プロ的銘柄探し②
個人でもできる銘柄探しの方法
提供元:One Tap BUY
著者:三好 美佐子(One Tap BUY)
前回の記事で、銘柄探しの方法は、
・とにかく数字で攻める「定量分析」
・調査で攻める「定性分析」
分析の順番は、
・高い目線から絞っていくトップダウン方式
・地道に銘柄を見る一本釣り、ボトムアップ方式
こんな分類に整理してみました。
機関投資家のようにツール、お金、人数が豊富にあれば、すべて組み合わせていいとこ取りをしますが、個人投資家はこれらのノウハウをどうしたら実行できるでしょうか。
まずは、投資のスパンを決めましょう。短期か長期か…です。
● 短期で収益を上げたい場合には
デイトレード(数分~1日以内)、スイングトレード(数日~1週間以内)、場合によっては数ヵ月くらいまで、業績はあまり関係なく、値動きで利益を取っていく作業になるため、定量分析が主役です。
株価のデータを集め(これを線でつないだものが株価チャート)、RSI、MACDなどの指標を使って買い・売りのサインにします。多くの時間を投資に割ける投資家は、複数の指標を組み合わせて自分の使いやすいシグナルを探して使っている人が多いように思います。
ただ、どの指標も万能ではなく、その指標のシグナル通りにならないこと(騙し)があります。また、うまく使えるようになる、精度の高い組み合わせの指標を見つけるには、トライ&エラーを繰り返すなど研究が必要です。
では、そんなに投資に時間が割けない人には、長期でのんびり投資をお勧めします。
● 長期投資で収益を上げたい場合には
長期投資は、文字通り、数ヵ月、数年~数十年といった目線で投資をしていく姿勢をいいます。
頻繁に株価をチェックせず、ゆっくり持っていられる銘柄の探し方で、日々の時間をあまり投資に費やさずともよいのが利点です。
加えて、短期投資が日々数%の収益を期待し、積み上げていくスタイルであるのに対して、長期では、1回の買い→売りで、投資額の何割~何倍の収益も期待の範疇となります。ただし、短い期間に目標の収益が上がった場合には短期で売ってもかまいません。あくまでも、投資スタンス、株価を見る目線が長期である必要があるのです。
そんな銘柄探しでは、「業績」に着目することになります。
なぜならば、資本市場の鉄則が「株式の価値は業績に従う」ことにあるからです。
そもそも株式投資とは、その企業のオーナーになることです。オーナーになれば、その企業の利益から配当を得られます。配当を得るためには、業績のよい企業を買う必要があります。したがって、業績のよい企業の株は、業績が上がるに従って株価も上がることになります。
ただし、株式である以上、日々の値動きは上がったり下がったりしながら時は進んでいきます。
その企業自体の業績は良くても、テロや地震、金利動向などで市場全体が下がり、その影響を受けることもあります。しかし、その中でも、業績に裏打ちされた企業の株価は、値下がりが少なかったり、株価の回復が市場よりも早かったりするものです。
そういった株式の性質から、長期で投資するならば、業績の良さが絶対的な条件であり、しかも、その業績とは、買った後のことを指します。将来の業績が良い、言い換えれば、今から成長する企業を探して投資することになります。
これから先の世界で、どの会社の商品やサービスが売れていくかしら・・・そう考えて銘柄を探してみる。
これは、まさに「定性分析」の世界です。
● プロのやっている「定性分析」は
では、プロはどうやって定性分析をしているのでしょうか。
投資信託の運用会社には、「調査部」といった名称の部署があり、難しい証券アナリスト試験をパスした人々が多く配属されています。
証券アナリストは、運用現場で次のことをします。
・企業の財務諸表を見て、足元の業績を判断
・企業を訪問して、状況を聴き、現状の社会情勢と照らし合わせて成長性を判断
・上記結果で、レポートを書いたり、ファンドマネージャーに投資対象として銘柄を推薦
企業訪問は、大手であれば財務部長、財務担当、IR担当などから話を聴きます。比較的小さい企業であれば、社長と面談することもしばしばあります。また、企業が開く決算説明会に出席して、直接質問したりします。
企業の関係者から直接、インサイダーに当たるようなビックリ情報は得られません(万一得られたとしても、投資には使えません)が、例えば、リリースされた新商品の自信のほどや消費マーケットの現状など、そこで聴き得た印象をも併せて、「その会社の将来は有望か否か」を検討します。
● 個人投資家はどうするか?
個人投資家は決算説明会に呼ばれませんし、企業に行っても恐らく直接話を聴くことはできません。では、どうするか?
というよりも、なぜプロは訊きに行くのか?-それは仕事だからです。
証券アナリストは通常、「医薬品担当」「食品担当」「化学担当」「建設担当」…と業種ごとに分担しています。しかし、食品業界担当だからといって、「ビールは、キリンもアサヒもサントリーも平等に飲むよ~」とはなりません。身体一つしかないですから(笑)。また、ビール嫌いでも食品業の担当になりますし…
だから、詳しい材料集めが必要なので、直接企業に接触する必要があるのです。
一方、個人投資家にも2つの強みがあります。
一つは、すべての銘柄をカバーして、ナンバーワンのパフォーマンスを出さなくても誰にも文句は言われないことです。もちろん、もっとも高い投資成果を得られれば嬉しいことですが、自分が満足できる収益が得られればそれでよいのが個人投資家です。つまり、無理しなくてよいということです。
もう一つは、すべての人が「消費者であること」です。
「毎日のように吉野家に行っている人」
健康面の問題は置いておいて、メニューの変化、客足の推移、価格戦略の良し悪し…わざわざ調査しなくても体感しています。きっと、同業の松屋もすき家もチェック済みでは?
「ついつい楽天市場やアマゾンでポチっちゃう人」
楽天市場やアマゾンがどんなサービスをしていて、どんなに便利で、どんな広告をしているか、きっと分かっています。
「ニトリの前を素通りできない人」
その魅力、客足、駐車場の混み方まで理解できていると思いますし、Nウォーム・スーパー毛布の温かさも体感済みではないでしょうか。
つまりは、日常の生活の中でプロに負けない企業への接点を持ち、かつ、その銘柄が日本で一番でなくてもよいのです。むしろ、自分がよく使っている企業であればこその愛着もあり、短期的に起きる株価の変動を長い目で見ることも可能で、長期投資に向いているのではないかと思います。
結論として、「ボトムアップ方式」の「定性分析」ならば、“一般投資家にも実行が可能である”ということです。投資対象として、今までより、もう少し注意深く観察することで。
ところで、プロの企業分析といえば決算書類が必須ですが、個人の方は「財務諸表が読めない」場合も多いと思います。この点、「黒字が3期以上続いている会社が好ましい」との見解もあり、そこだけ見てもよいですが、財務諸表はニュースになるほど危険な状態でなければよいと思います。
例えば、米国のアマゾンは、ずっと株価が上がっていますがずっと黒字というわけではありません。
買い物に便利なツールを次々と繰り出しているので、売上は上がっていますが、CEOのジェフ・ベゾス氏が大型倉庫など思い切った設備投資をするのでしばしば赤字に転落します。しかし、事業の成長に対する信頼があるので株価は上がっています。
このことは、財務諸表の数字よりも「将来に向けて期待が持てるかどうか」の方が株価にとっては重要であることを示しています。
(次回に続く)
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