NTTドコモに地銀……相次ぐ連携の中身は
フィンテックの先駆者「THEO」のアップデート最前線
2018年に大幅なユーザー増。引き金はNTTドコモとの連携
日本でフィンテックの動きが活発になって、はや数年。新たなサービスも続々と登場しているが、一方で、まさにフィンテック黎明期から牽引役となったサービスも、アップデートを続けている。
そのひとつが、お金のデザイン社が提供する『THEO(テオ)』。ユーザーの目的やスタイル、価値観に応じて、アルゴリズムにより自動で資産運用を行うロボアドバイザーの一種で、5つの質問に答えると、多数の運用プランからそのユーザーに合った最適なプランを提案。1万円からスタートできる。
2016年2月にローンチされており、詳しいサービス概要は以前の記事で取り上げた。ただ、それから約3年の間に着々と進化を続けている。
「ローンチ以来、利用者は増え続けており、昨年には6万人を超え、預かり資産額は300億円を突破しました。特にここ1年の成長は急速で、昨年3月からおよそ2万5000人の方が新規に運用を開始しています。属性を見ると、投資経験が豊富でない方の割合が約8割と、未経験者が多い状況はローンチ時から継続。ただ、女性の割合が増え、2016年12月には全体の12%だったのが、2018年9月で22%にまで増加しました」
こう話すのは、お金のデザイン社の代表取締役社長を務める中村仁氏。もともと、投資初心者向けのサービスとして設計されており、ユーザーの属性が一貫して変わらないのは計画通りと言えるだろう。それよりも特筆すべきは、2018年に見られたユーザー数の“急伸”だ。
実はこの急伸こそ、THEOのアップデートが大きく関わっている。
「弊社では21の機関と提携を進めてきました。その中で、ユーザー数の増加に大きく関わったのが、NTTドコモと提携した『THEO+[テオプラス]docomo』です。これは資産運用フィンテックのトータル版であり、ローンチした2018年5月より利用者数が大きく伸びました。THEOで作ってきた世界観が、大きなプラットフォームと連携することで拡大したと感じています」
THEO+[テオプラス]docomoは、ドコモの携帯回線を持つユーザーおよびdアカウントを持つユーザーを対象とした、両社の協業ブランド。THEOとドコモのdアカウントが連携することにより、簡略に申し込み・ログインができるだけでなく、運用資産1万円につき月1.5ポイントのdポイントがたまったり、ドコモが発行するdカードを使って「おつり積立」ができたりするなど、ドコモならではの特典がついている。
さらに、実際にTHEO+[テオプラス]docomoを始める前に、投資への興味を持つ第一歩として、dポイントを使った投資疑似体験『ポイント投資』も行える。100ポイントから運用でき、お金のデザイン社が運用する投資信託の基準価額に連動して上下する。(詳しくはこちらの記事参照)
「ポイント投資ユーザーは、すでに35万人を突破。また、THEO+[テオプラス]docomoは投資初心者の割合がより高いのも特徴です。面白いのは、ドコモ口座から入金する場合、コンビニからお金をチャージするユーザーが多いこと。THEOの場合、ネットバンクなどのオンライン上から入金する人が多いのですが、THEO+[テオプラス]docomoの利用者はリアルチャネルからの入金が珍しくありません。このことからも、新しい層へのリーチができていると感じます」
フィンテックは「第3章」へ。THEOが目指すのは…
NTTドコモのほか、地方銀行とも数多く提携。提携先の銀行の利用者が、よりTHEOを使いやすいようカスタマイズされている。分かりやすいのが、福岡銀行との提携による『THEO+[テオプラス]福岡銀行』だ。
「福岡銀行に口座を持つお客さまは、『Wallet+』というスマホアプリから残高や収支・明細をチェックできます。THEOはこのアプリとAPI連携をしており、アプリ上からTHEOの残高確認や入金が可能になりました」
Wallet+は沖縄銀行、熊本銀行、親和銀行も対応しており、THEOも同様に、これらの金融機関とも提携をしている。
外部との提携だけでなく、THEO自体も細かなアップデートを進めている。そのひとつが『THEO Guide』だ。資産運用について分かりやすく解説するコンテンツで、「THEOは簡単にできるのが特徴ですが、とはいえユーザーが疑問を感じた時に説明してくれる何かが必要。その意味で作りました」と中村氏。そのほか、入金方法の変更やアプリの操作性向上など、利便性の追求も続けている。
「弊社では『攻めすぎない、守りすぎない、第3の選択肢“お金の生存戦略”』という新コンセプトを立てました。お金だからこそ損はしたくないのですが、一方で老後を考えると今まで通りの資産プランでは怖い。その中で、今後もバランスをとったアップデートを続けていきます」
中村氏は、2019年を「フィンテックの第3章になる」と予測する。第1章は、スタートアップが新たなフィンテックサービスを続々と立ち上げた時期。第2章では、その流れに金融機関が合流し、次々に連携をした。そして第3章は、「圧倒的なユーザーを持つ、異業種の“巨象”が参入するフェーズ」だという。先述したドコモを始め、LINEや『PayPay』を放ったソフトバンクとヤフーなどが好例だ。その中で、「お客さまに信頼をいただき、顧客志向でのサービス開発を続けたい」と意気込む。
第3章に入り、さらに熱気を増す日本のフィンテック。“先駆者”のTHEOは、その中でさらなる進化を目指す。
(取材・文/有井太郎 撮影/森カズシゲ)
※記事の内容は2019年2月現在の情報です