著名人の投資哲学インタビュー

書籍の印税は、公約を守るために全額投資!

杉村太蔵「投資で得た知識と経験が“一番の儲け”」

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投資についての誤解を解くよう、熱く語ってくれた杉村さん
投資についての誤解を解くよう、熱く語ってくれた杉村さん

“貯蓄から投資へ”――近年こうした風潮が高まっているが、投資初心者にとってはハードルが高いのも事実。そこで実際に投資を実践している著名人に、投資の基本や、お金に対する考え方などについて聞いてみよう。今回登場いただいたのは、30代半ばにして資産1億円以上を築いた、元衆議院議員でタレントの杉村太蔵さん。

TBS系『サンデー・ジャポン』などのTV番組に出演し、“薄口評論家”として活躍する杉村さんは、投資家として多くの利益を上げている。議員になる前は証券会社に勤めていたが、株式投資を本格的に始めたのは議員を辞めてから。2009年にはカナダのバンクーバーへ渡り、デイトレーダーとして家計を支えた時期もあった。帰国後は、タレント活動のかたわら株式投資を続け、『バカでも資産1億円 「儲け」をつかむ技術』を著した2014年までに、数千万円の利益を投資で得たという。

はたして、一般の人でも、杉村さんのように投資で成功する秘訣はあるのだろうか?

●「投資」に安心はない! 「投機」との違いを理解せよ

林 和也=撮影
林 和也=撮影

「まずお伝えしたいのは、投資で利益を出すことはそう簡単なことではない、ということ。そもそも、『投資』ではなく『投機』的な発想で失敗に至る人が多すぎるんです! 『安心できる投資先を知りたい』といった言葉をよく耳にしますが、要は元本を割りたくないということでしょう? はっきり言って、投資に安心などありません、絶対に安心できる投資先なんてないんです。20年前は日本航空に誰もが入りたがり、震災前は『東京電力は安心』と言われていたけど、大暴落も起こり得るわけです。それでも目先の利益を見込んで賭けてみたい、とリスク・リターンに目がいくのは『投機』的な発想です」

では、投資をしたいなら、まずどういった考えをもつべきなのか?

「私自身、デイトレーダー経験もあればFXもやっているので、投機自体が悪いとは思っていません。ただ、株式投資を始めるのであれば、投資的な考えをもつべきです。投資する会社に大きく成長してほしい!…この考え方が大前提。株を保有するということは会社の一定の権利を得ること。経営者と同じ目線に立つ、という意識が大切です。そもそも企業というのは、3年、5年計画をもって動くのであって、一時の値動きで計れるものじゃない。ところが投機的に臨む人は、買ってすぐに下がると、慌てて売ってしまう。『マイナス何%だ』と落胆し、買ったことを後悔する。しかし、投資には失敗はあっても後悔はない、と私は思います。たとえばプロ野球で応援している球団が負けたとしたら、悔しがっても、応援したことを後悔はしないでしょう? その会社に頑張ってほしい、と好意と期待を込めた投資は、それに近いものがある」

●貪欲に知識を蓄え、良質な「投資家」へ

杉村さんが危惧するのは、短期的な売買を繰り返す「投機家」が多すぎること。とくに、乱高下が激しくて不安定な日本株は、短期取引志向の投機家が荒らしているから、と考える。

「日本に良質な『投資家』が増えれば、短期的な売買に揺らがず、企業が安定的に成長する世の中になるはず」と杉村さん。12月からAbemaTV FRESH!とニコニコチャンネルで投資初心者に向けた番組『杉村太蔵の熱血投資塾』をスタート。投資に最低限必要な政治・経済・会計・金融についてわかりやすく解説している。

良質な投資家を育てる意欲に燃える杉村さんに、入門者に適した勉強法やおすすめの銘柄などを聞いてみると…。

「興味をもてる商品・サービスや、会社の経営方針に目を向けることが大事。たとえばシャンプーに目を付けたなら、5、6社分の商品を実際に買って比較し、気に入った販売元のIR情報を見てみる。あるいは、日経新聞掲載の社長インタビューを欠かさず読んでみる。おすすめの銘柄は、就職活動をした時に入れなかった会社、なんかいいと思います。社員ではないけど株主として会社を一緒に大きくしていける、なんて、いいじゃないですか!」

●株式投資で得るものは利益だけにあらず!

林 和也=撮影
林 和也=撮影

また、杉村さんは「投資の最大のメリットは、勉強するようになること」とも。

「私がもしファーストリテイリング(ユニクロなどの衣料品会社を傘下にもつ持株会社)の株を買ったら、世界のファッション業界、繊維業界のことをとことん調べます。これまで学んだ経済、金融、国際情勢の知識は100%、自分の人生に役立っているといえる。ビジネスを決める方向性も見えてきて、それが結果的に老後の安心につながっていると思います。投資で得た知識や経験が、なによりの“儲け”になるんです」

実は杉村さん、著書の印税はすべて投資に充てたそう。「自身の仕事や投資のノウハウが詰まった著書で、何の株を買ったと思いますか? 買った日付は、2015年11月4日」。ズバリ、その答えは?

「この日は、日本郵政が上場した日。当日は売買停止措置が図られたので正確には翌日ですが、郵政3社の株を買いました。郵政民営化の実現を目指して国会議員になって、『いや、やっぱり株は買わないです』、なんてワケないじゃないですか(笑)! これは国会議員としての最後の政治責任ですよ。この株は杉村家の子々孫々まで、500年経っても『絶対に売るな!』と語り継ぐつもりです。もう、家宝ですね。末永く、郵政3社の成長を見守り続けていくつもりです」

好きな会社へ資本を投じ、経済発展へと貢献する。投資を通して培った知識や経験は、かけがえのない財産となる。「株を始めるにあたって絶対不可欠なのは、会社を応援したいという気持ち。それこそが投資の本質である」と、杉村さんは強調するのだ。

はじめからスペシャリストである必要はない。興味はあるがためらっているという人は、良質な『投資家』としての一歩を踏み出してみてはいかがだろう。

藤岡千夏@H14=取材・文
林 和也=撮影

記事提供/『R25』

<プロフィール>
杉村太蔵
1979年8月13日、北海道旭川市生まれ。筑波大学中退後、派遣のオフィスビル清掃員を経て、外資系証券会社に勤務。2005年9月の衆議院議員選挙で当時最年少で初当選(2009年7月で任期終了)。現在はタレント業のかたわら、投資家として多額の利益を上げる。2013年5月には商社「杉村商事」を設立。2016年4月より慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科後期博士課程に在籍。三児の父。

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