女性は男性よりも“将来への不安”を抱えていることが露見
配偶者に内緒のお金=へそくりってある?
互いの収入をすべて把握している夫婦は、案外少ないのではないだろうか。いざという時のために、“へそくり”を貯めている人は多いかもしれないと思い、調べてみると、世の既婚者は平均で89万6876円ほど貯め込んでいるようだ。
へそくりに関するデータを見ながら、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに最近の夫婦の資産事情を聞いた。
2018年のへそくり額は近年では少なめ
明治安田生命が2018年4月に行った「『家計』に関するアンケート」(20~79歳の既婚男女1620人を調査)では、性別・年代別のへそくり平均額を出している。
●へそくり平均額(2018年)
全体 89万6876円
男性
20代 83万2496円
30代 31万8185円
40代 22万1296円
50代 64万333円
60代 117万3363円
70代 36万8963円
女性
20代 20万9793円
30代 36万7741円
40代 88万1676円
50代 150万5704円
60代 187万370円
70代 237万2593円
氏家さんいわく「多いか少ないか、わからない印象の数値です」とのこと。確かに、決して少ない額ではないが、ものすごく貯め込んでいるわけではないともいえる。
「現金で保持していたらなかなかの金額ですが、口座に入れていたら多くない気もします。共働き夫婦だと、別々に口座を持って、相手に全部を見せたくないって考える方は多いので、実際はもっと多いと思います。回答していない人もいるかもしれませんね(笑)」(氏家さん・以下同)
ちなみに、へそくり額は調査年によってかなり差があるようだが、2018年は近年と比べると少ないようだ。
●調査年別へそくり平均額
2013年 104万2132円
2014年 111万3483円
2015年 92万9601円
2016年 116万6002円
2017年 104万1921円
2018年 89万6876円
へそくりが多い=将来に不安感を抱きやすい女性
データからは、男女で金額に大きな差があることがわかる。50代では女性が男性の約2.3倍、40代では約4倍もの差がついているのだ。性別ごとに平均を出すと、男性が59万2440円、女性が120万1313円と、女性の方が約2倍も多い。
「男性より女性の方が平均寿命が長いので、その不安感が出ているんだと思います。老後に関して、男性は『妻がどうにかしてくれる』と考える人が多いですが、女性は『夫に先立たれるだろうし、子どもにも迷惑をかけられない』と考えやすいので、将来のために備えるのかもしれませんね」
男性の方がリスクを取りやすいという研究結果もあるようで、女性が堅実に貯蓄している一方で、男性は株などに投資する人が多いという傾向もあるそう。
「このデータで面白かったのが、50代女性で一気に金額が増えているところです。世代的に、親が亡くなって相続した資産も加わっているのかもしれません。子どもの教育も終わり、家計に余裕ができ始めたとも考えられますね」
男性は20代から30代にかけて、へそくり額が減っているのは、独身時代に貯めていたものを、結婚式や夫婦生活に使うからかもしれない。
夫婦共通の口座を用意するべし
「別々に口座を持っている共働き夫婦も多い」とのことだったが、「完全に分けてしまうと、子どもの教育費などは貯めにくくなる」という。
「共働きで多いケースが、男性が固定費、女性が日々の食費や消耗品費を出し、貯金はそれぞれに行っているというもの。共通の貯金がないので、『互いにどのくらい家庭のことを考えて貯めているのか、把握できなくて不安』という話をよく聞きます」
別の口座に貯めていると、把握できないどころか、「自分は将来のために貯めているのに、相手は自由に使っててイライラする」といった不満にもつながりかねない。
「すべてを夫婦一緒にする必要はありませんが、共通の預金口座を作り、互いに一定額ずつ貯めていけると安心です。子どもの教育費やマイホームの頭金など、家族の目的のために貯める専用の口座があれば、夫婦で同じゴールを目指せますし、不安や不満が募ることを避けられるでしょう」
ちなみに、「へそくりの保管場所は分散させるのもあり」と、氏家さんが教えてくれた。
「基本的にお金は1カ所に寄せて管理した方がいいですけど、なかには小さい額をいろんな商品に分散させている方もいます。自社株を積み立てたり、投信を10万円分買ったり、株主優待のために購入した株を取っておいたり。保有していることを忘れてもいいくらいの額にしておくと、ちょっと苦しい時に『そういえば、こんなところに置いてあった』って思いだして、使えますよ」
病気や事故、失業などで、いつ困った事態に陥るかはわからない。そんな時のためにへそくりは貯めておくべきかもしれないが、夫婦ともに把握できる資産も必要。そのバランスを取っていれば、夫婦仲には影響しなそうだ。
(有竹亮介/verb)
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氏家祥美
家計研究家。ハートマネー代表。2010年にFP事務所ハートマネーを設立。お金・仕事・時間のバランスがとれた幸福度の高い家計を追求する。著書に『いちばんよくわかる!結婚一年生のお金』『子どもの年代別大学に行かせるお金の貯め方』など多数。