知識を蓄えて投資デビューより、経験を積んで知識を蓄えよう
提供元:トウシル
新卒即投資デビューはありか。学生時代は定期的な収入を得ていない立場から投資に躊躇していた人も、社会人になり給与を得る立場になれば話は違います。興味と関心がある人は20歳代の早いうちに投資デビューしてほしいと思います。そこで今回は、「新社会人即投資デビュー」のポイントを考えてみましょう。
社会人デビューおめでとう!
この4月から学校を卒業して新社会人になった方、就職おめでとうございます。就職する、ということは、自分の力(仕事のアウトプット)により自分の生計を営む費用を稼ぎ出す立場に「進化」するということです。
これはあなたが20年前後の間、両親に「扶養」されてきた状態からの大きな変化であり、あなたが本当の意味で一人前になったということです。まずはその大きなステップアップを喜びたいところです。
これからは、自分の能力によって自分で生きていくための費用を稼ぎ出し、また社会を維持するコストの一部を負担(税負担および社会保険負担)していくことになります。
あなたの「稼ぐ能力」を2億円前後とするか、3億円とするか、それ以上とするかは、あなたのこれからのがんばり(とそれをきちんと評価する会社の人事システム)次第です。
ぜひ仕事に励んで高い年収を勝ち取っていきましょう(くれない会社は見切りをつけて高年収をもらえる会社にさっさと鞍替えしていきましょう)。
これが、ファイナンシャルプランナーとしてまず、新社会人に告げたいアドバイスです。
新卒即投資デビューはありか
さて、新社会人に向けて次にお話したいことといえば「投資」があります。投資について少しでも興味と関心があるとき、新社会人になったとき「投資デビュー」してもいいか、と考える人もいるかもしれません。
特に就職活動をしていて、「資産運用」が個人の選択肢の1つとなっていることや、「投資」が資本主義世界を発展させていてく原動力のひとつであり、社会をよくしつつ自らの資産を増やすことも可能な取り組みであることを知った人もいると思います。
あるいは、投資によってお金をハイペースで増やす、ということに魅力を感じている人もいるかもしれません。
学生時代は定期的な収入を得ていない立場から投資に躊躇していた人も、社会人になり給与を得る立場になれば話は違います。
自分の稼いだお金をどのように配分するか、会社はうるさく口出ししてくることはありません。また、投資をする「資格」は何もありませんので(口座開設にあたって本人証明は必要ですが)、新社会人が投資デビューすることは何の問題もありません(自分の勤務先が上場企業である場合は、インサイダー取引などの対象になりますが)。
むしろ興味と関心がある人は20歳代の早いうちに投資デビューしてほしいと思います。そこで今回は、「新社会人即投資デビュー」のポイントを考えてみましょう。
新社会人が投資デビューするための3つのルール
新社会人が投資デビューするに当たってのルールをできるだけシンプルに3つだけ提示してみます。
ルール1.借金で投資はしないこと
ルール2.レバレッジはかけないこと
ルール3.あまり高額にしないこと
まず「借金はしない」ことです。社会人になると借金も簡単にできる身分になりますが、それはあなたの将来の稼ぎを金融機関が剥ぎ取ろうと狙っているだけであり、借金は極力控えるべきです。しかし「この本には“毎月倍々に増やせる”と書いてある。年利14%の借金なら、それ以上投資で儲けられるからOKじゃないか」と考える人は後を絶ちません。
借金の金利は、投資で得られる利益より有利な条件として金融機関が設定しているわけです(そうでなければ、個人にお金を貸さず金融機関が直接投資をすればいい)。あなたはアマチュアであり素人であるにもかかわらず、投資でそれ以上の利回りをたたき出せると考えるのが間違いの始まりです。投資をする場合、失敗をする可能性はゼロにできず、借金で投資をしないことが一番の対策になります。
次に「レバレッジはかけない」ことをルールとします。レバレッジは投資金額以上の倍々を可能とする投資手法ですが、もっぱらFXで用いられ、最近では25倍がよく設定されます。ところが、「25倍儲けるチャンス」ばかりに目がくらんで、「それは同時に25倍損をする危険性」であることを見逃してしまいます。
100万円で2,500万円相当のドルを買った(売った)とき、1ドル2円も裏目に動けば、あなたの元本はすでに半分になっています。実際には途中でビビって損失確定をするでしょうし、それを何度も繰り返すでしょうから、100万円はもうないかもしれません。そもそも為替は「投資」ではなく「投機的」なので長期保有すればプラスになるほど単純なものではありません。投資デビューの選択肢として為替は除外するほうがいいでしょう。レバレッジ禁止にすると、ほぼFXはデビュー候補から外れるはずです。
最後に「高額の投資はしない」ということです。投資をするのに100万円必要というルールはどこにもありません(でもみんなそう思っている)。楽天証券を含めたネット証券の多くは、100円からの積立投資を行えるようにしています。世界中に分散投資した投資信託を100円で購入できるのですから、「手取り給与の5%相当(月16万円なら8,000円)」とか「キリがいいので月3,000円」というような感じで無理なくスタートすればいいのです。
ボーナスから追加入金をしたとしても年収の10%以上無理に投資をする必要はないので、年間40万円も入金できれば十分です。運用益が非課税となるつみたてNISAは年40万円が投資上限なので、ちょうどいいかもしれません。
会社員の6人に1人は「退職金で即投資デビュー」かも
ここまでは「任意」で投資デビューする場合の方法を考えてきましたが、もしかしたら新社会人の6人に1人は「入社即投資デビュー」の強制対象者になるかもしれません。
これは会社の退職金制度の一部ないし全部を会社が確定拠出年金にしている場合に起こります。一般的にはこうした会社の場合、新卒から確定拠出年金制度の対象者になり、投資を行うことができる確定拠出年金口座が開設されます(IDとパスワードが提供され、あとは自分でログインして運用の指図を行う)。
運用の原資となる掛金は、給与の一定割合(新卒の場合月1,000円程度からスタートすることが多い)を会社が負担してあなた名義の口座に定期的に入金することになります。その掛金で何を投資するかは自分で決められるのが確定拠出年金制度の特徴です。
確定拠出年金制度は自己責任型の退職金制度(企業年金制度)と言われるように、運用成果はすべて個人の老後の受取額の増減に直結します。リスクを取った運用を選択し、高い利回りを確保した人は老後の資金が増え、そうでない人の老後の資金はたいして多くない、ということになります。
22歳から60歳まで同じ会社に勤めたA氏とB氏がいて、会社は毎月1万円の掛金を出したとしたら、元本累計は456万円です。しかしA氏は定期預金100%で年0.1%しか利回りがつかなかったとすれば60歳時点で464.7万円を受け取ります。
ところが、B氏は積極的に投資をして年4%を確保したとすると、同じ60歳時点での受取額は1,068万2万000円になります。なんと2倍以上です。この差は「仕事の能力差」ではなく「運用の力を取り入れたかどうかの差」というわけです。
もし、あなたの会社が確定拠出年金を採用していて、あなたがその対象となることを告げられたら、60~90分程度の投資教育研修と制度説明会があるはずなので、じっくり内容を聞いて、「加入を選択(加入するかどうか選べる場合)」し「運用指図においては投資信託を選ぶ」ようにしてください。
運用管理費用(信託報酬)が年0.5%以下のバランス型ファンドがあれば、それを買えばいいでしょう。そうでない場合はもっとも手数料の低い投資信託で国内株と外国株に投資するものを2つ選んでみてはどうでしょうか。
確定拠出年金のある会社に入社した場合、意図せず投資デビューを果たすことになりますが、むしろそれはよい経験になります。最初は月千円程度であることが多いのであまり損失を気にする必要もないでしょう(月1,000円の積立投資で1年後の運用成績がマイナス20%でも1万2,000円の元本が9,600円の時価になる程度ですむ。むしろこの
間の貴重な投資経験はその後の数十年に活きてくる)。
アメリカが投資大国といっても、会社がやっている401(k)プランに加入することがきっかけで投資デビューを果たした人が多いと言われています(世代によっては6割を占めるともいう)。「会社に投資を押しつけられた」と思わず、積極的に投資にチャレンジしてみることをおすすめします。
(フィナンシャル・ウィズダム代表 ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)
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