早々の利益確定は間違いだった!?
投資のプロが警告!「投資初心者の三大失敗」
野村総合研究所の「個人の投資に対する取り組み状況に関する調査」によると、男性の投資経験者は、20代から30代にかけて倍増するという。さらに、「NISA(少額投資非課税制度)」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の登場で、投資に興味を持つ人は増えているだろう。しかし、初心者ゆえに、何かしらの失敗をすることも十分考えられる。
そこで、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)などの著書を持ち、ひふみ投信のファンドマネージャーでもある藤野英人さんに、投資初心者が陥りがちな失敗について聞いてみた。
●「投資を誤解してスタートしない」、これが最大の失敗!
「最大の失敗とは“なかなか投資を始めないこと”。投資を始める前段階の話です」と藤野さん。
金融庁のレポートでは、投資教育を受けたことがある人は約3割に過ぎず、投資教育を受けていない約7割の人は、「今後も受ける気がない」と回答しているという。藤野さんはその理由を「投資=悪」ととらえる人が多いからだと考える。
「日本には、投資が悪、お金儲けは浅ましいことだと見る風潮があります。そのせいで、投資をマネーゲームだと思っている人も少なくない。しかし、私の考える投資の定義とは、“エネルギーを投入して未来からお返しを頂くこと”です」
一見、哲学的にも感じられる言葉だが、これは、「行動や情熱などのエネルギーをあることにつぎ込むことで、経験を積めたり、感謝されたり、成長できたりする未来につながる」といった意味。たとえば、自分の時間・お金を使って勉強すれば、将来、英語が話せるようになるのも自己“投資”だ。
「株を買うのはさまざまな投資のなかのごく一部。お金を株につぎ込むことで、その会社の成長という未来につながる。その結果として利益の配分といったサービスが受けられるのです」
●ガマンできずに即売却!…それはマネーゲームと誤解しているから
「本来の投資の意味を誤解していることが、そもそもの失敗」だと考える藤野さん。誤解したまま投資を始めると、“マネーゲームを行ってしまい、さらなる失敗につながる”と続ける。代表的な失敗は、「ガマンできずにすぐ売ってしまうこと」だという。
こう聞くと、株価が下がった時にガマンできずに売り、後に株価が戻って後悔するという展開を想像するが、実は“上がったタイミング”ですぐ売るのも初心者がやりがちな失敗だというのだ。
「よく、株式は利益を確定して現金に戻すことが重要といったアドバイスを聞きます。しかし、資産家の現金比率を考えてみてください。現金の比率が高い人はほとんどいません。株は持ち続けて、現金が必要な時に売るというのがお金持ちになれる考え方です」
レオス・キャピタルワークスの調査では、2002年12月に上場していた企業のうち10年間、つまりアベノミクス前の期間でさえ、株価が上昇した企業は7割。しかも、株価は平均で約2.1倍になったという。日々の値動きに狼狽せず、長期保有していれば、かなり高い確率で資産が増えていたことになるのだ。
●企業名やブランドだけで株は買うな!
では、どんな会社に投資すべきか? ここで最後の失敗が登場する。
「初心者にありがちな失敗の最後は、“よくわからない会社”の株を買うことです。この“よくわからない”は、企業名ではなく、事業内容のこと。たとえば、事業内容がわからないまま、大きな会社だからとか、ブランド力のある会社だからといった理由で株を買うと、失敗します」
会社のことを理解できないまま株を買うと、株価が上がっても下がっても、その理由がわからない。藤野さんは、「それだとギャンブルと同じ」だという。
「よく知っている会社の株を買えば、株価が下がると、下がった要因などから様々なことが学べます。株価が上がれば、もちろん利益も増える。結局、上がっても下がっても、何かしら得られるのです」
今後登場する、投資上限が40万円で20年の非課税期間となる予定の「積立NISA」も長期投資には向いているという。
「投資を誤解してなかなか始めない」「株をすぐに手放す」「事業内容がよくわからない会社の株を買う」、という3つの失敗。将来的な資産形成を考えているなら、このことを心に刻みつつ、少額から投資を始めてみてはどうだろうか。
(コージー林田)
藤野 英人
レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役社長。ひふみ投信・ファンドマネージャー。大手投資運用会社を経て2003年レオス・キャピタルワークス創業。CIO(最高投資責任者)に就任。2009年取締役就任、2015年10月より現職。
記事提供/『R25』