買い物ついでにチーズの価格を定点観測?SEブロガーの見える化
インデックスブロガー・アウターガイさん「インデックスがきっかけでお金の管理法を見直した」
手間がほとんどかからず忙しくても続けやすい「インデックス投資」。本業の傍ら始める人も多いというが、実践者はどのようなきっかけでインデックス投資と出会い、投資と本業を両立しているのだろうか。
SEをしながらインデックス投資に取り組み、投資ブログ「バリュートラスト」を運営するアウターガイさん(30代男性、札幌市在住)に話を聞いてみた。
大学でパッシブ運用の有効性を学ぶも、個別株で大失敗
親族が株を持っていたこともあり、幼いころから投資や経済に対する関心が高かったというアウターガイさん。大学では経済学部に進み、投資の原則や重要性、さらにはパッシブ運用の有効性など、投資に関する専門的な知識を身に付けたという。
「経済ゼミに入っていたのですが、そこで私の世代は預貯金とその利息だけでは老後を送れないと気付き、衝撃を受けました。それと同時に、諸外国ではそれが当たり前で、ごく普通の人がごく普通に投資して、老後に備えていることを知ったんです。日本でも今後は、投資による資産形成が否応なく必要になるだろうと、強く感じるようになりました」
大学卒業後は地元IT企業に就職。忙しさが落ち着いた入社5年目の時に、初めて証券口座を開設した。大学でパッシブ運用の有効性を学んでいたアウターガイさんだが、意外にも初めて買った商品は、株主優待が魅力的な“個別株”だったという。
「株主優待に惹かれて、まずは自分がよく使っている大手航空会社や小売業の株を買いました。実際に購入してみると、日々値動きし、それを面白く感じるようになって。株が上がったら売って、下がっては買ってを繰り返すうちに優待株の回転売買というアクティブ運用が私にピッタリだと思ったんです」
ところが、投資を始めて半年がたった2008年9月、リーマンショックが起こると状況は一変。損失を取り戻すために預貯金を全てつぎ込み、優待株の売買を続けた結果、資産を大きく減らすことに。
「預貯金が尽きたことで、生活の立て直しに集中せざるを得ず、投資に時間をさけなくなってしまったんです。そんな時に、竹川美奈子さんの『「しくみ」マネー術』を読んで、生活・貯蓄・投資のバランスを保つ上ではインデックスファンドの積立投資が最適だと痛感しました。その年の11月からは意を決して、優待株は全体の2割までとし、あとはインデックス投資で運用することにしたんです」
“見える化”で徹底管理! インデックスで変わったお金の管理法
個別株の失敗で、思い切ってインデックス投資へと舵を切ったアウターガイさん。個別株オンリーの時は、毎日平均2~3時間ほど、投資の情報収集や勉強の時間を取っていたというが、インデックスに変えてからは、売買に時間を取られることも、値動きを気にすることも少なくなったという。そして、インデックスを始めてから半年がたつと、リーマンショック後の景気回復の波に乗って資産が大きく増え、気持ちもずいぶん楽になったそうだ。
「インデックス投資にしてからは、情報収集の時間はあっても1日30分ほどに減りました。その分、空いた時間を使って、家計と投資を一元管理するための情報システムを作りました」
キャリアを積んできたSEとしての知識をいかし、使途不明金の発生や投資収益とベンチマークの差異など、お金に関するさまざまな問題を“見える化”するシステムを開発し、お金の出入りを把握。効果的な対策を打つのに役立ったという。
「インデックス投資は、投資という枠にとどまらず、それまでのお金の管理をふり返り、根本から見直す機会を私に作ってくれたと思っています」
さらに、投資の方針についても“見える化”を徹底しているという。
「私の場合、たとえ投資方針がしっかり固まっていたとしても、暴落の局面ではその通り動けないことがこれまでの経験で分かりました。だから、投資方針をあらかじめ書き出しておき、市場が変わっても行動を変えないよう、自分への戒めとして使うようにしています」
退職後の費用や働けなくなった時に備えて、3000万円の資産形成を目標としており、アセットアロケーションは国内・国外にバランスよく分散。リバランスもほとんどしないという。
「ポートフォリオの管理においても、バイブルである投資方針書の記載内容に背いていないかを注意しています。何らかの判断や行動を伴う時はもちろんのこと、そうでない時も折に触れて投資方針書を読み返しています」
投資のやり方は十人十色。本業のスキルをいかすことだってできる
2008年から続けているブログでは、SEの知識をいかし、「ポートフォリオ・アナライザー」や「乗り換えコストチェッカー」など、投資の計画や成績分析に役立つ自作のソフトを提供している。
「私は自身のITスキルをいかして、さまざまなことを“見える化”したり、自動化したりするのが得意。これからの投資においてもそのスキルをいかし、運用コストの自動計算機能や、自動リバランス機能などを追加して、より高度なポートフォリオ管理を目指していきたいと考えています」
本業のスキルをいかしつつ、投資と上手に付き合っているアウターガイさん。最後に、投資初心者に向けて、投資と上手く向き合うコツについて聞いた。
「投資への向き合い方は十人十色で、万人向けの手法というものは存在しません。よく『投資は自己責任で』と言われますが、自己責任だからこそ、自分でとことん考え抜き、自分なりに納得のいく投資スタイルをぜひ確立してみてほしい。あれこれ考えを巡らせることもまた、投資の一つの醍醐味ではないでしょうか」
(周東淑子/やじろべえ)