“投資=勝負”アスリート界のベテラン投資家
川合俊一「株価が下がると、なぜか笑っちゃう(笑)」
元バレーボール日本代表で、現在は解説者やタレントとして活躍する川合俊一さん。29年前から株式投資を行っているベテランで、バラエティ番組『有吉ゼミ』では、日々の運用の様子を密着取材されたほど。そんな川合さんが株式投資を始めたのは、富士フイルム入社3年目、25歳(1988年)の頃、「仕事にも慣れ、社会人として余裕が出てきたタイミングだった」という。
■初心者は、まず詳しい人に聞く
投資を始めた当時はバブル全盛期。その頃知り合った野球選手や芸能人が土地を購入しているなか、「サラリーマンで土地を買うお金もなかった」川合さんは、友人にすすめられ、株式投資を始めた。その際、友人に相談して購入したのが、製造業関連と印刷関連の2つの銘柄。
「元金の倍になったら売ろう」と決めていたところ、半年後に見事、2銘柄とも倍に。製造業の関連銘柄は70万円が140万円に増えた。利益を頭金に自動車を購入した後、ここで投資は一旦終了。そして、バレーの現役を引退して数年後、知人と株の話になり、思い出したように再開したという。
「僕の場合、株を分かっている友人がアドバイスしてくれたのが良かったですね。バレーボールもそうですが、初心者は少しかじった程度で上手くできるはずがない。やっぱり知っている人にちゃんと聞かないと。あとは、売却時期の設定も大事。目標を決めないと、“あの時売っておけば良かった…”と、後悔することも。今の時代であれば、元金の1.3倍程度がちょうど良いかもしれません」
■銘柄選びのコツは、先読み、関連付け…そして出逢い?
最初は友人のアドバイスで株を購入した川合さんだが、現在は、“先読み”や“関連付け”を念頭にニュースを追い、楽しみながら銘柄を選んでいる。
「たとえば、日本の海域でメタンハイドレートが発掘されたニュースが出た瞬間に、掘削会社の株が急上昇。その次に、船を持っている会社の株が上がって、何でだろうと思っていたら、採掘物の運搬用だった。こういった先読みや関連付けをするのが楽しい。常にアンテナを張って、世の中の流れを見ることが大切です」
さらに、「自分は運がいい方だと思うんですよね」という川合さんは“縁”を頼りにしたユニークな買い方も。
「たまたま出会った人の会社が上場していれば、何かの縁だと思って買うこともあります。最近だと、飲み屋で知り合った人の会社の株を買ったのですが、1年間ずっとマイナスで売れなくて塩漬け(※)にしていたところ、急に2日連続株価が急上昇。マイナス80万がプラス180万くらいに。1年間我慢した甲斐がありました(笑)」
※買値よりも株価が下落した、売るに売れない状態
初心者には怖い買い方だが、「購入前にはある程度安全かどうか、企業情報などは確認しますよ」とのこと。経験があった上でできる方法論なのだろう。
■1つの銘柄が下がっても、ほかの銘柄でカバー
儲かる時もあれば、損をする時もある株式投資。豪快な投資を行う川合さんも例外ではない。ライブドア事件の前日までは儲かったというが、一転、持っていた20銘柄近くが急落し、元金を割るほどに。そこまで損をしてもやめないのはなぜか…。
「損をするたびにガッカリして、『次儲かったら二度とやらない!』と思うけれど、面白いから続けちゃうんですよ。僕は、持っている株が下がった時、“おお、下がっているよ~!”と、興奮しながら、ちょっと笑っちゃっているくらい楽しんでいるから(笑)。もうダメだと思って落ち込んで悩む人はやらない方がいいかもしれませんね」
日本代表として世界で勝負をしてきた川合さんだからこそ、「負けん気」や「チャレンジ精神」が人一倍強く、勝負の楽しみを知っているのだろう。また、バレーボールと株式投資では、通じる部分もあると語る。
「バレーボールは、1セット負けたからって終わりじゃない。次のセットは逆転しようという気持ちになるし、1人の選手の調子が悪ければ、全員でカバーしようぜっていう気持ちになる。投資も同じ。売らなければ損は確定しないし、次取り返そうってなる。それに、複数の銘柄を持っておけば、1つの銘柄が下がっても、ほかの銘柄でカバーできる。ただ、リスクヘッジのために、多分野の銘柄を持つように。ITばっかり持ってたりすると“ああいうこと”もあるから」
■いざという時に備えて、まずは口座を開設!
また、投資を始めていない人に向けて、チャンスを逃さないように、「口座開設をしておくこと」が重要と告げる。
「値上がりしそうな株を見つけても、口座を開設していないと、手遅れになりますよね。まずは、証券会社で口座を開設しておくこと。預けておくだけでいいです。いつでも株を買える状態にしておきましょう」
口座開設を最短1日でできる場合もあるが、その時間もロスになる。すぐに始めなくても機を逃さない心構えは必要だろう。
「投資を始めると、自分のお金がかかっているから、新聞やニュースを隅々まで見るようになるし、例えば、営業先の会話も広げやすくなります。僕なんて体育大卒だけど、経産省や法務省の方々とも話ができる。自分の知識を広げる意味でも数万円でいいから活用することをおすすめします」
ニュースのコメンテーターとしても活躍する川合さん。その知識の広さは、株式投資から得られた財産なのかもしれない。
(赤木一之/H14=取材・文、花村謙太朗=撮影)
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川合俊一(かわい しゅんいち)
1963年、新潟県生まれ。日本体育大学時代から全日本代表入り。84年、大学4年生時にロサンゼルス五輪に出場。“バレーボール界のプリンス”として注目を集め、空前の男子バレー人気に火を付けた。88年、ソウル五輪出場。翌年は全日本キャプテンに。90年、現役引退後、日本人初のプロビーチバレー選手としてアメリカのツアートーナメントに出場。現在は、日本ビーチバレーボール連盟会長、日本バレーボール協会強化事業本部顧問、バレーボール解説者、タレントとして活躍。