「奨学金返済の重みから投資へ目を向けるように」
20代ブロガー・なまずんさんが考える弱者ならではの投資術とは
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「投資を始めるなら、早ければ早いほどいい」。これは、投資賢者のアドバイスで必ずと言っていいほど耳にする言葉だ。社会人3年目、20代のなまずんさんもまた、若くして投資を始めた一人。大学時代から地道に投資を学び、現在は投資ブログ「弱者のゲーム」を運営している。私立大学薬学部への進学に際して400万円の奨学金を借り入れたことをきっかけにお金に対する関心が高まり、投資を学ぶようになったというなまずんさん。資産運用にかける想いを聞いた。
薬局を開設するために経営を学ぶも、次第に関心は投資へと移行
なまずんさんは、地方の公務員家庭に生まれ育ち、両親ともに投資とは縁遠かったという。大学進学で上京。奨学金を借りていたが、当時の経済事情はやや苦しかったそうだ。その頃に抱いていた将来の夢は、薬局の開設。薬剤師の資格さえ手に入ればたやすい気もするのだが、そうでもないらしい。
「薬局は、波に乗ってしまえば景気変動の影響を受けにくい事業ではあると思います。ただ、在庫管理が大変で、開設するまでに初期投資がかなり掛かります。適正に管理しないと簡単に倒産してしまいますし、利益を上げるには経営力が求められます。なので、日商簿記検定を受けたり、起業勉強会に足を運んだりして知識をつけるように努力はしていました」
しかし、学べば学ぶほど、本気で起業を目指す人たちの熱量に圧倒され、薬局開設の夢は一旦諦めることに。とはいえ、得られたものもあった。それは投資の知識だ。ちょうど資産家の親を持つ友人との出会いもあり、お金に働いてもらうことで、市場における圧倒的な“弱者”の立場から這い上がりたいと考えたのだ。
「学生時代に少額でFXや個別株を試してみましたが、損を出してあっけなく撤退。社会人1年目の2016年には、仮想通貨を購入。約100万円の収益を出しましたが、手堅い投資方法ではないと感じてやめました」
そこで、次の一手を探していたところ、目にとまったのは盛り上がりはじめていた「iDeCo」。どの商品を購入しようか検討し、行きついたのがインデックス投資だった。
「いまは医療系の出版社で働いていますが、会社員なのでiDeCoの非課税投資枠を活用しない手はないと思いました。また、薬学を学んでいたというバックグラウンドとFXや個別株での失敗も相まって、できるだけ研究に裏付けされた方法がいいと思っていたんです。インデックス投資は、書籍『ウォール街のランダム・ウォーカー』を読み、研究結果と実践録が揃っていることが分かったので、不確実な投資の世界において、比較的信頼できる手法なのではないかと考えました」
長く続けることが成功の鍵! 毎月20万円をインデックス投資で積み立てる
2017年11月からインデックス投資をスタート。毎月20万円を入金する投資法を1年続けてきた。20代の若手会社員には、かなり負担が大きいように思える額だが、親戚が住居を2万5000円で貸してくれているため、固定費を低く抑えられているのだとか。「積立て投資に注力するなら固定費は削減したいところ。実家に住めるなら最強です」という。
年間の拠出額は、240万円。非課税口座のiDeCoとNISAに134万4000円、それを超える105万6000円は利益に課税される特定口座で積立している。
「若いうちからはじめるメリットは、長期投資ができること。とりわけ積立て投資は、時間を味方につけることができます。とはいえ、資産配分(アセットアロケーション)の選択が運用結果を左右するため、しっかり検討することが重要です。たとえば、イーノ・ジュンイチさんのブログではとても便利な『長期投資予想/アセットアロケーション分析』のツールが公開されています。僕も、『毎月決まった額を数十年積み立てられるのか。リスク許容度はどれくらいか』といった角度から、自分が納得できるアセットアロケーションを追求しました」
なまずんさんのように、毎月20万円を捻出し続けるのは至難の業かもしれないが、自分は何年後にいくら必要になるのか計算して、貯金だけで賄えないようであれば、投資に目を向けてみるのもひとつの手だろう。ちなみに、なまずんさんもアセットアロケーションに近々テコ入れをする必要に迫られている。
「じつは、12月までにいまの住まいを出なくてはいけなくなりました。親戚の厚意に甘えて、あり得ない安さで借りていたのですが、これからは家賃の負担が増えそうです。そこで、積立投資にまわす費用を3割減らします。株式に価格の連動性が高い先進国、新興国REIT(不動産投資信託)は積み立てをやめて、以前よりシンプルに、4指数への投資に変更する予定です」
また、なまずんさんのブログ内では、利息に利息がつき、雪だるま式に資産が増える「複利効果」を次のような表で分かりやすく紹介している。
「この表は、あくまでも計算上の数字で、毎年同じ利回りが得られると仮定した場合です。ただ、ほんの数%違うだけでも、時を経れば大きな差になり得ることを若い人には知ってもらいたいです。実際には平均して1~2%程度の利回りを得られれば十分と考えています」
では、なまずんさんが考える「投資を続ける上で重要なこと」とは?
「インデックス投資は医学における標準治療のようなもの。投資家の経験によらず再現性が比較的高く、過去の研究も実践例も豊富なので、ある程度副作用を理解できたら踏み出してみてもいいのではないかと考えます。投資で究極的に重要なことはリスク管理と、死ぬまでの資金を確保すること。そこについては、歴史の洗礼を受けた名著や、ブロガーさん方のあらゆる情報を吸収して、自分で決断していくほかないと思います」
ちなみに、なまずんさんが投資ビギナーにおすすめする書籍は、『投資の大原則』(バートン・マルキール,チャールズ・エリス著)、『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』(ロバート・キヨサキ著)、『お金は寝かせて増やしなさい』(水瀬ケンイチ著)。
名著を通して理論を学び、シミュレーションしながら実践につなげてきた。いまではブログが縁で広がったブロガー仲間との出会いも大きな財産だという。最近は、オフ会などでブロガーたちとリアルな交流も楽しんでいる。そんな、なまずんさんがいま手にしたいものは「結婚生活です」とのこと。
「未来は不確実なので」と余剰金の使い道は決めていないが、もし大きな資産を手に入れられることができれば、今度こそ薬局を作るか、奨学金に困る学生を減らすための財団を作りたい」と夢は大きい。
20代から投資をしていると聞くと、「意識高い系」のレッテルを貼られがちだ。しかし、なまずんさんの話を聞いて、誰しも人生に一度は投資について真剣に考えるべきだと確信した。そのタイミングは、若いうちからに越したことはないだろう。失った時間は取り戻せないが、気づいたときがはじめどき……と自らを奮い立たせるのであった。
(末吉陽子/やじろべえ)