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中国市場の「口先介入バズーカ」

提供元:東洋証券

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米中貿易戦争と景気減速への懸念が影響し、中国の各株価指数が軟調に推移している。堅調な米国株や日本株に比べ、今年の中国株は「一人負け」の状況だ。

こんな中、10月中旬にマーケットを動かす大きな出来事があった。

10月19日朝、ネット上を賑わせたのは、中国金融当局のトップによるインタビュー発言だった。簡単にまとめると以下のようになる。

◇中国人民銀行(中央銀行) 易綱総裁
「株式市場のバリュエーションは現在、歴史的な低水準にある」と発言

◇中国証券監督管理委員会 劉士余主席
「自社株買い制度の改善」や「M&A(合併・買収)の市場化改革」の実施方針を示す

◇中国銀行保険監督管理委員会 郭樹清主席
保険会社による優良上場企業への戦略的投資拡大を促す方針を表明
担保となっている株式の強制売却にあたっては冷静に対応するよう銀行業界に呼びかけ

いわば「金融当局3トップ」による異例の「口先介入」である。株価が低迷し、流動性も細っていたマーケットを当局が全面支援するというメッセージである。

上海総合指数は、この発言が出る前日の10月18日、2.94%の大幅安で引けていた。終値は節目の2,500ptを割り込む2,486pt。ほぼ安値引けという惨憺たる状況だった。

翌19日朝、寄り付き直前に前述の発言が出たわけだが、マーケットの反応は薄かった。同指数は1.06%安で寄り付き、前場はほぼ横ばいで推移。

中国でよく見られる現象だが、要人発言や統計が発表されても、当初は株価はそれほど動かず、スマホのSNSなどを通じて情報が拡散され、専門家のコメントが出てくると投資家が反応する。

市場参加者の8割(売買代金ベース)が、ネット情報や噂などに動かされやすい個人投資家が占めている、中国市場ならではの「お約束」だ。

そして19日前引け後の昼休み。政府からもう一つの「バズーカ」が放たれる。

劉鶴副首相(経済・金融担当)が、足元の相場調整について「株式市場の長期的で健全な発展に向けた良好な投資チャンスを創出している」と発言したのだ。これまた異例の「口先介入」である。

後場に入り、マーケットは今度は素直に反応。上海総合指数は2,500ptを回復し、前日比2.58%高の2,550ptで引けた。

このような時、中国は週末も休まない。翌20日土曜日には、なんと習近平国家主席による「民営企業の発展を支持する」という発言が伝えられた。

また、国務院金融安定発展委員会の会合が開催され、「市場の安定」「市場基本制度の改善」「市場への長期資金の呼び込み」「国有企業改革と民営企業発展の促進」「対外開放の拡大」の実現方針も確認された。

さらに21日の日曜日には、上海、深セン両証券取引所が、自社株買い制度の改善などを通じた相場安定化に取り組む構えを表明した。

週明け22日のマーケットはこれを好感し、上海総合指数は前週末比4.09%高の2,654ptまで回復。「口先介入バズーカ」が一定の成功を収めたのである。

これらの一連の動きを経て、中国ではまたぞろ奇妙とも言える暗黙的な了解が広がっている。それは、「相場下落時には政府が救済してくれる」というものだ。そしてそのポイントは「上海総合指数が2,500pt前後まで売られた時」という。

政府による株価救済策は今始まったものではない。株価下落時の政府系資金による買い支え、金融緩和による側面支援は中国政府のお決まりのパターンだ。中国市場が「官製相場」と言われるゆえんである。投資家もそれに慣れきっており、今年も「催促相場」の様相を呈していた。

今回の「口先介入」は、中国の18年7~9月期GDP(国内総生産)が発表される10月19日に行われた。「景気減速感が懸念される前に株価対策を打っておかなければ……」。このような政府の思惑が異例の要人発言につながったとも見られる。

中国株式市場は成長を遂げており、海外投資家への門戸も順調に開き始めている。有力企業も多く上場しており、世界的にも無視できないマーケットだ。

しかしながら、政府政策や思惑により株価が上にも下にも大きく変動することもまた事実。これを、「中国のマーケットは不透明だ」とする向きもあるが、中国政府の態度や方針は短期的には大きく変わらないだろう。

投資家にできることは、このようなことが中国では起こり得るということを理解しながら、時に慎重、時に大胆な投資を行っていくことに尽きる。

ニュースでも報じられた、口先介入の主人公の面々。一番上が劉鶴副首相で、その下に各金融当局のトップが並ぶ

(提供元:東洋証券)