貸株サービスで「逆に損をしてしまう」を回避する裏ワザ
提供元:楽天証券(トウシル)
保有している株を証券会社にレンタルすれば金利がもらえる貸株サービス。しかしこれにより損をしてしまうことも…。それを回避する方法をお伝えします。
貸株サービスの落とし穴とは…
前回、貸株サービスについて「貸株」で金利がもらえるってホント?配当と税金の注意点は?」で税金の取り扱いについてお話ししました。
簡単にお伝えすると、ご自身で保有している株式を証券会社にレンタルすることで、貸株の金利を受け取ることができる、という制度です。
持っているだけではお金を生まない、でも貸株サービスを使って株を貸し出すことで、レンタル料が手に入る…、これだけであれば素晴らしい制度なのですが、税金面での落とし穴が存在するのです。
それが、貸株サービスを利用している間に受け取る配当金は、配当金ではなく「配当金相当額」として受け取ること、そして配当金相当額は配当所得ではなく雑所得として総合課税がなされてしまうということです。
どのような時に手取り額が減ってしまうのか?
例えば次のようなケースを考えてみましょう。
・A社株(時価1,000万円、税引き前年間配当金30万円)につき貸株サービス利用
・貸株金利は年利0.3%で変動がないものとする
・雑所得にかかる税率は所得税20.42%、住民税10%とする
・配当金の税金は源泉徴収のみで完了させるものとする
・配当金相当額は、配当金から所得税源泉徴収税率15.315%を控除した残額とする
この条件で、もし貸株サービスを利用しないと、手取り額は次のようになります。
・配当金:30万円
・源泉徴収税率:20.315%(30万円×20.315%=60,945円)
・手取り額:300,000-60,945=239,055円
一方、貸株サービスを利用した場合は、次のようになります。
・配当金相当額:30万円-(30万円×15.315%)=254,055円
・貸株金利:1,000万円×0.3%=30,000円
・税引き前手取り額合計:254,055円+30,000円=284,055円
・所得税・住民税:(254,055+30,000)×(20.42%+10%)=85,216円
・手取り額:284,055円-85,216円=198,839円
この場合、4万216円も手取り額が減少してしまいます。
このように、貸株サービスを利用することで、配当金相当額が雑所得として扱われるため、損をしてしまう場合があるのです。
さらに、配当金相当額は、株式の譲渡損との損益通算をして税額を減少させることができませんので、その点もデメリットとなります。
貸株をしないよりも手取りが減る…を回避する方法は?
このように、貸株サービスを利用することで手取り額が減ってしまう事態を回避する方法はないのでしょうか?
楽天証券の場合は、株主優待・配当金自動取得サービスの中の「株主優待・予想有配優先コース」を申し込むことで、回避可能です。
このコースを申し込めば、配当権利確定日に株式がいったん返却されるため、株主として「配当金相当額」ではなく「配当金」を受け取る権利を得ることができます。
なお、要件などが詳細に定められており、配当金を受け取れないケースもあります。(詳しくはこちら>>)
貸株をすると株主優待も受け取れないってホント?
そして、貸株サービスにより証券会社にレンタルした株については、株主優待を受け取ることもできません。
配当と同様、レンタルした株の所有権は証券会社に移っているため、株をレンタルしているもともとの株主である個人投資家のもとには株主優待が届かないのです。
これについても、事前に対策をしておくことで対応が可能です。
楽天証券の場合、株主優待・配当金自動取得サービスの中の「株主優待優先コース」を申し込めば、株主優待の権利確定日にいったん株式が返却されることで、株主優待を受け取ることができます。
なお、株主優待も、配当金も両方受け取りたいという場合は、上記の「株主優待・予想有配優先コース」を申し込んでおくのが無難でしょう。
要件が色々と定められており、株主優待や配当金が受け取れないケースもありますので、よく注意したうえ申し込んでください。
貸株サービスで金利をゲット!となるはずが、逆に損をしてしまう…ということのないよう、事前準備をしっかりとしておきましょう。
※この記事は2018年10月01日にトウシルサイトで公開されたものです。
(足立公認会計士事務所代表 公認会計士・税理士・ファイナンシャルプランナー 足立 武志 )
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