米大統領選後、株価は大きく上昇しましたが、米国第一主義を掲げ内向きな政策を志向するトランプ大統領への不安感は高まるばかり。1月20日の政権始動後も次々と繰り出される大統領令に戸惑い、株価の動きは不安定なものになっています。
2017年は2016年の米国に代って欧州が政治の年となります。4月から5月にフランスで大統領選挙が実施されるほか、オランダ(3月)、イタリア(17年前半?)、ドイツ(秋)で総選挙が行われます。どの選挙でも反ユーロ、反難民、移民排斥などを主張するポピュリズム政党が躍進するとの予想がもっぱらで、背筋に冷たいものが走る思いです。

何か将来の希望につながる明るい話題はないものでしょうか。私は現在、官民での取り組みが加速する「働き方改革」の今後に注目しています。

「働き方改革」とは昨年5月、安倍首相が「一億総活躍社会」の実現に向け構造改革の柱として打ち出した方針で、「長時間労働の是正」、「同一労働、同一賃金」、「最低賃金の引き上げ」、「柔軟な働き方の導入」、「子育て・介護と仕事の両立」などがキーワードになっています。たとえば、長時間労働を是正すれば、仕事と生活のバランス(ワーク・ライフ・バランス)が改善し労働意欲が向上、女性や高齢者も働きやすくなるでしょう。余暇を活用するニュービジネスやサービスが登場することも予想されます。一方、企業は省力化、効率化につながる投資を拡大するでしょうし、テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方を導入する企業も増えることでしょう。その結果労働生産性が向上し、企業の持続的な成長、ひいては国の活性化にもつながる、と言うわけです。まさに「働き手のメリット」と「企業や国、自治体のメリット」の二兎を追う改革ということができるでしょう。

一見すると負担増につながるこうした改革に対し、企業の動きはどうでしょうか。
「元日の午前中を除き365日働く」と言われてきた日本電産の永守社長は、昨年「2020年に国内従業員約1万人の残業をゼロにする」方針を打ち出しました。文字どおりのモーレツ創業者が180度方針を転換したのです。永守社長は「脱皮しない蛇は死ぬ」と、新たな成長に向けトップダウンで改革を推進する構えです。新しい時代を見据える経営者は、政策如何にかかわらず既に動き始めているのです。

「働き方改革」をサポートする企業の動きも活発になっています。
日立は米国の不動産サービス会社と提携し、オフィスの利用状況や人の動きから快適な職場づくりを企業に助言するサービスを始めます。具体的には、まずオフィスの机や椅子、扉などに小型センサーを取り付け、感知した熱や振動データから、各社員がどれぐらい机に向かっていたか、いつどのように会議室を利用したかなどの情報を集めます。日立のIoT(Internet of Things。あらゆるモノ(Things)がインターネット(Internet)につながることを指す)のサービス基盤を活用し、収集データを人工知能(AI)で解析、作業が滞る場所や時間帯、無駄な空間の有無といった問題点をあぶり出したうえで設備のレイアウト変更や最適な作業手順を助言します。さらに名札型首掛け式センサーを使い装着した社員の体の揺れや喜怒哀楽を測定し、いつ誰と会話したか、どこにいたかといった情報と組み合わせ、部署間の交流が活発になる座席配置やストレスを感じないオフィス環境なども提案するとのことです。「IoT」、「AI」で「働き方改革」をサポートする、まさに注目テーマ満載のサービスです。

眼鏡専門店「JINS」を運営するジェイアイエヌは、社員の働き過ぎを把握できる企業向けサービスを始めました。社員が眼鏡型のウエアラブル端末を着用し、頭の傾きや視線の動きから仕事への集中度を測定、0~100までの数字で示し、管理者がパソコンの画面などでチェックします。導入した企業は忙しすぎる社員を早く休ませるなど、対策を取りやすくなるというわけです。ジェイアイエヌでは「働き方改革」を進める企業が増えており、需要は大きいとみています。

「働き方改革」に関連するニーズは個別企業の業績にも好影響をもたらしています。
情報サービス大手の野村総合研究所では製造業やサービス業といった大手企業から事務を効率化するITサービスへの引き合いが増えているとのことですし、就業管理ソフトを販売するアマノは正確な労働時間を把握する必要性が追い風となり収益を伸ばしています。人材派遣のテンプホールディングスでは事務や技術者の派遣需要が旺盛で好業績をあげています。

日本企業は動き始めは鈍いものの、方向性が定まって一たび動き始めれば一斉に突き進むと言われます。「二兎を追うものは一兎をも得ず」と「働き方改革」の成否に悲観的な見方も多いようですが、東京市場が再び輝きを取り戻すために、「働き方改革」の今後に注目したいと思います。

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