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三菱UFJ信託銀行の「DPRIME」がつくる、新たなデータの世界観

「情報銀行×スマートフットウェア」の全貌(前編)

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データ全盛の時代に生まれた「情報銀行」の考え方とは?

デジタル技術の発展や、モノとインターネットをつなぐIoTの伸長により、人の行動に関するさまざまな“データ”が取得できるようになった。

たとえば、ECサイトでおなじみの「おすすめ表示」は、まさに個人データを活用したサービス。ユーザーの閲覧履歴などをもとに、その人が興味を惹きそうな情報をチョイスしている。

これらのデータは、自分の知らないうちに取得され、知らない形で活用されるイメージが強かったはず。しかし、それを覆す「情報銀行」の概念が生まれ始めている。

情報銀行とは、個人に関するデータを「資産」と捉え、預金のように預かって管理。提供先などを透明にして、個人の“同意”によりデータを第三者へ渡す。そして提供した個人は、金銭やサービスなどの対価を受けるというものだ。

すでにいくつかの企業が事業化の構想を発表。そのひとつが、三菱UFJ信託銀行の情報信託プラットフォーム「DPRIME(ディープライム)」だ。早くもサービスイメージの例として、データ取得機能を搭載した“スマートフットウェア”により、個人の歩行データを取得・保管できる仕組みを開発しているという。

 

(動画提供:bouncy

 

DPRIMEの詳細、そしてスマートフットウェアによるデータ活用とはどのようなものなのだろうか。三菱UFJ信託銀行の齊藤達哉氏、スマートフットウェアの開発を手がけたノーニューフォークスタジオの菊川裕也氏に話を聞き、前後編にわたってその詳細を明らかにしていく。前編となる今回は、DPRIMEの詳細にスポットを当てた。

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データを提供した個人には「対価」が発生

はじめに、DPRIMEによる情報銀行の仕組みについて、具体的な流れを追っていこう。まず個人は、DPRIMEのアプリでさまざまなデータを集約できる。

「現在想定されるのは、GPSを使った行動履歴やスマートフットウェアによる歩行履歴、さらには決済や預金などの資産データです」と齊藤氏は説明する。

集約したデータは同社のサーバーに保管され、厳重に管理。三菱UFJ信託銀行も自由に利用できない。齊藤氏は「情報の貸金庫」と表現する。

大切なのは、集約されたデータの“その後”だ。大前提として、データが知らぬ間に第三者に渡ることはない。たとえば歩行履歴が欲しい企業があれば、そのデータを保管する個人へデータ提供のオファーを送る。個人はオファーを吟味し、提供するか否かの指示を出す。

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「ポイントは、データを提供した個人に対価が発生することです。金銭や生活を向上させるサービスがその代表で、データ利用者から支払われます。個人のデータは大きな価値を持っており、第三者に提供する場合は、他の資産と同様にきちんと価値の移転が行われるべき。その考えに基づいています」(齊藤氏)

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速度や歩幅までデータ化するスマートフットウェア

オファーには、提供希望データと利用目的、対価が明示されている。たとえば、提供希望は「行動履歴7日分」で、その目的が「飲食店のメニューの実施時間帯や来店しやすい店舗のご提案に利用します」といったイメージだ。DPRIMEでは、情報の流通を管理するだけでなく、情報提供者(個人)と情報利用者のマッチング役をも担う。

「データのビジネス活用が盛んになってから、匿名化した個人データを取得し、本人の知らないうちに事業者間で授受されるケースが増えました。一方、個人が自分でデータの提供先を決め、その代わりに対価をもらう形も増えています。後者こそ本来あるべき姿ですが、個人が管理を行うには負担がかかりますし、第三者の審査もないので。データ利用者の信頼度や信ぴょう性の部分でリスクが伴います」(齊藤氏)

この点から、DPRIMEという“仲介機関”の必要性があるという。「個人データという資産を提供するのですから、データ利用者には一定のリテラシーや信用が必要。その審査も行います」と齊藤氏はいう。

2019年度のサービス化を目指すDPRIMEだが、すでに実証実験も始まっている。それが冒頭で触れたスマートフットウェアによるものだ。スタートアップ企業のノーニューフォークスタジオが開発したツールで、ORPHE TRACK(オルフェトラック)と名付けられている。同社CEOの菊川裕也氏は、「従来のイメージよりも格段に詳細な歩行データを取得できます」と話す。

「靴底に入れたセンサーがBluetoothでスマホと連携し、歩数や歩行距離はもちろん、歩容(歩き方)のデータを取れるのが特徴です。歩幅や速度、着地の角度までリアルタイムで取得。アプリ内にデータを蓄積します」

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個人で見ても十分有益なほど精緻なデータだが、DPRIMEと連携することで、それを第三者に提供できる。

では、DPRIMEとスマートフットウェアによって、どのようなデータ利活用が生まれるのだろうか。それを聞けば「情報銀行」の構想もさらに明確化するはずだ。次回、両社が手を組んだ経緯などとともに、詳しく聞いていく。

(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)

※記事の内容は2019年2月現在の情報です

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