MAB投信だより
存在感を増すバランス型の運用スタイル
提供元:三菱アセット・ブレインズ
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サマリー
●バランス型ファンドの残高が持続的に増加している。
●確定拠出年金では従来から中心的な存在であったが、公募販売においても投資家の多様なニーズに応えている。資産形成ツールによるポートフォリオ運用への意識の高まりも影響しているだろう。
●投資家にとってポートフォリオ運用であるラップ口座向け投信も加味すると、この傾向は一層顕著になる。つみたてNISAやiDeCoの進展に伴い、今後もこの傾向が続くことが見込まれる。
1.バランス型ファンドの残高拡大が続く
近年、公募販売においてバランス型ファンドの資金流入が持続、拡大している。
増加が目立ち始めた時期は、コア・サテライト運用の考え方が謳われ、また、ラップ口座が注目を浴びる中で、同じ運用コンセプトを用いたタイプの投資信託が相次いで設定されたタイミングに当たる。
NISA導入に伴い、ファンド内で資産のリバランスを行うバランス型のメリットも利用を後押しした。
その後、リスク限定型など投資家のニーズを満たすタイプが相次いで設定され、人気を博した。
また、高配当株式やリートなどの特定資産で高い分配金を謳うファンドの減配が目立ち、毎月決算型への過度の偏重が指摘されるか、安定した分配志向に対してバランス型ファンドがその役割を担うケースが増えてきた。
多様な資産に投資することから複数の配当原資が確保できるバランス型の特徴を活かしたものだ。年金受給がない月に定期的に分配を行うファンドなどはその例だ。
さらに、ロボアドバイザーのシミュレーション・ツールが多くのシーンで目につくようになり、資産形成において複数資産によるポートフォリオへの意識が徐々に受け入れられてきていることも、この傾向を強めていると思われる。
このように見てみると、バランス型ファンドは、ポートフォリオ効果のみならず、多くの運用ニーズに応えている。
図表1 公募販売ファンドにおけるバランス型ファンドの純資産残高推移
一方、確定拠出年金におけるバランス型ファンドは、従来より、一定のリスク水準のもとで長期の資産形成を目指す初心者向けファンドとして、主に資産配分を固定したシンプルなタイプが選好される傾向があった。
これは、公募販売における多様なニーズに応えるという理由による選好とは異なるが、確定拠出年金においても、バランス型ファンドへの資金流入は高まってきている。
図表2 確定拠出年金専用ファンドにおけるバランス型ファンドの純資産残高推移
図表3に、公募販売、確定拠出年金専用における、最近1年間(2017年9月~2018年8月)の資金流入額上位5ファンドを掲載しておく。
図表3 公募販売、確定拠出年金専用投信におけるネット資金流入額上位5ファンド(1年間)
2.ラップ口座向けファンドを加味すると一層顕著に
ラップ口座は、顧客の意向を反映しつつ、預けたお金をプロが複数の投資信託等にお金を配分して運用するタイプであり、これも投資する側からすれば複数の投資対象資産を組み入れるバランス型の1つとみなすことができる。
ラップ口座向け投資信託の残高を、公募販売、確定拠出年金向けのバランス型ファンドに組み合わせると、その傾向は一層鮮明になる(図表4)。
図表4 バランス型、ラップ口座向け投信の推移
公募販売向けのバランス型ファンドは約7兆円(バランス型の割合13%)、確定拠出年金専用ファンドでは2兆円弱(同35%)であるが、ラップ口座向けを合わせると、合計残高は約16兆円に達し、全投資信託(そのうち、ETFと公社債投信は除く)の24%を占める。
これらのお金はポートフォリオ的な運用がなされ、特定資産、特定の国・地域に投資することよりも価格変動のリスクが安定していることが、運用対象として利用しやすいものとして、人気が高まっていることの表れと言える。
ポートフォリオへの意識の高まりや、つみたてNISAやiDeCoの普及により新しく資産形成を行う層が増える中で、この傾向は今後も続くことが予想される。
(MABファンドアナリスト 勝盛)