フィンテックの最前線を追う!

金融機関の増加、そして…

自動貯金サービス「finbee」が目論む、次なる展開は

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finbeeを展開する株式会社ネストエッグの川口雅史さん
finbeeを展開する株式会社ネストエッグの川口雅史さん

「FinTech(フィンテック)」という言葉が広く認知されるようになってきた。金融(ファイナンス)+技術(テクノロジー)の造語で、金融とICTを融合したサービス全般を指す。関連企業への投資額は世界的に増え続けていて、今年4月には国内でも普及促進を後押しする法改正も行われている。

今後、急成長が期待できるフィンテック関連分野。そのなかから、特に注目すべきサービス、企業にインタビュー。最前線の動きを追った。

■生活の行動に紐づけて自動的に貯金できる「finbee」

お話を伺ったのはネストエッグの川口雅史さん。同社は2016年12月、銀行口座と連動した日本初の自動貯金サービス「finbee」をリリース。「1日1万歩以上歩いたら1000円貯金」「カードで買い物をした際、1000円未満の端数のおつりを貯金」など、あらかじめ設定した“貯金ルール”に則って専用口座にお金が貯まっていく仕組みだ。

使い方はアプリをダウンロードして会員登録し、「貯金目標」と「貯金ルール」を設定。貯金する銀行を選択すると銀行内に貯金専用の「finbee専用口座」が開設され、あとは「普通に過ごすだけ」で自動的にお金が溜まっていく。散歩や買い物といった生活の行動に紐づけ、無意識に、無理なく貯金することができるわけだ。

現在、finbeeで連携できる金融機関は住信SBIネット銀行の一行だが、今後は提携する金融機関、さらには設定できる「貯金ルール」も増やし、さらなる利用者拡大につなげていくという。

「今まさに全国の金融機関と協業に向けたお話をしているところです。具体的な時期は未定ですが、2017年度中に数行と提携し、実際にサービスとしてローンチできるよう調整しています。

また、貯金ルールについても、SNSなど日々の生活における様々なアクションと関連付けたものを増やしていく予定です。さらに、現在はiOSのみの対応ですがAndroid版にも対応していく予定で、多くのユーザーにご利用いただける環境を整えていきたいと考えています」(川口さん、以下同)

まずは貯金の目的を選択
まずは貯金の目的を選択
次に「自動貯金のルール」を設定
次に「自動貯金のルール」を設定
あとは設定した貯金ルールに則り、finbee専用口座にお金が貯まっていく
あとは設定した貯金ルールに則り、finbee専用口座にお金が貯まっていく

■法改正も後押し!「フィンテック」への追い風が吹いている

今後、連携できる銀行が広がっていけば、試してみたいと思うユーザーも増えることだろう。サービス拡大に向けて順調に歩みを進めているようだが、これも現在のフィンテック産業全体の盛り上がりがあってこそ。少し前ではこうした金融機関がスタートアップと事業提携すること自体、考えられなかったという。

「フィンテックという言葉自体は昔からありましたが、昨年あたりから特に熱を帯びてきたという実感はあります。特に金融機関のオープンAPI化(※編集部注:ソフトウェア機能を共有できるようにする)が大きいですね。銀行などでは新しく部署を設けるなどしてフィンテックの取り組みを進めていますし、我々のようなスタートアップと協業で、次々と新しいサービスを展開し始めています」

こうした業界の動きを国も後押しする。2016年、政府は「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」を可決。2017年4月より施行された。銀行による事業会社への出資は従来5%までとされていたが、「情報通信技術やその他の技術の活用により銀行業の高度化又は利用者利便性の向上を図る場合」、つまりフィンテックまわりのサービス事業者に対しては、内閣総理大臣の認可を得て上限以上の出資が可能になったのだ。

■様々な事業者と連携し「世のお金を動かす」

なお、今後は金融機関だけでなく、様々な事業者と連携していくことも視野に入れているという。

「貯金をしてもらうことがゴールではなく、その先の導線も整えていきたいと考えています。たとえば貯金の一部を金融機関の投資に回したり、ECサイトや店舗といったマーチャントと連携して消費につなげたりという具合です。そもそもの貯金の動機である『欲しいもの』や『やりたいこと』を叶え、人生に豊かさを提供するサービスとして展開していきたい。そのためにfinbeeに新たな機能を盛り込んでいくこともそうですが、他の企業とのアライアンスも積極的に進め、スピーディーに展開していきたいですね」

すでにfinbeeの自動貯金サービスと連携したいという引き合いもあり、具体的な青写真も描けているようだ。

「たとえば、finbeeで『ハワイ旅行のために30万円貯金する』という目標を設定していた場合、ハワイに関するおすすめ情報が配信されたり、旅行会社が具体的なプランをレコメンドしてくれたり、期日までの貯金達成が難しそうであれば足りない分のローンを紹介してくれたりと、様々な機能が考えられると思います。貯金の達成状況によってユーザーさんの本気度もわかるので、finbee上でこれまでにないコミュニケーションや精度の高いマーケティングが可能になるのではないでしょうか。実際、多くの企業からfinbeeを使った新しいサービス設計の協業相談をいただいており、検討を進めています」

まさに、世の中のお金を動かす仕組みである。フィンテックは我々の生活を便利にしてくれるだけでなく、経済の循環という観点でも意義深いものといえそうだ。

(榎並紀行/やじろべえ)

※記事の内容は2017年4月24日現在の情報です

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