「養子」や「遺言」には要注意!

節税対策がきっかけになった相続トラブル

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ややこしいルールが満載な「相続税」。それだけに思い違いによるトラブルが起きることも少なくない。そこで前回の記事では、実際によく起きる「トラブル例」を紹介した。具体的には、「名義預金」や「太陽光パネル」によって税務調査の指摘を受けるケースを挙げた。

ただ、これ以外にも相続税にまつわるトラブルはあるという。相続税を専門とする岡野雄志氏によれば、「相続税を減らそうとして行った対策が、かえってトラブルを生んだケースも見られます」という。

いったいどういうことなのか。岡野氏に詳しく聞いた。

婿養子に孫養子。「養子」による節税トラブル

まず前提知識として、相続税には基礎控除があり、法定相続人の人数が多いほど控除額は高くなる。

法定相続人は、基本的に配偶者と子ども、子どもがいない場合は孫になる。孫もいなければひ孫や両親が対象になるなど、親族の状況に合わせて変わる。

「相続税の対策として、自分の娘婿を養子に入れるケースがあります。法定相続人を増やすためです。それ自体は有効ですが、問題は娘と婿養子が離婚した場合。離婚しても養子縁組は解消されないので、養子のままだとその人物にも相続の権利が発生します」(岡本氏、以下同)

法定相続人は、相続を受けられる「遺留分」という権利を持っている。娘と離婚後、もし離縁していなければ「養子」のまま。つまり、法定相続人として相続を法的に請求できるのだ。

実際、そういった事例があるようで、「離婚時にはきちんと離縁しておくべき」と岡野氏は念を押す。

ちなみに、法定相続人として認められる養子の数には上限がある。養子を取れば取るほど基礎控除額が増える……ということではない。

さらに岡野氏によると、ほかにも「法定相続人」にまつわるトラブルはあるという。

「実は、法定相続人を増やすために、自分の孫を養子に入れる方もいます。こちらも基礎控除は増すのですが、問題はそれ以降。相続を見据えた遺言を書く際に失敗するケースがあります」

相続税では「2割加算」のルールがある。これは、故人に配偶者や一親等の子どもがいる場合、それ以外の人物に財産を相続する際は相続税が2割加算されるもの。つまり、先ほどの“孫養子”は、いざ相続を受けるとなると割高な税になる。

「そのことを考慮せず、遺言で孫養子に多額の財産を相続させると書いた結果、かえってトータルの相続税が高くなった例もあります。基礎控除を増やすために孫養子を入れるのは有効ですが、それだけが目的であれば、孫には全く相続させない方が良いでしょう」

孫養子に少しでも相続させると「孫の親世代同士での争いになりやすい」とのこと。どうして長男の子には財産を相続して、うちの子にはしないのか…などだ。法定相続人を増やすだけの目的ならば、孫には相続しない方がトラブル回避のためには賢明なようだ。

子どものために書いた「遺言」が、逆効果に!?

孫養子の事例は、法定相続人を増やすまでは良かったが、遺言で失敗したと言える。実は他にも「遺言による失敗例」が存在する。岡野氏が一例として挙げるのは「小規模宅地等の特例」に関するものだ。

小規模宅地等の特例は、節税効果が非常に高いルールのひとつ。故人が自宅として使っていた土地、あるいは事業で使った土地は、条件により相続税の評価額が最大80%減額される。

ただし、厄介なのはその条件。たとえば自宅として使っていた土地が適用されるには、基本的に配偶者か、故人と同居していた親族が相続する場合に限られるのだ。

「ある故人は、遺言で息子2人(A ・Bとする)に自分の土地を均等に分け与えることを記していました。しかし、Aさんは小規模宅地等の特例が適用されるものの、Bさんはその条件を満たしていなかったのです。結果、Aさんが相続した土地の分しか適用されませんでした」

もしも、遺言を書く段階で特例が頭に入っていれば、Aさんに土地をすべて相続させて、その分、Bさんには預金を多めに渡すなどの工夫ができた。減額幅の大きい制度であるため、それだけでかなりの節税が見込まれた。

「遺言では、あとで遺族が揉めないよう、とにかく均等に分ける方もいます。しかし、財産の分け方次第で相続税は大きく変わるので、安易に書くと逆効果になることも。専門家に相談する方がいいでしょう」

制度を知っているか知らないかで納税額に大きな違いが生じるのが相続税の性質だ。

だからこそ、なるべく早いうちから相続税の制度を頭に入れておくことが大事。相続が目前に迫ってからではなく、普段から節税対策を含め、できる限りの準備を行っておこう!

記事の内容は2018年11月現在の情報です
(取材・文/有井太郎)