MAB投信だより
相場下落局面における資金フローとパフォーマンス分析
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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サマリー
● 2月は世界の主要株価指数が下落し、投資家の恐怖心理を表すVIX指数は2015年8月の世界同時株安以来約2年半振りの水準まで上昇した。
● こうした市場混乱時においても、投信市場では依然として株式型ファンドやバランス型ファンドへの資金流入が継続した。
● 近年資金を集めているリスク限定型ファンドは市場急落時の影響を抑制する傾向がみられたが、同じリスク抑制機能を謳っていても一律に安定的なリターンを確保できるわけではないため、個々のファンドの中長期のリスク・リターン水準も確認することが望ましい。
1.相場下落時における投信市場のキャッシュフロー
2月は上昇相場の調整局面を迎え、主要株価指数が歴史的下げ幅を記録した。こうした局面における投信市場の資金流出入状況を確認すると、株式型やバランス型への流入が継続しており、市場混乱の影響は限定的であったことがわかる(図表1)。
図表1: 資産別資金流出入
特に、国内株式型は流入規模が拡大しており、押し目買いの好機と捉えた向きが多かったことがうかがえる。また、バランス型ファンドは2017年1月以降1年以上にわたり資金の純流入が継続しており、資産形成のコアファンドとして着実に資金が集まっている。
資金流入が継続しているバランス型の中でも、近年特に資金が集中しているものの一つがリスク限定型ファンドである。このリスク限定型とは、基準価額下落時にポートフォリオのリスクを引き下げる等、何らかのリスク抑制策が組み込まれているファンドを指す。次に、こうしたファンドのパフォーマンス動向を確認してみよう。
2.リスク限定型ファンドのパフォーマンス動向
図表2はリスク限定型とリスク限定型を除いた資産配分固定型アクティブファンドのパフォーマンスを比較したものである。2月を含めた過去の市場混乱時の月次リターンをみると、平均してリスク限定型の各時期における下落率は抑制されていることがわかる。個別ファンドでは、直近1年でリスクを抑えながらも効率的にリターンを獲得しているファンドもみられた(図表3)。
図表2: リスク限定型・資産配分固定型の平均リスク・リターン(2018年2月末時点)
図表3:リスク限定型 シャープレシオ(1年)上位ファンド(2018年2月末時点)
※ リスク水準が中低位(株式組入れ比率が55%未満)のアクティブファンド
ただし、全体として、市場混乱時のリターンと中長期リターンに必ずしも関連性はみられなかった。その理由は、リスクコントロールのトリガーやオペレーションはファンドによって異なるため、リスクコントロール機能の有効性にはばらつきが生じるからである。
具体的には、当月の下落率が抑制されなくとも翌月の調整等により中長期的には良好なパフォーマンスにつなげていると考えられるファンドがある一方で、それとは逆に、当月は抑制されているものの、相場の反動の影響等から中長期のパフォーマンスが劣後したファンドも存在する。
同じリスク抑制機能を謳っていても、一律に安定的なリターンを確保できるわけではない。良いファンド選択のためには、中長期のリスク・リターンを確認することが重要といえよう。
ただし、現時点では長期実績をもつリスク限定型ファンドは少ないため、実績のあるものを中心に運用報告書を確認し、自身のリスク許容度や目的に合ったファンドを選ぶことが望ましい。
(MABファンドアナリスト 福本)