株はコツコツドカンの繰り返しだ!
世界一「四季報」を愛する男による 『会社四季報』の活用法
提供元:コルク
『会社四季報』が大好きで、『インベスターZ』の「四季報編」(98話~101話)や、日経平均の歴史を紐解く「コツコツドカン編」(113話)で資料を提供している四季リサーチ代表の渡部清二さん。どこにも記録がなかった、平均株価の戦前からの推移を調べ上げるなど、妥協しない調査によって見えてきた「株の法則」とは。
四季報を読むと喜びが湧いてくる
私は『会社四季報』が大好きで、これまで18年間継続して計72冊の四季報を全ページ読破しました。四季報の1ページ目から編集後記、巻末特典までのおよそ2000ページを読むと、それが「日本経済の現在と未来」という物語であることがわかります。今でも投資家育成・支援の事業をしながら四季報読破を続けていますが、読めば読むほど企業を知る喜び、社会を知る喜び、そして人生を知る喜びが湧いてきます。
紐解くと、日本初の証券取引所である「東京株式取引所(現・東京証券取引所)」が営業を開始したのは明治11(1878)年6月1日。今から137年前のことです。当時の取引所は畳敷きで、長さ60センチほどの火縄に火をつけて立会を開始し、消えたときが相場の終結でした。
当時の株価はどう動いていたのか。知りたいと思って調べましたが、戦前の平均株価の推移を示す資料はどこを探してもありません。今でいう「日経平均」の算出方式(修正平均株価)で東証が平均株価を発表し始めたのは、1950年。それまでの株価の記録は残っていますが、偏在していたり、計算方法がバラバラだったりして、集めるのが大変なのです。
誰もやらないのであれば、私がやろう。そう思って国会図書館に通い、分散している資料のデータを一つ一つ拾ってつなぎあわせ、戦前64年9カ月分のチャートを独自に作り上げました。かなりの手間と労力がかかりましたが、完成したときはうれしかったですね。『インベスターZ』では投資部に伝わるものとなっていますが、戦前からの平均株価の推移は、世界に一つしかない当社独自のデータです。
株式相場は今も昔も「コツコツドカン」
このデータを見ると、今も昔も株式相場は「コツコツドカンの繰り返し」だということがよくわかります。株価が常に上下に膨らんだり縮んだりしていて、いわば呼吸をしているような感じです。
細かい上げ下げをコツコツ続けて、あるとき一気にドカンと上がる。その後はいったん下がり、また同じことを繰り返す。古い格言に「天井三日、底百日」というものがありますが、待って待って待ち続けて、やっと上がったと思ったら3日でおしまい、というのが相場の本質なんです。
史上最大のドカンは3年弱で18倍
「日本三大ドカン」といえばいつのことだと思いますか。1位はぶっちぎりで日露戦争の開戦後です。1904年からの3年弱で株価は6倍になりましたが、株数も分割でざっくり3倍に増えたため、修正株価ベースでは一気に18倍上昇したことになります。こんなことは後にも先にもありません。
2位はその10年前に勃発した日清戦争で、2年弱で5.8倍になりました。そして3位は戦後、1954年からの7年弱で5.7倍になった時期。「神武景気」から「なべ底不況」を挟んで「岩戸景気」に続くという流れの中で、株価はどんどん上がりました。
ただ、全てのドカンに共通する現象として、上がった株価は直後にドスンと落ちます。例えば日露戦争の場合は、ドカン後に約7割も下がっています。これがいわゆるバブル相場と呼ばれるもので、最近でいえば中国株の暴落も同様の動きをしました。
ちなみに、25年前の日本のバブル相場は株価の上がり方としては僅差の4位につけています。これが日本における直近のドカンですが、さすがに25年も経っているので、そろそろ次のドカンが来てもおかしくない時期ですね。
長期的には株ほど儲かるものはない!
ドカンの要因になるのは常にインフレです。かつては戦争がそのきっかけになることがほとんどでしたが、最近はバブル景気という形で現れます。要するに、市場に流通するお金の量が増えると、余ったお金が行先を求めて株に向かい、株価が上がる。そして、インフレを抑えるために政府が金融の引き締めを図るとドスンと下がる。もうひたすらその繰り返しです。
ただし、株式相場は上げ下げを繰り返しながらも、長期的には右肩上がりなんです。なぜなら、世界経済はまだまだ拡大しているから。かつて1929年の大恐慌で株価が軒並み90%安になった米国でさえ、50年、100年単位で見れば平均株価は上がり続けています。私が作った“超長期”のチャートから、そのことが分かりました。
私はこれまで四季報読破や株関連のさまざまな研究から、多くの「気づき」を得て来ました。そして、投資家の方々にも同じ「気づき」を得てほしいと考え、独立しました。うわべだけの情報に振り回されたり、金融機関の言いなりになるのではなく、ぜひ自分なりの見方、「気づき」を大切にしてください。さ、今日も四季報を片手に研究、研究!
記事提供/『コルク』
(関連書籍)インベスターZ
関連リンク
<プロフィール>
渡部清二/複眼経済観測所 代表取締役所長
1967年生まれ。90年に筑波大学卒業後、野村證券株式会社入社。中堅企業および個人投資家向け資産コンサルティングと国内外のプロの機関投資家向け日本株セールスに従事した後、2014年に独立。「自立した投資家の育成および支援」を目的とした四季リサーチ株式会社(現・複眼経済観測所)を設立し、代表取締役に就任。