「ETFはマイナーだけど、いいとこ取りの凄い商品」
投資ブロガー・山辺さんがETF一本で勝負する理由
数ある投資の中でも、安定的に資産を築けるといわれることの多い「インデックス投資」。市場の平均値と同じような動きを目指して行う運用手法で、個別株の運用ほどハードルが高くなく会社員向きともされるが、果たして本当だろうか? 実際に会社員のかたわらインデックス投資で実績を残している人に話を聞いてみた。
■ETFは個別株売買とインデックスファンドの「いいとこ取り」
お答えいただいたのは「山辺柴刈」さん。ブログ「国内ETFで資産運用♪」を運営する投資ブロガーだ。山辺さんは自らの運用状況をブログで公開。2017年2月時点の運用総額は3350万円。内訳は国内ETF4本で2980万円、待機資金が370万円となっている。ブログでは公表されていないが、300万円程度の含み益があるという。
インデックス投資はインデックス型の投資信託とETF(上場投資信託)に大きく分かれるが、山辺さんは後者に特化。それも、ほぼ全ての資産を国内ETFのみで運用している(※1)。
(※1:ETFとインデックス型の投資信託は、ともに日経平均株価やTOPIXといった“指標”と同じような動きの運用を目指す金融商品。ETFは上場しており、証券取引所で個別株のように売買が可能)
まずは、その理由から聞いてみよう。
「元々は勤め先の持株会で投資を始め、配当や株主優待を目当てに国内の個別株投資を行っていました。インデックス投資を始めたのはリーマンショック後。当初は試しにETFを買ってみる程度でしたが、リスクを抑えるには国内外に広く銘柄を分散させることが重要だということを学び、ETFの保有によりインデックス投資の有効性を理解したことで、2011年10月から本格的にインデックス型の投資信託の積み立てと国内ETFの購入を始めたんです。インデックス投資の良さは、少額の資金でも簡単に分散投資ができること、大儲けもしないが大負けもしないこと、リスクを抑えつつインフレに対する備えができ資産を防衛できること、放置しておけることですね」
―― 以前は投資信託も購入されていたとのことですが、現在は国内ETFのみ。なぜ、一本に絞ったんでしょうか?
「投資信託の積み立ては、毎月オートマティックに資金を投じるだけで裁量が働きづらい。手間がかからないところが魅力なんですが、私にとっては物足りないんですね。つまらないんです。私は資産運用の成否は金融商品の性能によって決まるのではなく、金融商品をどうやって売買したかにかかっていると考えています。個別株と同様、市場でリアルタイムな取引ができるETFなら、自分の好きなタイミングで売買できる。それは決して短期の売買を繰り返すという意味ではありませんが、相場が崩れたときに集中投資したい自分には合っていると思いました。2012年7月以降は、国内ETF投資に全面移行しています」
―― 確かに、インデックス型の投資信託は比較的値動きが安定しているし、積立型なら手間もかからない。それが良さでもありますが、自分である程度「選ぶ余地」を残したいと。
「たとえるなら個別株は『肉食動物』、インデックス型の投資信託は『草食動物』、ETFはそのどちらでもない『雑食性動物』みたいなものです。その中途半端な立ち位置ゆえ、今ひとつ地味でマイナーな印象になっていますが、個人的には『いいとこ取り』の凄い金融商品だと思います」
―― では、投資をこれから始める人にもおすすめですか?
「正直に言うと、ビギナーの方にはややハードルが高いと思います。もちろん無理だとは言いませんが、特に会社員の副業としてやるなら、やはり一定額を拠出してコツコツ積み立てて放置しておけるインデックス型の投資信託の方が気楽ですよね。ETFを上手く運用するには、個別株ほど相場に張り付いてチェックする必要はありませんが、経済動向や市場の動きにある程度は注目しておかなければなりません。また、板の見方や、成行、指値といった注文方式に慣れる必要があります。個別株と投資信託の両方を知って初めて、ETFの素晴らしさが分かるんですよ」
■いろんな経験を経て「正解」にたどり着くことが大事
―― 山辺さんご自身、ETF投資でプライベートなどに支障が出るほど注視してしまうことってあるんですか?
「支障というほどではないかもしれませんが、たとえば昨年末の米大統領選挙があった日は、やはり意識をかなり持っていかれていましたね。午前中にトランプさんの優勢が伝えられて、円高にふれてガンっと値が下がるようなら昼休みにでも買い注文をいれようかなと。その機動性がETFの良さでもあるんですけどね。投資信託だと翌日約定(※2)なのでその時は買えませんから。でも、そういう良さって結局は色々な投資を経験してみないと実感として分からないんですよね」
(※2:投資信託は、その日の取引が終わった後で基準価額が決定する。よって、買い注文を出したとしても、その日市場が閉まるまで値段はわからない)
―― 山辺さんも色んなやり方を経たうえで、ETFに行きついたわけですもんね。
「私にとっての正解は国内ETFでしたが、正解を選ぶこと(初めからETFを選ぶこと)と、正解にたどり着くこと(様々な金融商品を経て最終的にETFを選ぶこと)は似て非なるものだと思います。初心者はまず、少額でいろいろな金融商品を売買してみて、実際に体験してみるのがいいのではないでしょうか。そのうえで、自分に合うものを選択すればいい。試してみた結果、私のように投資信託の積み立てが退屈だと感じたり、個別株売買で痛い目を見たり、疲れてしまった人にはETFをおすすめできると思います」
(榎並紀行/やじろべえ)