SNSのつぶやきを分析して、今話題の株をランキング!
投資家たちの注目株を教えてくれるFinatextの「ソーシャルモメンタム」とは
話題性をランキング化して、投資家の新たな情報源に
もしも自分が株式投資を行うなら、どんな情報を知りたいだろうか。企業の業績や株に関するニュースはもちろん、「投資家たちがどの株に注目しているか」を知りたい人もいるかもしれない。
その欲求を満たすサービスが、フィンテックの技術で生まれている。カブドットコム証券から配信される「ソーシャルモメンタム」だ。これは、ソーシャルメディア上にあふれる膨大な“つぶやき”を分析し、投資家たちが今話題にしている銘柄をランキング情報にして提示するものだ。
サービスを設計したのは、ベンチャー企業のFinatext。同社の木下あかね氏と辻中仁士氏に、ソーシャルモメンタムの詳しい内容や今後の展望を聞いた。
「ソーシャルメディア上の株に関するコメントを分析して、1日1回ランキング形式で更新します。株のニュースはどうしても大企業のものが多く、また、会社が発表するリリースは既成の事実を扱ったもの。一方、SNSなどのつぶやきは中小企業が話題になったり、これからの予測を話していたりします。それらの“話題性”を軸にしたのがソーシャルモメンタムで、投資家の方にアイデアの一部として使ってもらいたいサービスです」(木下氏)
ソーシャルモメンタムでは、Twitterや同社の提供する株予想アプリ「あすかぶ!』に集まるコメントを解析して順位をつける。木下氏によれば、「日本人は株に関するソーシャルメディアでの意見交換が非常に活発」であり、「ニュースや企業のリリースとは違った、投資家目線で今話題になっていることがランキングに上がるケースも多い」と話す。
もちろん、上位にランクしたからといって実際に株価が動くとは限らない。ただ、話題にする人が多いなら、当然その銘柄の売買が活性化する可能性もある。そういった一つの情報源として、今までにない切り口のものといえるだろう。
「技術面で力を注いでいるのは、データ解析の質を上げることです。たとえば、ある企業の商品に関するつぶやきがあったとして、それが単なる商品への言及なのか、株に関するものなのかを見極めなければいけません。その解析技術が当社の強みです。また、投資家の注目度が高いSNSアカウントに重点を置くなど、細かな工夫をしています」(同)
個人の投資環境を良くして、投資を楽しんでもらいたい
Finatextの辻中氏は、「ビッグデータには、数字で明確に表される構造化データと、そうではない非構造化データがある」という。ソーシャルモメンタムは、まさに感情や気持ちという目に見えないものを扱った非構造化データだ。
一方、同社では構造化データを使ったフィンテックサービスも開発した。こちらもカブドットコム証券で配信されている「リアルタイム消費財トレンド」だ。
「国内のスーパーやドラッグストアから得たPOSデータをもとに、リアルタイムで消費財の売り上げトレンドを分析。ニュース配信します。データ取得から配信まで1週間ほどなので、直近の状況がわかりますし、さらにこのデータが、各企業の売上状況や決算を予測する材料にもなります」(辻中氏)
2つのサービスは、個人投資家に向けた新たな情報提供の形。「個人の方が、機関投資家と違う角度から投資を楽しめるサービスを開発したい」と木下氏が言えば、辻中氏も「投資をする個人の投資環境を上げていきたい」と意気込む。
加えて、「投資をすでに始めている人だけでなく、これから投資にチャレンジする人のサポートもしたい」と、辻中氏は展望を語る。たとえば、ソーシャルモメンタムに活用されている同社のアプリ「あすかぶ!」は、特定の銘柄を毎日ピックアップして「その株価が明日上がるかどうか」を予想するもの。実際の投資を行うアプリではない。
「予想成績によって称号がつくなど、ゲーム的な要素を盛り込んでいます。遊び感覚で株に親しんでもらったり、アプリ内のソーシャルコミュニティでやり取りしたりする中で、投資を身近に感じてもらえればと思っています」(辻中氏)
もちろん、そこから投資を始めてもらうのが理想。実際、「あすかぶ!」をきっかけに投資をスタートする人は増えているという。
辻中氏は、「投資は資産価値を高めるだけではなく、情報を集めたり考えたりする中でアクティブに経済社会とつながれます。そこで経済感覚が磨かれるのも大きなメリット。だからこそ、投資環境を上げて多くの人に親しんでほしい」と語る。木下氏も「日本の経済が盛り上がるためにも、若い人に投資に興味をもっていただければ」と同調する。
多くの人が投資をより楽しめるように。フィンテックの技術を使ったサービスの裏には、そんな願いがある。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2017年9月21日現在の情報です