レオス・キャピタルワークス社長とマネーフォワード共同創業者が語る
【対談】藤野英人×瀧俊雄「投資=商魂の共有、それが“稼ぐ力”の習得になる」
今や経営者の2人も若かりし頃は「お金」に苦労していた!?
「投資は損をしそうで怖い」「そもそも元手がない」など、資産形成に対して不安を持つ若者も少なくない。そこで、5月27日に開催された、20~30代向けセミナー「お金の貯め方 増やし方!! ~若いうちから資産形成体質を身につけよう~」に登壇した、「ひふみ投信」を運用するレオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さんと、自動家計簿・資産管理サービスを提供するマネーフォワード取締役の瀧俊雄さんにインタビュー。20代の頃のお金に対するイメージや、資産形成をする際の心得について対談いただいた。
瀧:私が22歳で野村證券に入社した頃は、2年間ほとんど休みなく働いていました。その間に妻と出会って25歳で結婚。当時は貯金が30万円くらいしかなくて…。給料は悪くなかったのですが、それでも調査の仕事だと書籍を買いまくったりで支出が大きくて、結婚直後は月4万円の赤字でしたね。そこから家計簿をつけはじめ、2年間ほどで貯金できるようになったのですが、ちょうどその頃に留学に行き、その後、起業しました。
振り返ると、結婚も起業も目の前にある現金残高だけを見ていたら絶対できなかった意思決定でした。また、親や外部も含めて頼れるところはフル活用してきたので、そういったことも、リソース(資産)のひとつだと思います。
藤野:僕も若い頃はなかなかお金のやりくりには苦慮しました。学生時代、家庭教師のビジネスをしていたことがあって、実は当時はかなり羽振りがよかったんです(苦笑)。その後、野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)に就職するわけですが、学生の時の贅沢癖が抜けないものだから、毎月のお給料では全然足りず…。あっという間にキャッシュフローがまわらなくなりました。改めて「稼ぐ力」について考えるきっかけができたのは、今思えばよかったですね。
時間がかかる「稼ぐ力」の習得。それに対して投資をすべき
藤野:僕は、お金を貯めることは良いことでもあるけれど、何もかも削って貯めるだけの生活は未来が切り開けないと思っています。若い頃は貯金をする以上に、自分の付加価値を上げることが大事。お金を「稼ぐこと」「節約すること」「増やすこと」を考えたとき、「稼ぐこと=稼ぐ力」は短期的には身に付かない。だからこそ、「稼ぐ力」を身に付けるために、時間をかけて自分に投資するべきなんです。
僕の場合は、学生時代の家庭教師の経験を経て、新卒で野村投資顧問に入社してから外資系の運用会社に転職するまでの8年半が、自分への投資期間。その間、働きながら会社の仕組みや在り方を学びました。
瀧:「稼ぐ力」でいうと、私は、野村證券では直接収益を立てる部署にいなかったので、起業して初めて売り上げを立てることの大変さを痛感しました。同時に、起業して1年半はひとりでユーザーサポートもしていたのですが、苦情やポジティブフィードバックなど、初めてユーザーと直接やりとりしたことで、サービスに価値を感じているからこそ、ユーザーからお金を頂戴できていることを実感し、やりがいを感じられたのは良い経験でした。
稼ぐ力=商魂の有無。そこに寄り添えるのが投資のメリット
藤野:ユーザーとのエンドポイントにどれだけ近付いて経営できるかというのは重要ですよね。僕は、大企業にはあまり投資しないのですが、「この人はラーメン屋を経営しても繁盛店を作れそう」と思える人がいたら投資します。なぜなら、ラーメン屋の店主は常にお客さんの状況を見ながら、お店の陣頭に立ってラーメンを作り、提供する。さらに、商品開発、マーケティング、プライシング(商品やサービスの価格決定)、アルバイトのマネジメントなど、経営に必要な要素を全部持っているから。やる気も含め、そういった総合的な“商魂”を経営者が持っているかどうかは非常に大事です。
瀧:そして、その他人の商魂に相乗りできるのも株式投資の良いところですよね。必ずしも自らが起業家になる必要はなく、商魂があると思う会社を見つけて投資さえすれば、“魂”のメリットを受け取れる。
藤野:そうですね。商魂のある会社に就職するという方法もありますが、その会社の株主になるのが一番、商魂を共有できる方法だと思います。例えば、ソフトバンクの株を1万円で買うことは、孫さんの商魂をもらうことになるので、実は、社員よりも強い形でその会社に参加していることになる。また、商魂のある会社を調べて理解することは、自分のビジネスにも良い影響を与える可能性が高い。
反対に、儲かりそうというだけで、勉強も理解もしないで株を買うのはただのギャンブル。それは運次第だし、そこから学べるものもない。株は、貯金するよりも元手が増える可能性のある、夢のある資産。投資を始める際は、まずどの会社の商魂にのるかがポイントです。
赤木一之/H14=取材・文
小島マサヒロ=撮影