【中小型株シリーズ 第1回】

中小型株投資の魅力~醍醐味の源泉はここにある~

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Compass on stock market data chart

はじめに

今回から3回にわたって中小型株をテーマに話を進めていきたい。個人投資家の皆さんが長期的に資産形成をおこなっていく上において、株式投資というカテゴリーの中でも、中小型株を自分の味方につけて得意分野にしていただければ、その恩恵がとても大きいと思う。

中小型株って何?

現在、日本の株式市場に上場している企業数は約3700社。「大型株」「中型株」「小型株」という言葉を耳にしたことがあると思うが、どういう基準で分類しているかご存じだろうか?

通常、一般社会において大企業や中小企業を分類する場合、よく使われるのが資本金の額や従業員数、あるいは売上高といったデータであるが、株式市場では全く違う尺度が使われる。株式市場においてその企業がどれくらいの金額的価値を持つのか、すなわち時価総額という基準である。

時価総額とは「発行済み株式数×株価」で計算される。これによってその企業の金額的価値である時価が算定され、「時価総額」として認識される。この時価総額は非常に重要な概念であり、株式投資をする際、すべての投資家が考慮しなければならないポイントだ。

図表1:時価総額で見た日本の株式市場

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図表1のピラミッドは時価総額で「大型株」「中型株」「小型株」を分類したものである。大型株の時価総額を5000億円以上とする分類方法もあるが、ここでは2000億円以上とした。中型株は1000億円~2000億円、小型株は1000億円未満である。

大型株はわずか500社、すなわち3700社のうちの14%を占めているに過ぎないが、時価総額ベースで計算すると何と85%ものウェートになる。一方、中型株と小型株を合わせた中小型株は社数では3200社と全体の86%を占めているが、時価総額では全体の15%に過ぎない。

ちなみに興味深い話をすると、現在、日本で一番時価総額の大きい銘柄はトヨタ自動車で約21兆円。小型株市場として認知度が高い東証二部、東証ジャスダック、東証マザーズを合算すると約1500社で21兆円。すなわち1500社が寄ってたかって、ようやくトヨタ自動車1社分の規模にすぎない。それくらいの違いがある、ということである。

ところで、大型株と中小型株という対比をした場合、株式投資において大きな特徴の違いがあるので、ここできちんと整理して認識しておこう。

大型株 vs 中小型株

図表2:大型株vs中小型株

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図表2を見てどう感じられただろうか? これを見る限り、大型株の方が魅力があって、中小型株は不自由で危険で不安…という印象を正直持たれたと思う。大型株の方がどの項目においても圧倒的に優位な記述が並んでいる。

ところが、投資魅力と言う点では中小型株の方に軍配が上がる。なぜなら、すべての項目を満たしている大型株は業績面でも成熟しているのに対して、中小型株は未成熟であるが故に、将来的な成長の余地が残されている。中小型株は利益成長力を武器にして時価総額が増えていく、すなわち長期的に株価上昇の可能性を大いに秘めている。

大型株の業績は景況感とともに良くなったり悪くなったりを繰り返すシクリカルな動きが反映されて、株価もおおよそ決まったレンジで動く傾向がある。例えば、先ほど例に挙げたトヨタ自動車の過去15年の株価の動きは2000円~8000円の間で推移している。一方、中小型株はこうしたレンジとは違った動きをする。その根拠とも言うべき中小型株の特徴をまとめたのが次の図表である。

中小型株投資の魅力はここにある

中小型株投資は大型株に見られない醍醐味がある

①ユニークな経営者 & ユニークなビジネスモデル

②株価意識が強く、個人投資家との利害が強く一致している

③大型株には見られない高成長企業が多く存在する

④好業績やテーマが持てはやされ、株価が短期で数倍になることも

⑤大型株へと成長する企業の株価パフォーマンスは強烈である

①のユニークなビジネスモデルは、一般的な基幹産業としての製造業、非製造業という枠にとらわれないビジネスをおこなっているという意味合いである。すでに多くの企業が競い合っている既存ビジネスで戦っても勝ち目はない。そこで、新しいアイデアで勝負するユニークな経営者が新たな企業価値を創造することになる。その典型例が「ニュービジネス」だ。これまで世の中に存在しなかった事業を創出し、新たな投資テーマを提供してくれる。その意味において新興市場(ジャスダック市場とマザーズ市場がメイン)におけるIPO企業はニュービジネスの宝庫であり、毎年50~100社程度の上場企業の中で必ず何かが登場している。

②の「個人投資家との利害が強く一致」というのは、トップがオーナー経営者であるが故に自社の株価の動向が個人投資家と運命共同体であるということだ。大企業のサラリーマン経営者の株価意識とは全く異なる。オーナー企業であれば、株価が上がるか下がるかは自らにとって一大事であるが、サラリーマン経営者はほとんど自社株を持っていないため、株価に対してさほど一喜一憂しなくて済む。

⑤は長期的に見た場合の株価パフォーマンスの素晴らしさである。上場時には企業規模や時価総額が小粒であっても、利益成長とともに小型株から中型株、そして大型株へと羽ばたいていく企業が存在する。そういう企業へ投資することこそ、中小型株投資の醍醐味であり、次回は、具体的な投資事例や銘柄発掘法などについて紹介していきたい。

(太田忠投資評価研究所 代表取締役社長 太田 忠)

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