マイナスの複利効果とは!?
雪だるま式に増えるのは、投資も借金も同じ?
長期投資での「複利」の効果 については、皆さんもお聞きになったことがあるかと思います。長期投資では「複利」を味方につければ、お金を大きく増やすチャンスが広がります。
しかし、膨らむのは利益だけではありません。借金などでは、場合によってはマイナスの複利効果で増えていきます。複利と複利効果の大きさを正しく理解しておきましょう。
複利と単利の差は大きい
金利の計算をする方法には「複利」と「単利」があります。「複利」の場合、元本とついた利子を合わせた金額に対して利子がつくので、複利効果が生まれます。運用で得た収益をふたたび投資することで、利息が利息を生んで膨らんでいくのです。
例えば、100万円の元本を金利5%で複利運用すれば、10年で約163万円、20年で約265万円、30年では約432万円になります。
一方、「単利」は、元本だけに利子がつくことです。1年後に得た利息は再投資をしませんので、100万円を金利5%で単利運用しても、30年後に250万円にしかなりません。
複利運用と単利運用を比べてみると、以下のグラフのようになります。投資の世界では、基本的には単利ではなく複利となりますので、資産が雪だるま式に増えていくわけです。
単利の計算は利息を足して行くだけですが、複利は投資期間が長ければ長くなるほど増えていきます。運用を早く始めれば(投資期間が長いほど)、この複利効果がより大きく期待できるのです。また、金利が大きいほど、複利効果は大きくなります。100万円を30年間複利運用した場合、金利が大きいほど増え方も大きくなります。
借金も雪だるま式に膨らむ
しかし、これ、借金だって同じことです。
例えば、携帯サイトやインターネットなどで簡単にお金が借りられるカードローンについて考えてみましょう。最近、こんな広告サイトを見ました。
「専業主婦の方でも借りられます! 収入のある人よりはどうしても金利が高くなりますが、それでも最高金利で13~14%。平均的な消費者金融の上限金利は18%台からなので、家計を預かる専業主婦にとってはかなり有利です!」
現在、銀行の定期預金金利が0.01%ですので、それに比べてかなりの高金利ですが、それはひとまず置いておいて、借金における「複利」の恐ろしさを見てみましょう。
借金はまさに雪だるま式に膨らみますが、どのくらいの速さで増えて行くのかは、「72の法則」でわかります。
72を金利で割ることで(72÷金利)、お金が2倍になる期間が計算できます。例えば単純な計算として、金利14%でお金を借りて全く返済しなかった場合、「72÷14=5.1」となり、約5年間で借りたお金が2倍になります。金利18%だと、「72÷18=4」となり、たった4年で100万円の借金が200万円になるのです。
借金の金利は当初借りたお金(元金)に掛かり、また一般的には毎月返済をしますので、通常は上で述べたペースでは増えません。とはいえ、無計画に借金をして返済を怠ることがどれだけ恐ろしいかが分かるでしょう。
運用コストにも注意!
お金を増やすのに、「複利」は強い味方です。しかし、コストに注意しなければ、せっかくの運用益が吹っ飛んでしまうことも知っておきましょう。
例えば、現役世代のほぼ全員が加入できるようになった個人型確定拠出年金制度「iDeCo」や、来年から始まる「つみたてNISA」は、投資信託で運用します。
投資信託には通常、「運用管理費用(信託報酬)」というコストがかかります。スポーツクラブで言えば、月謝のようなものです。入会金に当たる「購入手数料」は、投資信託を購入した時に一度だけかかりますが(かからないものもあります)、「運用管理費用(信託報酬)」は、投資信託を保有している間、毎日、信託財産から差し引かれます。
例えば信託報酬年1%(消費税を除く)であれば、その365分の1ずつが日々差し引かれていくのです。スポーツクラブの入会金とは異なり、この運用管理費用(信託報酬)は「複利」で効いてきます。
先に、「複利においては金利が大きいほど複利効果が大きい」と述べましたが、マイナスの複利効果も大きくなるのです。
100万円を30年間、年利5%で複利運用した場合を見て見ましょう。
コストを差し引いた実現利益は、①のコスト(運用管理費用)が年0.5%(実質リターンは4.5%)の投資信託は約375万円に、②のコスト年1%(実質リターンは4%)は約324万円に、③のコスト年1.5%(実質リターンは3.5%)は約281万円、④のコスト年2%(実質リターンは3%)は約243万円になります。コストの差によってこれだけの利益の差が生じるのです。
さて、先ほどご紹介した「72の法則」(お金が2倍になる期間がわかる算式)ですが、現在の定期預金の年利0.01%を当てはめれば、「72÷0.01=7200」です。100万円を200万円にするのに7200年もかかるということになります。今や、預貯金ではお金は増やせない時代なのです。そこで、いかに効率的にお金を増やすかということが重要になってきます。
リスクを取りたくないないという人は、無理に取る必要はありませんが、筆者はやはり、リスクをとって長期で運用する方がリターンは増える場合が多いだろうと思っています。しかし、長期で運用する時に、「複利効果」をなくしてしまう毎月分配型の投資信託や、コストの高い商品を選ばないようにすることが大切だと言えるでしょう。
(All About「学費・教育費」ガイド 岩城 みずほ)