「目標の明確化」「まずはアクション」「長時間労働是正」
人生100年時代のライフプラン、起業家3人が示す“道標”
長寿化する現代。リンダ・グラットン著の『LIFE SHIFT』では、人生100年時代に備えるため、生涯を通じて様々なキャリアを経験する“マルチステージ”の人生設計の重要性が示されて話題になった。そんななか、東京証券取引所主催セミナー「人生100年時代のマネープランを考える!~東証ETFで長期投資を~」が1月22日に開催された。
第1部のパネルディスカッションでは、「人生100年時代、自身の未来を設計しよう!」をテーマに、GMOインターネット代表取締役会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿さん、マネーフォワード代表取締役社長CEOの辻庸介さん、ワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんという、著名起業家3人が登壇。自らの経験を踏まえ、夢や目標を持つ大切さや、「人生100年時代」といわれる長寿化した人生設計の考え方などについてトークを繰り広げた。
■「夢や目標には期限を付けて“明確”に」(熊谷正寿さん)
20歳の頃、「手帳」に夢を書き記したことで、人生が変わったという熊谷さん。著書『一冊の手帳で夢はかなう』は、15万部を超えるヒット作で、セミナーでは、「夢や目標はただ書き記すだけではなく、“明確化”することが重要」と話す。
高校を中退した後、家業を手伝っていた熊谷さんは、当時、何カ月もかけて200ほどの夢や目標を手帳に書き記した。そして、それらを基礎レベルの「心・精神」「健康」「教養・知識」、実現レベルの「社会・仕事」「プライベート・家庭」、結果レベルの「経済・モノ・お金」の6種類に振り分け、「人生ピラミッド」を作成。さらに、20歳から35歳までの15年間の年表も作成し、目標を書き写していったそう。
ポイントは、各目標をいつ頃達成するか、“期限”を決めること。「期限を決めることによって目標が明確になる。期限がない漠然とした目標は目標と言えません」(熊谷さん)
目標を決めて、コツコツと日々遂行した結果、36歳1カ月で、「何かの分野でナンバーワンの青年実業家になりたい」という20歳の頃の夢を、一部上場という形で叶えた熊谷さん。「人は、自分の想像した通りに成長するし、逆に、想像した範囲までにしか成長できません。それは資産形成も同じで、資産を含むすべての面において、夢を明確化することが大切だと思います」
また、「寿命がある限り、時間そのものが命」とも。「時間を無駄にすることは命を無駄にするということ。僕は、20歳から今まで暇だと思ったことは1回もない。なぜなら、夢を叶えるために人より努力してきたから。人生100年時代と聞くと長いと思う人も多いと思いますが、僕は真逆。全然時間が足りないと思っています」
■変化を恐れず、アクションを起こす(辻庸介さん)
大学時代から起業を経験してきた辻さんは、熊谷さんの話に加え、「何事もアクションを起こすことが大事。一歩進めるかどうか、やらないと意味がない」とコメント。「まずは熊谷さんの本を買って、手帳に夢を書き出しましょう」と会場の笑いを誘うと、自身がアメリカ留学中によく言われた「ビヨンド・コンフォートゾーン(Beyond comfort zone)」という言葉についても説明した。
「自分の快適だと思う領域から出なさい、今までのやり方を変えなさいという意味。ストレスがかかるかもしれないし、勇気がいることですが、変わることで、考え方もフレッシュになるし、出会う人の幅も広がっていくと思います」
また、現金などの有形資産だけでなく、スキルや人間関係などの無形資産も、「人生100年時代」には重要と語った。「仕事を引退してからの時間が長くなると、残りの時間は仲間と会ったり、趣味に充てたりすることも多くなると思うので、今から仲間や趣味を大切にした方が良いと思います。ただ、僕もそうですが、日本人は真面目なので、遊ぶと後ろめたい気持ちにもなりますね…」(辻さん)
■100年健康でいるため、長時間労働を避ける(小室淑恵さん)
辻さんの「遊んでいると後ろめたい」という言葉に、小室さんは、「100年時代は、100年健康でなければ何もできない。今から日々のサイクルをどれだけ健康に過ごすのかがポイント」とアドバイス。
働き方のコンサルタントとして活躍し、産業競争力会議民間議員も務める小室さんは、東京大学の島津明人准教授の解析を引き合いに、「人間の脳は朝起きてから13時間しか集中力が働かず、午前6時起床ならば午後7時で終了」と解説。さらに、13時間以上経つと、酒酔い運転と同じくらいの集中力しか働かないそうで、「だったらお酒を飲みに行った方が良いし、酒酔い運転ほどの集中力で仕事をする方が罪だと思った方が良い」と、長時間労働が横行している社会において発想の転換が必要と話した。
「集中力が欠けている状態で頑張っても、ミスが多くなって、ミスをカバーするのに余計時間がかかったり、顧客からのクレームが起こることもある。それがストレスになって悪循環を生む可能性もある。休むことが顧客に対する正義だととらえ、日々の健康を100年もつように心掛けましょう」(小室さん)
「人生100年時代」は、単純な長寿化の話ではなく、健康寿命としての、楽しむための時間が100年あるということ。そんな豊かな100年を過ごすため、今からでも、夢や目標を明確にし、行動に起こすなど、準備を始めた方が良さそうだ。
(赤木一之/H14=取材・文、林和也=撮影)