従業員の健康は株価にも影響する!?
広がる「健康経営」への取組み、株価パフォーマンスは・・・?
提供元:カブドットコム証券 投資情報室
国内でも徐々に浸透する「健康経営」とは?
ここ数年、国内でも徐々に広がりをみせる「健康経営」という言葉をご存知でしょうか。これは従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、企業が戦略的に実行することを指します。
この経営のスタイルは、1980年代に米国の経営心理学者ロバート・ローゼン氏によって「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」という思想から提唱されたものです。「社員の健康を維持する仕組みつくりは投資であり、生産性や創造性の向上などが業績に結び付き、十分なリターンが得られる」と米国の多くの企業で導入されています。
日本においても、従業員への健康投資を行うことが従業員の活力や生産性の向上など組織の活性化をもたらし、結果的に業績や株価の向上につながることが期待されるようになってきています。
足元では大企業を中心に健康経営の考え方が浸透してきており、2015年6月にはテルモ(4543)やNTTドコモ(9437)、協和発酵キリン(4151)、第一生命(8750)、大日本印刷(7912)など、社員の健康増進に取組む14社が「KENKO企業会」を設立しました。
社員やその家族を合わせた30万人の健康コミュニティをつくり、健康管理プログラムを共有し、組織の活性化や社員満足度の向上、経営効率・生産性の向上を目指しています。
2017年10月末現在では、加入企業数が58社に増えるなど 、健康への積極的な姿勢が大企業を中心に広がりを見せつつあります。
官民一体で健康経営を後押し!投資家も気になる健康経営銘柄のパフォーマンス
経済産業省は日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に対する取組のひとつとして、2015年から東京証券取引所と共同で、健康経営に戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定しています。
これらの企業をレポート とともに詳しく公表することで、その取組みが株式市場において適切に評価される仕組みづくりや企業による取組みを促進することを目指しています。このように、現在は官民が一体となって健康経営の一層の促進に向けて動き出している最中にあるのです。
さて、投資家にとって最も気になるのは健康経営に取り組む企業の株価パフォーマンスではないでしょうか。
そこで今回は経済産業省と東京証券取引所が公表している最新の「健康経営銘柄2017」の株価パフォーマンスをチェックしていきます。
最新の健康経営銘柄2017に選定された企業は以下の24社です。社員の健康促進の専任部署を設置する企業、会社方針として「健康宣言」を明文化する、健康計画についてのパンフレットを作成・配布をおこなう、スポーツフェスティバルを開催するなど、幅広くユニークな取組みを推進する企業 が多く見られました。
こうした先進的な健康経営を推し進める銘柄について、健康経営銘柄が公表され始めた2015年の年初から2017年10月末までの騰落率(株価パフォーマンス)を日経平均・TOPIXの主要指数と比較しました。
【健康経営銘柄2017と主要指数の株価パフォーマンス比較】
気になる結果を見ていくと、日経平均やTOPIXの期間騰落率を上回る企業は24社中、11社でした。しかし、24社の平均騰落率は28.3%となり、日経平均を1.9%、TOPIXを2.3%上回る結果となりました。
この結果から、算出した期間で健康経営銘柄に投資していた場合は、指数よりも良好なリターンとなっていたことがわかります。
個別銘柄では、TOTO(5332)や塩野義製薬(4507)が90%を超える非常に高い株価パフォーマンスを上げた一方、神戸製鋼所(5406)が-54.8%と予測できない材料などが株価下落要因となったことから、個別銘柄別のIR情報や日々のニュースはしっかりと追っていく必要がありそうです。
毎年公表される健康経営銘柄。選出のための健康経営調査に対しては、未上場企業を含めて回答数が年々増加しています。また、従業員の健康に関する取組みへの情報開示も進み、さまざまな企業に健康経営のスタイルが定着しその質も向上してきています。
今後も企業のこのような取組みが、投資家にとって魅力的な投資先につながることが期待されていきそうです。