会社の制度を活用して、コツコツ資産形成しておくべし!
「会社員」だからできるお金の運用法
一つの企業に勤め続けても、なかなか給料が上がらない時代。いずれは上り調子のベンチャー企業への転職や、自分の力での起業を考えている人もいるだろう。
しかし、立ち上げたばかりの小規模企業の社員、取締役やフリーランスでは享受できない制度や社会保障などがあることは知っているだろうか。今回は、いち会社員のうちにやっておくべきことを、家計再生コンサルタントの横山光昭さんに聞いた。
「住宅ローン」は“本当に家が欲しい時”に考えるもの
「会社勤めの人が享受しやすいものといえば、住宅ローンが挙げられます。安定的な収入があれば、借り入れしやすく、ローンが組みやすいです」(横山さん・以下同)
一般的に、勤続3年以上の経歴があれば、銀行で住宅ローンを組める。安定的な収入がなければ、審査が下りにくくなるため、会社員のうちに組む方が有利といえるかもしれない。「ただし、借りやすいかどうかだけで判断するのは本末転倒」と、横山さんは言う。
「家を買いたいわけでもないのに、借りやすいうちに借りておこうとローンを組むと、その後ローンを払い続けながら『なんで家を買ったんだろう?』と疑問を抱いてしまうかもしれません。ローンを組むことに縛られず、本当に家を持ちたいと思った時のために、貯蓄や資産運用に励む方が建設的だと思いますよ」
会社員のうちは社内の福利厚生をチェック
「大きな企業では、福利厚生が充実していますよね。医療保険や死亡保険など、在籍している人でないと入れない低コストのグループ保険を用意しているところもあります。勤めている間にケガや病気をした場合に活用できるよう、制度内容を確認しておくといいでしょう」
当然だが、社内のグループ保険制度は、退社したら使えなくなってしまう。あくまで勤めている間の保障と考えよう。
「また、ベンチャー企業でも大きなところでは、高額療養費の上限額が、独自基準で単に負担が軽減していたりすることもあります。新しい会社の方が、社員向けの制度が充実している場合も多いです」
ただし、起業や独立する場合は、会社員のような保障がなくなるため、個人で保険に入る、いざという時のために貯金しておくなど、別の手段を取る必要が出てくる。
「住宅補助」を活用して月々の貯金額をUP
「会社員にとってもっとも大きなメリットは、住宅補助など、生活費の一部を会社が負担してくれる制度でしょう。生活費のなかから住居費(家賃)を除くことができれば、その分貯蓄や運用に回せるからです」
住居費が出ない会社への転職や、起業、独立をすれば、当然住居費は自分で支払うことになる。そうなる前に、住居費に当たる分のお金をコツコツ貯蓄しておけば、後々金銭的な余裕が生まれる。
「企業によっては、スキルアップのための書籍代を補助する制度を設けているところもあります。よく本を読む人なら、活用しない手はないですよね」
会社独自の制度を活用すれば、貯蓄や運用に回せる金額が増えるかもしれない。そもそも制度を知らなければ活用できないため、勤めている会社の福利厚生の内容を確認することも重要だ。
将来のために「企業型確定拠出年金」を開始!
「会社が企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)を導入していたら、活用するのもいいでしょう。企業型DCでは、規約により口座管理費用や掛金の拠出を会社が負担してくれることが多く、その掛金を積立運用できます(※)。勤めている間、強制的に貯めて増やせる制度と考えてもいいでしょう」
※ 従業員がDCを利用するか、掛金相当額を給与に上乗せして受け取るかを選べる「選択制」と呼ばれるタイプの企業型DCもある。
企業型DCは、運用資産を別の会社の企業型DCやiDeCo(個人型確定拠出年金)に移換することができるため、転職や起業しても運用し続けられるメリットがある。会社員のうちに始めておくと、将来的に大きな資産となって返ってくることだろう。
会社員のうちにできることは、まず社内の制度を知ることかもしれない。そのなかで、自分にとってメリットの大きいものを見極めて、活用し、いつかの転職・独立に備えておくというのもいいだろう。
(有竹亮介/verb)
※記事の内容は2018年5月現在の情報です
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横山光昭
家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー、マイエフピー代表。個別の相談・指導では独自の貯金プログラムを生かし、リバウンドのない再生と飛躍を実現。子どもへの金銭教育や家族にやさしい家計管理を大切にしている。著書に『年収200万円からの貯金生活宣言』など多数。