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ユーグレナ社長・出雲充が得た教訓「投資家が応援してくれるから、事業を続けられる」

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全国屈指の進学校・道塾学園に全教科満点で入学した財前孝史が入った部活は、「投資部」なる怪しげな極秘活動。そこで稼いだ途方もないお金は、授業料無料である学園の運営資金になっていた…。戸惑う財前だったが、やがてその才能を開花させていく。“金言だらけの名作”として知られる本格投資漫画『インベスターZ』が、この度テレビ東京でドラマ化する。

今回話を聞いたのは、動物と植物のハイブリッドな微細藻類「ミドリムシ」を培養し、機能性食品やバイオ燃料への活用を進めている企業・ユーグレナの出雲充社長。実在するベンチャー企業の社長として漫画『インベスターZ』の中で描かれ、ドラマ版第5話へも出演する。そんな出雲社長が、一経営者として投資に寄せる想いとは何なのだろうか。

「ユーグレナを知りたければ、インベスターZを読んでほしい」

「ユーグレナという会社をより深く知りたければ、『インベスターZ』7巻を読んでくれとしか言いようがありません」

出雲社長が登場する『インベスターZ』の7巻。出雲社長の「ミドリムシ」に対する想いがとてもよく表現されている。(C)三田紀房/コルク
出雲社長が登場する『インベスターZ』の7巻。出雲社長の「ミドリムシ」に対する想いがとてもよく表現されている。(C)三田紀房/コルク

そう断言するほど、出雲社長の出演シーンは本人も納得の仕上がり。出雲社長が立ち上げたユーグレナは、微細藻類「ミドリムシ」を活用し、サプリメントなどの機能性食品や化粧品を生み出すヘルスケア事業や、バイオジェット燃料を開発するエネルギー・環境事業、遺伝子解析などのバイオインフォマテクス事業を展開している。

今でこそ認知は高まっているが、当初は事業内容が伝わりづらかったという。そんな中、漫画掲載に際してのインタビュー時に、作者・三田紀房氏から思いがけない質問をされ、表現の妙に感動したと出雲社長は語る。

「『読者にわかりやすく伝えたいので、あなたが尊敬している人や目指す形を教えてほしい』って聞かれたんです。僕はキッコーマンと味の素とヤクルト、この3社のことばかり考えています。すべて微生物を用いる会社で、日本が強い分野なんです。我々も微生物を扱う農芸化学会社として社会の役に立ちたいので、もともとは小さいベンチャーだったが今は大きな3社を目標にしながら、頑張っていきたいという話をさせていただきました。

その想いとともにユーグレナという会社を伝わりやすくまとめていただいたので、『インベスターZ』は私にとっても教科書と言えますね」

研究のチャンスをくれた“株式会社”という発明は偉大

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創業した直後は、ミドリムシの可能性が世の中にうまく伝わっておらず、月給は10万円だったが、「好きなことをずっとやっているから楽しかった」と話す出雲社長。

「ベンチャーの社長って、お金に無頓着な人も多いんじゃないですかね。それよりも、やりたいことや研究に没頭している時間が一番大切。だんだん仲間が増えて、事業が大きくなっていくことが楽しくて、ありがたいです」

ただ、事業をより大きくするためには、相応の“先立つもの”が必要になる。その時に助けられたのが、会社に期待してくれた投資家たちの力だった。

「我々は2012年のIPO(新規上場)と2013年の第三者割当増資で、合計約100億円の資金を調達させていただきました。そうでなければ研究は続けられていません。ビジョンに賛同していただいた9万人の投資家の方がいてこそなんです」

約100億円のうち、約58億円は日本初となるバイオジェット燃料工場の建設に充て、残りは研究開発やパートナー企業の開拓に活用してきた。

「ミドリムシを用いた新しい国産のバイオ燃料を作り出し、飛行機を飛ばす。この事業を成功させて、ビジネスとして投資家の方に還元するまでやめるわけにはいかないし、絶対に成し遂げます。このチャンスをくれた“株式会社”という発明は、本当に偉大ですね。

『ミドリムシで飛行機を飛ばす』なんて『新大陸を目指します』ってことと同じくらい信じられないことですよね。グループ社員約350人だけの力では到底足りなくて、期待して助けてくれる方がいなければ、大きなことはできません。株主の方が応援してくださるから、研究を続けられる。こんなに幸せでありがたい人生って、あるんですね」

貯金してせき止めるより投資した方がいい

一方、出雲社長自身も投資を行っている。

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「草食投資隊の積立王子と呼ばれる中野晴啓さん(セゾン投信・創業者)に、10年ぐらい前に『ミドリムシの研究資金がないなら、上場という方法がある』って教えてもらったんです。その時に東インド会社の歴史とか資本市場の話も、丁寧に聞かせてくださいました」

「それだけ金融の世界に詳しいあなたは、何に投資してるのですか?」と聞くと、中野氏は「今はバンガードがいい」と教えてくれた。その言葉を信じ、セゾン投信の投資信託を購入したのが、初めての投資だ。

さらに、保持するファンドは1つだけと決めていたが、鎌倉である資産運用会社と出会った。

「鎌倉投信という会社で、100年後まで残したい会社に投資をする『結い2101』というファンドを運用しているという話を聞いたんです。その時は、いいことをして儲かるなんて都合がよすぎると思って、疑いましたね」

しかし、後日開催されたファンド報告会に誘われ、渋々顔を出すと、まるで文化祭のようにブースが並んでいた。木を伐採して森の保全に努めながら、間伐材で作ったおもちゃを販売している企業やNPOなどが出展していたのだ。

「よくよく話を聞くと、社会的意義のあるソーシャルビジネスを行う企業を探して、投資するファンドだったんです。大人がパワーポイントで説明するのではなくて、目の前で赤ちゃんが木のおもちゃを舐めているんです。これはいいなと思って、投資することを決めました」

個人的に行っている2つの投資は、将来のための備えというわけではない。

「お金は動いていないと意味がないじゃないですか。だから、貯金してせき止めるより、投資した方がいいだろうと思っています」

投資家の力を身に染みて知っているからこそ、そう思えるのかもしれない。

投資の力を知るユーグレナが、今度は投資する側へ

投資のありがたみを深く感じている出雲社長は、現在投資する側に回っている。

「ユーグレナインベストメントという投資会社を設立して、リバネス、SMBC日興証券とリアルテックファンドを運営しています。大企業30社に出資していただいて、大学発ベンチャーなどを支援する取り組みです。大学にはたくさんの素晴らしい技術が眠っている。ただ、資金がなくて形にならないものがとても多いこともよく知っています。そんな我々だからこそ、世に送り出す手伝いができるのではないかと考えています」

「次々とミドリムシのような研究が出てくると思いますよ」と語る出雲社長。その笑顔には、これまでの感謝と未来への希望が込められているようだった。

(有竹亮介/verb)

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