デイトレーダーのむらやんさんの哲学
10年のトライ&エラーを経て、たどり着いた「儲けのマイルール」とは?
個人投資家のむらやんさんは2005年にデイトレードを始め、順調に資産を形成してきた。だが、そんなむらやんさんも当初は全く勝手がわからず、随分と痛い思いをしたという。そこから手探りで自らの投資スタイルを築き上げ、勝利の確率を高めてきた。
凄腕デイトレーダーが勝つために実践している、「マイルール」とはどんなものなのか。詳しく聞いた。
250万円損をして、初めて本気になった
「投資で収益を得るには、ある程度の勉強や経験が必要です。でも、決して難しいものではない。知識がない状態でも、少額から始めてみればいいんじゃないでしょうか」
と、むらやんさんは語る。かくいう自身も、当初は知識ゼロからのスタートだったという。
「最初はすっごい適当にやってたんですよ。日経平均株価もドル円相場も見ず、知ってる会社の株を適当にチェックして『なんか今下がってるから、買ったら上がるかも』みたいな感じで。で、2~3カ月したら元手の500万円が半分に減りました。これはやばいと思い、そこで初めて勉強したんです。やっぱり、人って損をしないと勉強しませんね。当時は投資ブログが流行っていたので色んな個人投資家のノウハウやアドバイスなんかを読んで、みんながどうトレードしているのか調べました」
ただ、誰かの必勝法をそのままやればうまくいくというものでもなかったらしい。トライ&エラーを繰り返し、自分に合う方法を見つけていったという。
「投資の本にはよく『マイルールを作るのが大事』って書いてあるんです。でも、それが具体的にどんなルールなのかは詳しく言及されていないことが多い。結局、やり方って人それぞれで、みんな色々やってみて自分にはこれが向いているっていうスタイルに落ち着いていくんです。専業で個人投資家やってる友達が全国にいるんですけど、10人いたら10人やり方が違って、各々のスタイルによって儲けやすい日とそうでない日も違ってきます」
むらやんさんのマイルールとは?
むらやんさんにも、10年以上の投資歴で培ったマイルールがある。中でも大事にしているルールの一つが「損切り」について。
「私みたいに取引をシステム的に全自動でやらずに、トレーダーとして長くやれる人に共通しているのは、とてもシンプルなんですけど『損切りができるかどうか』、これだけなんですよ。意外とこれができなくて、結果的に大損してやめてしまう人が多い。これくらい下がったら損切りするっていうルールを、あらかじめ決めておくことが大事ですね。僕の場合は、ある銘柄を買う時に見込める利益をまず想定し、その想定額の1/2~1/3くらいの含み損が出たらロスカットするようにしています」
つまり、たとえば「5分以内に30万円のプラス」と見込んだ場合、10万~15万円くらいの含み損が出た段階で「予想が外れた」と割り切って損切りをするというわけだ。
「そこはもうスパっと。あとは同じく30万円の利益を見込んでエントリーして、30分間全く値段が動かなかったらそこで降りますね。それも、自分のイメージと違うということで、いったん清算して振り返る。こういう時はあまり動かないんだなって、経験値が増えるじゃないですか。もちろん、降りた直後に思惑通りいくこともあるんですけど、それって所詮タラレバですから。『タラレバを気にしない』っていうのも、すごく大事ですね」
もちろん勝つこともあれば負けることもある。しかし、負けた時でも許容できる損切りのルールさえ決めておけば、大損することはない。あとは、1回ごとのエントリーの精度、勝率を高めていくだけだ。
「10回エントリーして6回勝てば、しっかり稼げて専業でも食べていけるイメージです。7割いったら神ですよ。相場の感覚と自分の感覚がバッチリ合った時は、そういうこともあります。逆に、ぜんぜんダメな時もありますけどね」
なお、そういうダメな時こそ冷静になること。これも大事なルールだ。
「悪い時って感情的になりやすいんですよ。負け分を一気に取り戻そうとして、自己資金を満額張ってしまうとか、そういうことをしてしまいがち。そうすると、外した時のダメージが大きくなって、より悪いほうに転がってしまう。最後にドカンと大負けして、ようやく目が覚めるんですよね。とんでもないことをしてしまったと。だから、負けている時こそ冷静になって、それこそ株を始めた当初の気持ちに立ち返って1日少しでもいいからプラスを目指そう、コツコツ取り返そうって気持ちが大事だと思います」
むらやんさん自身にも「ぜんぜんダメな時」はある。そんな時でも、メンタルをできるだけフラットに保つよう心掛けているそうだ。
「みんな、せっかく儲けたお金は1円も減らしたくないって思ってしまいがちなんですけど、それは絶対に無理。もちろん、仕事を頑張って、汗水垂らして稼いだお金が減るのは苦しいですよ。僕にも経験があるので。でも、投資で稼いだお金に関しては、多少の増減は許容するスタンスが大事なのかなと。そう考えるとメンタル的にも安定して、うまく投資と向き合っていけると思います」
投資は面白い。そして、世界が広がる
最後に、投資の楽しさについても聞いてみた。
「投資って答えがない世界じゃないですか。ある程度の法則はあっても、絶対はない。だからこそ、自分の読みが当たった時の快感や満足度は大きいですね。あとは、相場は心理戦の部分も大きいので、その戦いを攻略するのが面白い。儲かっている投資家は、麻雀やポーカーも強かったりしますよ」
さらに、投資にはこんな副産物も。
「たとえば同じ金額でも、ギャンブルでするくらいなら株ですったほうがいいと思うんです。なぜなら、その道中に経済のことを気にするようになり、経済新聞を読み始める。経済って社会のあらゆるものにつながっているので、視野が広がると思います。それから、株を取引してるって言うと話のネタとして食いつきがいいんですよね。相手に興味を持ってもらえるし、投資仲間を通じて面白い人脈が増える。それも、投資をする大きなメリットだと思います」
気さくに投資の必勝法を伝授してくれたむらやんさん。実は現在、東証が掲げる「資産形成層の裾野拡大」プロジェクトに協力している。投資の幅を広げるために、普段は取引しないデリバティブ取引(先物・オプション取引)を一から学ぶ北浜投資塾で取引戦略を勉強中だ! 併せてチェックしてみるのもよいだろう。
取材・文:榎並紀行(やじろべえ)
■取材協力
むらやん 村上直樹 (@cadillac600) | Twitter