フィンテックの最前線を追う!

日本は世界トップの「お金について便利な国」

海外のフィンテックが、日本より早く進んだ理由は…

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金融とテクノロジーの融合を意味するフィンテック。日本でもかなり認知が高まっているが、世界でももちろん活発な動きを見せている。では、日本と海外でその動向に違いはあるのだろうか。Fintech研究所の所長を務める、マネーフォワードの瀧俊雄氏に伺った。

キャッシュレス化はアメリカ4割、中国6割。日本は?

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「2014年頃から、銀行以外のプレイヤーが金融サービスに進出し始めました。先端テクノロジーを金融分野に活用できないかと考えた人が多かったためです。日本も海外も同じように盛り上がり始めましたが、その“進み具合”は、海外の方が先行していると言えるでしょう」

一例として、瀧氏は現金を使わない「キャッシュレス決済の比率」を挙げる。日本のキャッシュレス決済比率(クレジットカード、デビットカード、電子マネーによる決済)は、2016年でおよそ2割だが、アメリカでは4割、中国では6割ほどになっている(※)。

※:2017年11月、NTTデータ経営研究所 グローバル金融ビジネスユニット「クレジットカードデータ利用に係るAPI連携に関する検討会 第五回検討会資料(多様な支払&データ利活用)」より

また、スウェーデンでは、国が推進するスマホ決済アプリを国民の5割以上が使用しており、なかでも19~23歳の利用率は95%だという。

なぜ、海外に比べて日本はキャッシュレス化が進まないのだろう。瀧氏は「日本は、お金に関するサービスが世界トップクラスに便利だったからこそ」という。どういうことなのか。

「どこにいても現金を引き出せて、時間の制限もほとんどない。お金を振り込む場合も当日か翌営業日には送られる。これだけ便利な国は他にありません。結果、日本人がお金の扱いに不満を持つことが極めて少なかったのです。一方、海外には銀行口座を持てない人も多く、中国では半数、アメリカでも一定数います。アフリカでは給料をもらうのに1時間歩いて受け取りに行ったり、手数料を1割とられたりということも珍しくありません」

つまり、日本は現金とそれを支える銀行の、オフライン中心のサービスが便利すぎるがゆえにニーズが発生せず、イノベーションが起こりにくかった。「中国では、銀行からお金を借りられない人がたくさんいました。でも、本当にわずかな小銭だけでも借りたいケースは多々あります。そのニーズに呼応するように『アリペイ(Alipay)』のような決済・送金サービスが普及しました」と瀧氏は言う。

信頼しにくい事業への融資は、AIが判断

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こういった背景から、海外で先行して盛り上がっているサービスは多い。顕著なのがソーシャルレンディングだ。いわゆるお金を借りたい人と貸したい人をネット上で結びつけるサービスだが、海外ではさらに進化した形になっているようだ。

「アメリカの『キャベッジ(Kabbage)』は、急成長している小規模事業者や個人を対象とした少額のレンディングサービスです。これまで、ネットのEC事業を始める人は融資を受けづらい状況にありました。在庫はあるものの、土地や店舗はなく預金も少ない。担保となる資産がないためです。キャベッジでは、フィンテックを駆使してそういった人への融資を行っています」

もちろん、小さな事業者への融資はリスクがある。そこで使われるのがAI(人工知能)などの先端技術だ。事業者のデータをAIが分析し、融資をしても大丈夫か判断する。細かなデータを分析することで、信頼できる事業者を見極めて、初期からサポートするのだ。

キャベッジは、2009年の設立から6年で、時価総額10億ドル超えという評価を受けるまでに成長した。

スマホやタブレットでのカード決済アプリを提供する『スクエア(Square)』は、アメリカ発の世界的なフィンテック企業。ここも「友人が出品したものをカード決済ですぐに買いたい」と考えた創業者の“ニーズ”がきっかけだった。

「このようなサービスは、決済を便利にするだけでなく、その店舗の売り上げデータを最初に細かく知ることができます。彼らは、このデータをもとに融資の提案も行うんですね。決済サービスは、すでにそういったステージに進んでいます」

フィンテックという言葉自体は定着したものの、その動向はまだ移り変わりが激しいと言える。日本と海外で、今後どのような違いが出るのか、あるいは足並みが揃うのか注目だ。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2018年3月現在の情報です

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