投資がエンタメのように楽しくなる!?
スマホで手軽に資産形成できる世界を「KDDIアセットマネジメント」の挑戦
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2018年1月に誕生したKDDIアセットマネジメントが、本格的に始動する。9月28日、「auの投資信託」の第一弾として、4つのファンド「auスマートファンドシリーズ」の提供を開始。投資未経験の若年層を中心に、資産運用の裾野を広げるのが狙いだ。
KDDIグループは近年、「通信とライフデザインの融合」を合言葉に金融や保険事業に注力してきた。KDDIアセットマネジメントでは「auの投資信託」やiDeCo(個人型確定拠出年金)の提供により、新たに資産形成の分野にも参入。通信大手ならではの強みを活かし、「スマートフォンと投資の融合」を進めていくという。
その展望について、代表取締役社長の藤田隆氏、営業企画部部長の伊藤充淳氏に聞いた。
テクノロジーの力で「お金を働かせる方法」を提供
―― KDDIといえば通信サービスの会社というイメージですが、数年前から金融をはじめ他分野に積極的に参入していますね。
藤田隆氏(以下、藤田)「KDDIグループでは数年前から『ライフデザイン戦略』という中期計画を掲げ、通信と別の何かを掛け合わせてお客様の生活全般をサポートすることを目指してきました。その一つが金融の分野。たとえば、10年前には三菱UFJ銀行と共同で『じぶん銀行』というスマホに特化した銀行を設立しています。3年前にはライフネット生命に出資し、生命保険にも本格参入しました。金融全体をサポートして、お客様の生活をより豊かにしたいという思いでやっています」
―― その次の一手が「資産形成」のサポートであると。
藤田「はい。KDDIアセットマネジメントでは『ニホンのお金を、働き者に。』をコンセプトに、テクノロジーとデザインの力で手軽に『お金を働かせる方法』をお客様に提供します。現在、現役世代は6700万人いますが、そのうち証券人口はわずか1000~1500万人程度。いわゆる『眠ったお金』は950兆円に上り、そこを目覚めさせるようなアプローチをしていきたいと考えています。KDDIの個人のお客様は約2500万人。その中で、特に20代30代に対し資産運用の重要性について考え、投資の後押しとなるような気づきを提供していきたい」
―― 具体的には、どのような事業を?
藤田「事業の柱は2つ。投資運用業とiDeCoの事業です。投資運用業は『auの投資信託』として、投資ビギナーの方でも手軽に資産形成ができるようなファンドを組成します。まずは4本のバランス型ファンドを設定しましたが、いずれも長期投資でコツコツと運用することで着実にリターンが得られる設計になっています。一方、iDeCoについては当社が運営管理機関となり、年内から提供を開始していく予定です。さまざまな税制優遇措置があるiDeCoは老後資金の形成に適していますし、こちらの運用を通じてさらに投資に興味を持っていただければと思います」
投資には「エンターテインメント性」が足りない
―― スマートフォンで手軽に運用してもらうために、専用アプリなども開発されるのでしょうか?
藤田「iDeCoはさまざまな会社が取り扱っていますが、今のところスマートフォンに最適化されたサイトやアプリは少ないです。アプリは説明書が要らず直感的に分かることが必要。当社としては、まさにそこに力を入れていきたい。使いやすいアプリでiDeCoの運用ができ、現時点で老後資金がどれくらい貯まっているかを見られるような、いわば『スマホ年金』のような形で提供していきたいと思います」
―― 老後の資産状況がスマホで気軽にチェックできるのは便利ですね。
藤田「みなさん公的年金を払っていても、将来どれくらい受け取れるのか分かりませんよね。そこをiDeCoの運用状況を『スマホ年金アプリ』で日々チェックできたら便利なのではないかと。毎日変動する資産を見ていくのは楽しいと思いますし、投資教育にもつながると考えています」
―― 手軽かつ、楽しみながら投資ができる。
藤田「投資にエンターテインメント性を付与する。そこが、当社が既存の金融機関と差別化できる点ではないかと。UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)をおもしろおかしく演出していくことに力を入れていきたい。それに加えて、お客様を誘う入り口として分かりやすいインセンティブをつけていくことも必要だと思っています。たとえば、KDDIグループのWALLETポイントといった還元サービスなど。それができるのも、当社ならではの強みです」
―― エンターテインメント性というと、具体的にどのようなものになりますか?
藤田「将来的には、たとえば運用益をランキングで発表したり、お客様同士でフォローし合って運用の参考になるような情報交換ができたり、そんな構想もあります。ゲーミフィケーションのような要素を取り入れ、ワクワクしながらできて、いつの間にか資産が積みあがっているような仕組みができたらなと考えているんです」
通信キャリアだからこそできる、スマホファーストのUI
―― 今後はスマートフォンでの資産運用がスタンダードになっていくんでしょうか?
伊藤充淳氏(以下、伊藤)「そう思います。現状は本人確認などのエビデンスをとるのが課題なのですが、スマホにマイナンバーカードの機能を搭載する法整備が進めば、それもスムーズになる。近い将来、本人確認も含めてスマホで完結できるようになると思います。そういう点でも、スマホを知り尽くした通信キャリアの金融機関は高いポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。」
―― すでに「じぶん銀行」ではスマートフォンで銀行のさまざまな機能を利用できますし、使いやすいです。
伊藤「はい。KDDIとしては『じぶん銀行』で、すでにスマホファーストの事例があります。キャッシュカードの情報も搭載されていますので、決済の領域では、スマホがあればATMで預金を引き出すことができるようなど先進的な機能も提供しており、当社も資産運用の領域でもさまざまな顧客体験価値をスマホを中心に構成していくことが必要と考えています」
―― では、最後に今後の展望を教えてください。
藤田「やはりiDeCoをきっかけに資産形成の輪を広げたい思いがありますので、まずはそこのマーケットを広げていきたい。また、『auの投資信託』の数も徐々に増やしていく予定です。現在はバランス型ファンドが主流になっていますが、マーケットの状況に応じて投資信託の形も変わっていくと。ですから今の形に固執せず、その時々でベストなものを提供していきたいと考えています」
取材・文/榎並紀行(やじろべえ) 撮影/松倉広治