リリース後も、新機能によりバージョンアップ
「finbee」によって、何気ない日常から貯金を
2016年12月にリリースされた自動貯金サービス「finbee」もそのひとつ。銀行口座と連動した日本初の自動貯金アプリとして登場し、「900円の物を購入すると、1000円で支払った場合のおつり100円を貯金」「1日1万歩以上歩いたら1000円を貯金」など、あらかじめ決めた“貯金ルール”に沿って、所定の銀行口座にお金が貯まるアプリとなっている。
リリースから約1年半。finbeeは着々と進化している。そしてその進化は、フィンテックの未来を考える上でも参考になりそうだ。ということで、finbeeを提供するネストエッグの川口雅史氏に話を聞いた。
ある場所に行く、お弁当を作る…日常の行動が「貯金」になる
はじめに“貯金目的”を決め、次に上述の貯金ルールを設定して貯金を始めるのがfinbeeの使い方。貯金目的はリストがあり、「旅行貯金」「プレゼント貯金」などから選択できる。そのほか、独自の貯金目的を立てることも可能。なかには「とりあえず貯金」という選択肢もある。
貯金ルールについては、決められたペースで自動的に貯金される「つみたて貯金」や、歩数にもとづいた「歩数貯金」などがあるが、サービスを運用する中で、新たなルールも登場した。ひとつが「チェックイン貯金」で、スマホの位置情報を使い、自分で設定した場所へ行くたびに所定額が貯金される。
また、2018年1月には「マイルール貯金」も登場。自分で好きなルールを決められるもので、「ランチ貯金:お弁当を作ったら500円を貯金」など、自由に設定できる。ただし、この場合はルール達成の可否をアプリが自動で判断できないので、定期的にアプリ側から「ルールの達成状況」をプッシュ通知で確認。ユーザーが状況を入力し、それに応じて貯金が行われる。
「貯金は『1人でコツコツ貯めるもの』『大変そう』『面倒』というイメージが強かったと思います。finbeeを作ったのは、そのイメージを変えて、お金や銀行などの金融サービスがもっと身近になってほしかったため。チェックイン貯金などもその狙いにもとづいていて、お金から離れた日常の行動でも楽しく貯金できる仕組みを考えました」
finbeeでは「日々の生活にどれだけ密着できるか」を重視しているという。そして、日々の生活と貯金を結ぶのがフィンテックなのだろう。ちなみに、新機能として追加したチェックイン貯金は、想定以上の利用率になっているようだ。
貯めたお金をどう使うか。finbeeはそこまでサポートする
最近は、他社からも貯金アプリが登場しているが、その中でfinbeeだけの“オリジナル機能”といえるのが「シェア貯金」だ。これは複数の人物がグループを作り、同じ目的に向かって共同で貯金する機能。リリースから3ヶ月後の2017年2月に追加された。
「これも『一人でコツコツ』という貯金のイメージを変えたくて生まれた機能です。加えて、finbeeの利用ユーザーは20〜30代が7割ほど。その世代はシェア文化に慣れ親しんでいるので、貯金のシェアにも理解があると考えました」
気軽に複数で貯金をシェアできるのは、フィンテックならでは。夫婦の利用が多いようだが、たとえば職場の仲間で「オフィスに良いソファを買うためのシェア貯金」といった使い方も想定できる。
そのほかにも、finbeeは着々とバージョンアップを進めている。アプリと連携する銀行について、リリース時は住信SBIネット銀行のみだったが、現在はみずほ銀行、千葉銀行、北洋銀行も加わった。
さらに、最近は貯金だけでなく、貯めたお金の“使い道”までサポートしている。たとえば、finbeeで旅行貯金を行い、その貯金目的に「由布院」というワードを入れているユーザーに対して、由布院の宿泊券や旅行券が当たるキャンペーンを実施した。
「貯金の先には、やはり消費があります。私たちが考えているのは、finbeeがその導線になること。現在は旅行関連のキャンペーンが多いですが、たとえば地方銀行と連携して、特定地域で使えるポイントを付与するなど、貯金から消費までをパッケージにした企画を実装していきたいです」
フィンテックは、貯金や決済、投資など、各分野でサービスが生まれている。しかし川口氏は、「今はまだ1つ1つのサービスが輪切りの状態ですが、やがてフィンテックは1つのサービスで貯金から消費までのサイクルを一括で回せるはず。その世界観を実現していきたい」と意気込む。
貯金を楽しくするfinbee。しかし、それで終わりではない。このアプリは、やがてお金にまつわる一連のサイクルを楽しくするかもしれない。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2018年5月現在の情報です