投資スタートは40歳目前!
投資ブロガー・NightWalkerさん「サラリーマンこそ長期投資を」
投資なんて、平凡なサラリーマンとは無縁のもの…。そう考えている人は多いかもしれない。しかし、自身の経験をもとに、「サラリーマンこそ長期投資を」と考え、実践している人物がいる。ブログ「NightWalker’s Investment Blog」を2005年から運営する投資ブロガーのNightWalker(ナイトウォーカー)さんだ。
NightWalkerさんが、長期投資を始めたきっかけとは? 話を聞いた。
低コストの長期投資こそ、平凡なサラリーマンの投資方法
NightWalkerさんが投資に積極的に取り組むようになったのは、ITバブル直前の2000年ごろ。40歳目前だったという。
「私が30歳くらいの時にバブルが崩壊したこともあり、以後しばらくは投資など考えられず、地道に貯金するしかなかった。しかしその後、家を建てて貯蓄はすっからかんに。住宅ローンもあるし、老後に向けた蓄財を考えた時に、投資についても考え始めました」(NightWalkerさん、以下同)
当時、ネット証券が次々に登場していたこともあり、“新しい物好き”というNightWalkerさんも早速口座を開設。最初は日本株オンリーで取引をしていたそう。
「株のことやテクニカル投資については一通り勉強したうえで、個別株の売買を始めてみました。でも、結局投資先の会社のことってよく分からないな、と思ったんです。一方で、サラリーマンは取引先のいろいろな噂を聞いてしまうから、逆に分かり過ぎている会社の株もインサイダー取引になり得るということで買えない。そういうリスクばかりを考えてしまうようになってしまったんです」
そんな時、マネー誌で読んだ投資信託の特集記事を見て、興味を持ったという。
「目先の損得にとらわれず、コツコツと積み立てていく投資信託のほうが、サラリーマンに向いているんじゃないかと思い始めたんです。特に、私みたいな平々凡々としたサラリーマンは、分散・低コストで運用するインデックス投資が一番いいと感じました。さらに、日本株だけでなく外国株にも分散して投資するほうが賢いやり方なのではないかと。外国株の魅力は、低コストで運用できるということ。2000年当時には、1%の信託報酬でも安いと思っていたのですが、海外の商品を調べてみると0.2%とかが普通。それを知ったら、高いものを買う気がしなくなってしまいました」
知識はやりながら身に着ける。まずは始めてみることが大切
投資というと、それなりの専門知識がないと始められないイメージがある。忙しい会社員は「勉強する時間がない」と、つい敬遠してしまいがちだ。だが、NightWalker さんも始めた当初は特に金融や経済に強かったわけではなく、「やりながら覚えていった」という。
「今は最初からそういうリテラシーを持って始める方も多いと思いますが、私はいろいろな商品をつまみ食いしながら投資について学び、自分に合った方法を探っていった感じですね。それこそ始める前は、新聞の株価の一覧を見ても『わぁ、いろんな会社があるんだな』というレベルでした(笑)。マネー誌を読み始めたのはネット証券の口座を開いてから。その頃は“株で儲ける本”みたいなものも買って読んでいたんだけど、なんか違うな…と。読んだ瞬間はできる気になるんですけど、しばらくすると『自分には無理だ』と思ってしまうんです」
一方で、タメになった本もある。『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・G・マルキール)や『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス)など、古典的な名作だ。投資の基礎を身に着けるのに、多いに役立ったという。
「長く読み続けられているものには理由があって、不変の真理が必ず書いてある。世の中変わっていくことも大事だけど、変わらないものもあってほしい。そういう意味で、投資は脈々と変わらない生活を支えるために必要なんじゃないかな。常に右肩上がりでお金が増えていくんではなくて、上がったり下がったりしながら、全体としては緩やかに上がっていく感じ。家を買ったり、子育てしたりで大金が無くなる瞬間はあるけれど、私の最終的な取り分は、年金をもらう時に残っていればいいと考えて投資しています。いずれにせよ、老後資金を少しでも多く残したいなら、できるだけ早く始めたほうがいいと思います。この先の経済状況を心配し、リスクに怯えて動かないのはもったいない。未来のことなんて、誰にも分からないんだから」
儲けようと思っちゃダメ。損をしないようにリスクを管理
そんなNightWalkerさんだが、実は2年前にエンジニアとして勤めてきた会社を辞め、“アーリーリタイア”の道を選んだ。
「アーリーリタイアといっても、“余暇を楽しみたいから”というようなセンセーショナルな感じではなくて、親の介護が必要になるタイミングと同時期に、会社から早期退職を勧められたから。お金に大きな余裕があったわけでも、計画的なリタイアというわけでもありません。けれども投資を通じてお金について学び、資産を築いていくメドが立ったからこそ、そういう選択に踏み切れたところはあると思います」
なお、気になるポートフォリオの組み方は非常にシンプルだ。
「私が商品を選ぶポイントは主に3つあります。まず、『長く持っていられるか』ということ。そういう意味で“低コスト”の商品を選んでいます。2つ目は、『分散投資』。私の場合は世界分散で、それは個別の会社は潰れるかもしれないけれどさすがに“世界株式会社”は潰れないだろうっていう考え方があるからです。3つ目は、基本的には株式が中心だけど、普通の定期預金とか国内債券など『比較的安全なものを混ぜておく』ということ。ちなみに、リタイアしてからは全体としてのリスクを落として、年金をもらえるまでの生活防衛資金も別に用意しています」
上記のとおり、国内債券が5割というローリスクな配分。やや手堅すぎるようにも思えるが…。
「それでも現金で持っておくよりはマシでしょう。そもそも会社勤めは投資で儲けようと思っちゃダメ。サラリーマンだから、歳をとったらリスクを下げる…とか、全体を考えてリスクを管理するのが大切なんです。最低限、損をしないように気を配るだけでいい。
私自身は65歳で年金受給者になった時に、少しくらい余裕資金があったほうがいいと思ってやっているので、インデックス投資はいい選択肢だと思う。ただ、もし40歳くらいでアーリーリタイアを考えていたとしたら、このやり方は選んでいなかったでしょうね。どんなゴールを見据えているかによって、投資の仕方は全然違います」
ここまでの運用実績は「むこう10年困らない程度の生活費分くらいの資産には成長しています」というNightWalkerさん。一見地味だが、リスクを減らしてコツコツと運用する投資スタイルの背景には、やはりサラリーマンとしての経験が大きいそうだ。
「今の時代って、お金があるのに、“足りない”と不安になる人が多い。でも、生涯必要なお金を合理的にきちんと計算したら、“もう少し節約すれば大丈夫だ”と思うはずなんです。私はサラリーマンとしての仕事をしながら投資をしたからこそ、そのことに気付けたと思います」
(周東淑子/やじろべえ)