世界共通語「ESG/SDGs」 加藤教授の投資講座

加藤康之の投資講座-入門編

「ESG投資とは何か(2)-ESG投資の意味と方法論」

提供元:THEO by お金のデザイン

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※本稿は、2018年8月12日にTHEOBlogに掲載された文章です。

最近、「ESG」という言葉を新聞やテレビのニュースで見るようになったと感じる方が多いのではないでしょうか。

ESG投資に対する関心は世界的にますます高まっています。日本でも遅ればせながら、ESG投資の時代が到来していると言えるでしょう。

ESGとはEnvironmentSocialGovernanceの略で、環境社会ガバナンスを重視した投資のことです。1月の本ブログでも、ESG投資の入門的な解説「ESG投資とは何か」を書いています。

また、8月16日に拙編著「ESG投資の研究-理論と実践の最前線-」が一灯舎から出版されます。ご関心の高い方はこちらもご参照ください。

ところで、先進的な機関投資家は具体的にどのようなESG投資を行っているのでしょうか。

ESG投資手法の分類には、国際的なESG団体であるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が発表している7つの分類がありますが、この分類は、やや専門的であり、一般の投資家には理解が難しいようです。そこで、次のように分類し直してみました。

ESG評価の低い企業を投資対象から外す。(ネガティブ・スクリーニング)

ESG評価の高い企業に投資する。(ポジティブ・スクリーニング)

投資した企業にESGエンゲージメント(対話を通して、ESG評価を高めるように企業を促すこと)を行って企業価値を高める。

最初のネガティブ・スクリーニングは特に欧州で多く採用されています。

これは、前回のESG投資ブログでも解説したように、欧州のESG投資の起源が教会の余裕資金の運用であり、その運用手法は非倫理的な企業に投資をしないというまさにネガティブ・スクリーニングだったからです。

しかし、一般的には、2つ目のESG評価の高い企業への投資を行う方法が最も分かりやすく、日本ではこちらが基本的な方法になっていると思われます。

そして、この方法を使った具体的な投資商品の一つが「ESGインデックス投資」です。ESGインデックスとは、ESG評価機関が付けたESG評価の高い企業を中心に構成されるインデックスです。

つまり、ESGインデックスに投資をするということは、ESG評価の高い企業に投資するということになります。ESGインデックスに連動したETFもすでに取引されるようになっています。

ここでは、ESGインデックス投資を含め、ESG評価の高い企業への投資を行うことの意味を考えてみます。

さて、「ESG評価が高い」ということは何を意味するのでしょうか。まずは分かりやすいところで、株価(つまり企業価値)との関係を考えてみましょう。

ESG評価が高ければ企業価値も高いのではないかと考えるのが自然です。そこで、この仮説を検証してみました。

企業のESG評価については、主要なESG評価機関によって格付けされ公表されています。ここでは世界的な評価機関であるFTSE社が公表している日本企業約450社のESG評価を用いて、ESG評価と企業価値との関係を2014年から2016年までの3年間について調べてみました。

なお、同社ではESGの総合評価だけでなく、E、S、Gの評価も別々に提供しているので、それぞれについて別々に検証してみました。

企業価値についてはアカデミックでよく使われる「資本コスト」の考え方で分析をしています。資本コストの説明は今回は割愛しますが、興味のある方は「今の株価はバブルか?」をご覧ください。

その結果、特にG(ガバナンス)の評価に関しては、期待通りの仮説が成立していることが検証されました。つまり、G評価が高い企業の価値は高いのです。

ただし、E(環境)とS(社会)についてはまだこの仮説が成立しているとは言えませんでした。Gについてはアベノミクスの企業ガバナンス改革などもあり、市場もガバナンスを積極的に評価するようになっていると考えられます。

一方、EとSについては企業の情報発信もまだ十分ではないため、市場はまだ十分に評価しきれていないと考えるのが妥当な所でしょう。

ちなみに、米国企業でも同様な分析をすると、E、S、Gの3つともこの仮説が成立しています。日本でも近いうちにEとSが市場に評価されるようになるかもしれません。

いずれにしろ、総合すればESG評価が高いと企業価値も高いことが示されたわけです。つまり、ESG評価の高い企業への投資とは企業価値の高い企業への投資と言うことになります。(詳しくは前出の拙編著をご参照ください。)

次に企業価値の高い企業に投資するということはどういう意味なのかということを考えてみます。企業価値の高い企業に投資をすると、さらに高いリターンが期待できるのでしょうか。

実は、この点に関しては、いろいろな議論があり、現時点で結論が出ている状況ではありません。

すでに企業価値は高いのだからさらに高いリターンを期待することは出来ないと主張する研究、逆に、ESG向上によって企業価値が高くなった企業はESGがさらに高くなるため高いリターンが期待出来ると主張する研究もあります。

ただし、ESG評価の高い企業への投資の目的は必ずしも高いリターンを期待することだけではありません。

投資家がESG評価の高い企業への投資を表明することによって、多くの企業にESG評価を高めるというインセンティブを持ってもらうこともESG投資の目的の一つなのです。

企業は自社に投資をしてもらうためにESG評価を高めるように努力するでしょう。そして、多くの企業がESG評価を高めることになれば、これらの企業の価値が高まり、投資家がすでに保有している株式の価値が高まります。結果として高いリターンが期待出来ることになります。

ESG投資を行っている投資家は、公的年金など世界の大手機関投資家が中心です。これらの投資家はインデックス運用を中心に行っています。つまり、すでに幅広い銘柄を保有しているのです。

これらの投資家にとっては、株式市場全体の価値が高まればすでに保有しているポートフォリオの価値も高まります。これこそ、ESG投資の重要な目的の一つと言えます。

以上

<著者プロフィール>

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加藤康之
京都大学大学院特定教授/(株)お金のデザイン アカデミックアドバイザー

東京工業大学大学院修士、京都大学博士。
野村證券(株)執行役・金融工学研究センター長を経て京都大学教授。専門は投資理論、金融工学。2016年から年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)経営委員。

 

※本稿において、記載された意見・見解は、筆者個人のものであり、株式会社お金のデザインの公式見解ではありません。
※本稿は、2018年8月12日にTHEOBlogに掲載された文章です。

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(提供元:THEO by お金のデザイン)

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