dポイントで投資体験できる「ポイント投資」も!
NTTドコモが投資サービスを開始!フィンテック企業と連携して生まれた「THEO+[テオプラス]docomo」
これまでフィンテックの牽引役となってきたのは、新しいサービスを開発するスタートアップの面々だろう。
しかし、いまや次のフェーズを迎えている。それは、金融領域以外の企業がフィンテックのスタートアップと手を組み、新しいプロジェクトをスタートさせていることだ。
その代表と言えるのが、NTTドコモがお金のデザイン社と提携して始めた2つのサービス。お金のデザイン社は、AIやコンピューターのアルゴリズムを利用して資産運用を行うロボアドバイザー「THEO(テオ)」を運用するフィンテック企業。
そんなスタートアップとNTTドコモが手を組んで、今年5月に2つの投資サービスを立ち上げた。
そして、そのサービスが想定以上の反響を呼んでいるという。NTTドコモの笠七菜実氏と木村圭介氏に詳細を聞いた。
ロボアドバイザー「THEO」を活用し、投資の入口を作る
2社が共同で立ち上げたサービスの1つ目は「ポイント投資」。ドコモのdポイントを使い、投資の疑似体験ができるものだ。
ユーザーが持っているdポイントを、100ポイントから運用可能。高いリターンを目指す「アクティブコース」と、安定したリターンを目指す「バランスコース」の2つから選択でき、投資したポイントはお金のデザイン社が運用する投資信託の基準価額に連動して上下する。
「お金を使った投資とは違い、マイナンバーや個人情報の登録が必要ありません。税金もかからず、追加するポイント数を決めてボタンをクリックするだけでスタートできます。投資をしたことのない人にとって、口座開設の手続きは大きなハードル。それらがなく、まずは疑似体験ができるサービスとして作りました」(笠氏)
5月にスタートしたポイント投資は、想定以上の好反応で、10月17日時点で利用者は30万人を超えたとのこと。30代、40代の男性、30代の女性が多いようだ。ドコモの携帯電話を使っていなくても、dアカウントを持っていれば始められる。
もう1つのサービスが「THEO+[テオプラス]docomo」だ。先述したTHEOは、ポイントではなく実際のお金(リアルマネー)での資産運用ができるもので、1万円からスタート可能。
いくつかの質問に答えると、THEOが自動的に運用プランを組んでくれ、プロの投資家と同水準の国際分散投資を実現することができる。
さらに、THEOの基本機能に加えて、ドコモならではの特典がついている。1つは、運用するだけでdポイントがたまること。運用資産1万円につき、ドコモ回線の利用者は月1.5ポイント、それ以外の人は1ポイントがたまる。
そして、ドコモが発行するdカードを使い「おつり積立」ができる。これは、カード決済の金額の端数を“おつり”に見立てて自動で積み立てる仕組みで、たとえば「500円」を基準額に設定すると、1つ1つの買い物について「500円玉で払ったつもり」としておつりを積み立てる。
350円のコーヒーを買ったら、150円が積み立てられる形だ。基準額は「100円」と「500円」から選べ、積み立てたお金は毎月THEO+[テオプラス]docomoで運用される。
「投資の世界では、毎月コツコツと一定額を積み立てて投資する方法が重要だと立証されています。おつり積立を使うと、買い物をするたびに無意識に投資資金を積み上げることができます。本サービスのお客さまの4割はおつり積立を利用しており、良い形で浸透していると感じます」(笠氏)
そのほか、NTTドコモが提供するバーチャルなお財布「ドコモ口座」と連携して簡単に入出金ができるなど、お金のやりとりも簡略化した。
NTTドコモがフィンテック企業と組んだ理由とは
THEO+docomoも、ドコモの携帯電話ユーザー以外の利用が可能で、dアカウントを持っていれば使える。
こちらも「30代、40代の利用者が多く、8割ほどが投資未経験者」だと木村氏。「なかなか投資に関わる機会のなかった人にとって、良いきっかけになっていると感じます」と続ける。
それにしても、なぜドコモがフィンテックのスタートアップと組んで、投資サービスを生み出したのか。
「『貯蓄から資産形成に』という動きは社会の命題ですが、なかなか進んでいない現状があります。一方でTHEOのように、投資初心者でも最先端のアルゴリズムで資産運用できるような、画期的なサービスが生まれています。とはいえ、そのサービスに投資未経験者がたどり着く機会はまだ少ない。であれば、私たちが2つをつなぐ役となり、社会課題の解決に貢献できればと考えました」(木村氏)
THEOというサービスの間口を広げ、きっかけの入り口を作れば投資に踏み出す人は増える。そこでこの連携が生まれたといえよう。
だからこそ、両サービスともドコモの携帯電話ユーザー以外も利用できる。笠氏も「習うより慣れよと言いますし、投資に馴染むきっかけとして、多くの人に使っていただきたい。その中で少しずつ資産形成の意識を高めていただければ」という。
さまざまなスタートアップが、新しいサービスを生み出してきたフィンテック領域。今は、そういったスタートアップが別領域の企業と連携するフェーズに来ている。それを示す好事例といえるだろう。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)