ずぼらでさぼりがちでも「仕組みづくり」でしっかり運用
大学生から投資を始めたブロガー・セロンさんが語る「投資の始め方」
お金にまつわる話はどうしても難しそうなイメージが付きまとい、興味はあっても「もう少し年齢を重ねてから…」と考える人も少なくないだろう。
ところが、「22歳からの貯蓄学」を運営するセロンさん(30歳男性、都内在住)は、ブログのタイトル通り、社会人1年目からコツコツと投資を続けてきたという。「もともとは数字を見るのは苦手だった」と話すセロンさんだが、どんなきっかけで投資を始め、どのように資産を築いてきたのだろうか。話を聞いた。
大学生で投資スタート。きっかけはあの大恐慌
セロンさんが投資に関心を持ったのは、大学1~2年生の頃。当時話題になっていたロバート・キヨサキ氏の『金持ち父さん、貧乏父さん』を図書館で手に取ったのがきっかけだったという。
「もともとお金や資産形成に興味があったわけではなく、『金持ち父さん――』は話題になっているから読んでみようという程度でした。だからそれを読んで資産形成を始めたわけではないんですが、“次、恐慌が来るぞ”という予言めいた一文があったのは妙に印象に残っています。当時は景気も良く、恐慌なんて来るわけないよな、という感じだったので」(セロンさん、以下同)
ところが、セロンさんが就職活動を始めた2008年、リーマンショックが起こり、警告が現実のものとなる。
「リーマンショックが起こったのが9月、就活が始まったのが10月。就職企業合同説明会に行くと、出ているブースがどんどん少なくなっていく。就活生としては明らかに“ヤバい”と感じました。ちゃんと就職できるかどうかはもちろん、たとえ就職が決まっても、もしかしたらクビになるかもしれないし、会社そのものが潰れちゃうかもしれない。何かあっても会社は助けてくれないから、ちゃんと人生設計をして、自分で備えておくことが必要なんだということを実感しました」
そして就職活動が終わった2009年4月、アルバイト代を元手に、割安な個別株銘柄を購入。しかし、セロンさんは投資“超”初心者。初めて2~3カ月もすると、「このままのやり方でいいのだろうか」と不安を感じ始めたという。
「それから改めて本やネットで情報収集を始めました。当時はまだ学生だったのでとにかくお金がなく、投資を始める際にはなるだけ“低コスト”であることが大切だった。そんな時、水瀬(ケンイチ)さんらインデックス・ブロガーのページに辿り着き、初めてインデックス投資の存在を知りました」
ずぼらな人ほど、最初の「仕組みづくり」が大切
“低コストで運用できる”が売りのインデックス投資に魅力を感じたセロンさんだが、実際に運用を始めたのは社会人になってからだった。
「学生の頃は卒業旅行なども重なって、追加投資ができなかったんです。だから、入社してお給料をもらえるまでの間は、インデックス投資の『運用方針書』を作成する時間に充てました。社会人になったらいくらお給料が入りそうか、税金はいくらとられるのか、食費・住居費などを除いて月々どのくらい投資に回すか、ということを具体的に書き出したんです」
学生時代から「運用方針書」を作っていたなんて、とても几帳面なようにも思えるが…。
「僕は全く逆で、ずぼらでさぼりがちな性格。お金に関しても結構使い癖があり、先にきちんと目標を決めてお金を貯める仕組みを作っておかないと、自分の社会人生活がガタガタになってしまう不安があったんです。そのおかげで、今もほしいものがあっても『これを買うと自分の設定ラインをオーバーしてしまう』と、自制することができています」
社会人になってからは、毎月給料日になると定額を証券口座に入金。アセットアロケーションは国内:国外=1:1で、運用方針書に従い「配分比率が上下5%以上になった際にリバランスを行う」という投資スタイルを8年近く続けている。
「最初は値動きが怖かったのですが、半年ほどたつとだんだん慣れてくる。今、投資に充てる時間は月30分程度で、ほとんどほったらかしです。他の投資に関心がないわけではないのですが、今は自分の仕事や趣味、そして家族との時間を優先したい気持ちが強いですね」
新社会人必見!セロンさんが語る「投資の始め方」
社会人1年目からインデックス投資を始め、着実に資産を積み上げているセロンさん。投資初心者に向けて、「まずはやってみることが大切」と話す。
「まずは少額、失敗しても大して影響のない額から始めることが大切だと思います。今は500円で買える投資信託もありますから。たとえ失敗したとしても、500円だったらランチを1回我慢すればいいだけ。始めてみることで、いろいろ勉強するきっかけにもなるし、価格の変動にも少しずつ慣れていけると思いますよ」
と同時に、「資産ゼロ」から始める際には注意点もあるという。
「よく、投資をする時は『緊急用の生活資金は用意した方が良い』というけれど、人生で起こる予想外の出来事にも対応できるよう、『絶対に用意しておくべき』だと思います。
私自身、投資を始めた頃は『自分が結婚するのは30くらいかな』と思って、生活余剰資金をほぼ投資に充てていました。でも実際は、自分が思っているより早く結婚することになり、貯金があまり溜まっていなかった結果、投資信託を売却して現金化することになってしまいました。
また、東日本大震災の時に茨城県にいたんですが、家の周りが停電してATMが使えず、お財布の中の現金だけで生活しなければならない、という状況も経験しました。
そういう意味で、人生の予期せぬ出来事に対応するためにも、投資とは別に“緊急用の生活資金”として貯金はもちろん、現金を手元に持っておくことは大切だと思います」
資産形成について考える機会も多い新年度。投資を始めようか迷っている人は、セロンさんを参考に、まずは“少額”から始めてみるといいかもしれない。
(周東淑子/やじろべえ)